BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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3月10日(日) ミラノ→ローマ

既視感でめまい

さよならミラノ

朝8時にホテルをチェックアウト。すでにカードで前払いしているのに「まだもらっていない」とおやじが言い張るので、「よく調べろ」と要求し、いったんしまったレシートを見せる用意をする。もちろん、すでに払っていることが判明して和解。

よくあることだが、おかしいのはオヤジが計算を間違って請求してきたことである。それもかなり安く。

ミラノ中央駅へ行く途中、キャッシュマシンで現金を下ろしておく。「fuori servizio」というのが「稼働していません」ということらしい。

すでに信号に構わずどんどん道を渡るイタリア人なりきり状態である。私見では、「規則を守る」よりも「信号に頼らずに自分で判断して道を渡る」能力の方が重要である。信号に頼らないと道を渡れないようでは、生き残れない。

Gazetta dello Sportを購い、Binarioに行ってobbliterratriceに切符を差し込むが、日時をパンチしてくれない。近くの人が「unfunczione.」と教えてくれた。ふうむ、「壊れている」くらいの意味かな。

Euro Starでローマへ。

ローマ行きのユーロスターはすでに入線していたので、乗り込む。席がわからずにいた日本人に席を教える。日本的感覚からすると、ヨーロッパでの座席番号のナンバリングは面妖である。「窓(fenster)」と「通路(Corridorio)」という単語を知らなければたしかにわかりづらいだろう。

9時2分、発車。日本人3人はフィレンツェで降りた。フィオレンティーナ戦を見るのであろう。今週水曜日にはパルマ対キエーヴォ(セリエA)とローマ対ガラタサライ戦(チャンピオンズ・リーグ)があり、木曜日にはインテル対バレンシア戦(UEFAカップ)もある。Calcioのはしごには、いい週である。

隣の席の人にGazetta dello Sportを貸してあげる。同席は老人夫婦と孫娘(推定)。フィレンツェで席が空いたので、別の席に移動してお互いにゆったりする。

腕時計が止まった。液晶表示も消えている。このあいだ電池交換したばかりなのに。ううむ。いろいろ試すが復帰せず。しょうがないので「Che ora e?(いま何時ですか)」という表現を覚える。

駅前でホテル確保し、行動開始。

午後1時36分、6分遅れでローマ、テルミニ駅に到着。話には聞いていたが、駅舎が新しくなっていた。きれいで明るい。かといって油断はできない。ツーリスト・インフォメーションではホテル予約は扱っておらず、短いリストと地図をくれた。このあたりには安ホテルが集中している。とりあえず、1軒目でシングルの空きがあり、シャワー付きでE60だったので即決。


ひとつの建物に3つのホテル。

さて、Dmus Aureaの観覧予約をしようかとマッシモ宮の予約サービスへ行ったら8月から閉まっていた。しょうがないので、中華料理でも食う。ワンタンスープ、広東炒飯、Fried Crispy Chickenにミネラルウォーター。妙に味がないが、とにかく安い。合計で12.10ユーロ。

テルミニまで戻ってバスの1日券を買う。インフォメーションでカステロ・サンタンジェロへ行くバスを聞き、さっそく向かう。

deja vu のめまい。

バスに乗っているあいだに激しいデジャヴ(既視感)に襲われる。ローマはこれで3回目だから既視があっても当然なのだが、このときは視覚だけでなく、匂いやその時の気持ちや空気の肌触りまで鮮明に思い出したのだ。

最初のローマのときは、まだ気負っていて、何も知らず、ただ力任せに旅していたのだろう。あのときの不安や焦燥感や高揚感を追体験してめまいがしそうになった。

カステロ・サンタンジェロへはアプローチの方が楽しいかもしれない。ハドリアヌス帝の憂愁を味わおうと来たのだが・・。「法王庁の抜け穴」伝説の方がより強力なようである。

帰る途中、時計が突然、復活した。設定は初期化されているので、時間合わせをする。回りではシャボン玉を銃のように撃ち出すおもちゃを観光客が弄んでいる。夕陽を受けて虹色に輝く大きな泡がいくつも漂ってきた。

テキトーにバスに乗っていったんホテルへ戻る。

18時から行動開始である。

photography and text by Takashi Kaneyama 2002

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