BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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3月13日(水) パレルモとモンレアーレ

魅惑の回廊

「4日ではパレルモだけでも足りないよ」。

パレルモのツーリスト・インフォメーションは親切だった。

「何日いるの? 4日? パレルモは4日では見られないよ」

「アグリジェントへは鉄道がいいよ。タオルミーナは、バスの方ががわかりやすい。カターニァで乗り換えるんだ。シラクーザもいいところだよ。タオルミーナと1日で回る? う〜ん、不可能では・・ないけれども」

最後にパレルモでのおすすめとモンレアーレへ行くバスの便を聞いて辞去する。

さて、まずはバスの1日乗車券を買う。しかし、なぜかタバッキを見つけられずに時間がかかってしまった。

つづいて、おすすめその1のパラティーナ礼拝堂へ。ここは12時までなので、急がねば。しかし、迷いに迷ってしまった。

実は、すごそばまで来ていたのに、なぜかまたも青空市場や蚤の市に引きずられるように歩き回ってしまっていた。ようやくたどりついたのだが、入り口はさらに向こうで、延々迂回する。やっとパラティーナ礼拝堂に着いた。12時15分前。無料なのはよいが、昼休みだからとすぐに追い出された。時計を見れば3分はフライングしている。


黄金のモザイク。

郊外のモンレアーレに向かった。

ついでに、近所にあるはずのモスク風のクーポラを持つ教会へ。入り口がわからん、と思ったらガキどもが(たぶん課外授業か見学旅行か)蝟集していて見えなかったのだった。人が通れるスペースくらい、あけんかい。

バスが出る公園へ。そこに、まさにモンレアーレへ行くはずのバスが追い越していった。慌てて走って乗ってセーフ。やがてくねくねと山道を登って丘の上に着いた。

すでに昼食どきの終わり間際で、トラットリア探し。しかし、あまり選択肢がなく、<ペッピーニ>というところへ。キノコのスパゲティ、今日の魚(たぶんカジキマグロの香草焼き)、白ワイン、できあいのティラミス。暇そうなじいさんが、急に仕事を放り出してテレビのチャンネルを替え、真剣に見だした。その番組は、アメリカでいう"soap drama"、日本でいう「昼メロ」のような連続ドラマであった。

穏やかな昼下がり、まだ何も見てもいないのに眠くなるような気分。

さて、気を取り直してまずは黄金のモザイクで覆われた聖堂内陣。

つづいてモンレアーレが誇るchiostro(回廊)。建築、彫刻、文様、どれをとっても素晴らしい。シチリアが古代からヨーロッパやアフリカあるいはギリシア・ローマ文化、キリスト教文化、イスラム文化などの重要な交差点であったことがわかる。

テラスに出る。眼下にパレルモの街並み。公園のベンチでウトウトする。子どもたちは元気に跳ね回っている。また聖堂に入ってモザイクを眺める。帰りのバスの時間を調べようと、バールに行ってトトカルチョの結果と配当をついつい検分する。

要するに、ヒジョーにヒマだったのである。

いいかげんに帰ろうと思うが、帰りのバスはどこから出るのかがわからない。しょうがないので、さっき降りたバス停で待ちかまえて、ターンするバスを尾行する。かくしてバス停を発見して無事帰還。

バスを降りてからトイレを探したり(地下鉄駅で発見)、考古学博物館を探したり(入ってみた)、スーパーを探したり(衣料品はあったが食料品がなかった)しているうちに日が暮れた。

photography and text by Takashi Kaneyama 2002

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