BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL 1999-2000

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第3話:やっぱり道に迷った。

地下鉄を2度乗り換え、地下鉄ビクトリア駅から地上に出たときには4時を過ぎていた。暮れなずむ街。鉄道駅が見えない。早く動かないと。ここはそれほど治安がよくない。

磁石で南東を見定めて歩き出す。通りの名前にまったく聞き覚えがない。当たり前か。こういうときのための『A to Z』である。交差点で街路名を確かめ、検索し、地図上にドットしていく。こうした努力の結果、どうも90度ほど方角がずれていることが判明した。

再び交差点、街路名、検索、地図にドット。いつもより荷物が重いのがこたえる。額と胸に汗、と同時に手や耳は凍える。次第に人気がなくなる。静かなのはいいが、安全はそれより重要だ。すでに日は完全に沈んでいる。

ついにVincent Sq.に着いた。あのホテルだ。

"Hello. I made a reservation from Airport, ...."

言い終わらないうちから確認書を手渡すと、フロントの彼女は

"Oh, it's cold!"

と胸に抱える仕種をしてみせた。そう、寒い中を25分間歩き回ったのだ。やっと、着いた。

ありがたいことにエレベーターもちゃんと動いている。部屋には電話もあり、データポートもある。やっぱり4つ星だけはある。ただし、室内は極度に狭い。
ロチェスターホテルの室内ロチェスターホテル室内
まずは荷を解き、シャワーを浴びて、と。

さあ、私の黒い疑惑を確かめる時だ。

(第3話:やっぱり道に迷った。 了)

text and photography by Takashi Kaneyama 1999

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