BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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11月24日・オクスフォード「高い塔はどこだ?」

つなぎたい。

朝食に降りたら、日本人女性がサーヴしてくれた。B&Bの経営を学んでいるとか。この4月からエクセター、9月からここオクスフォードで。

なかなかボリュームたっぷりの朝食で、ロンドン辺りと違い、大きなソーセージが2本、厚切りのベーコンが2枚。オーナーのKarinはドイツ人だそうで、そのせいか?

10時過ぎにPowerBookとメモ帳、地図を持ってダイニングルームへ降りる。朝食の終わった頃を見計らって、ここで作業するのだ。なにしろ部屋には机がないので、膝の上で打つのがしんどい(いかに「laptop」とはいっても)。

しばらくしたらKarinが「ライト点ける?」と言って、点灯してくれた。さて、問題のインターネット接続だが、玄関のPayphoneが電話線とつながっているところは英国型モジュラージャックで、着脱可能なことは見てわかった。あとは、許可をどうやってもらうか? なのだが。

つながせて。

とにかくセットアップしてあとはつなぐだけ、にしておいてからKarinと交渉する。

「インターネットカフェとか、図書館でつなげるわよ」
「そういうところでは、電話回線に自分のラップトップをつなぐことを許さない」
「そうね、確かに。でも、ここではやったことないもの」
「私はやったことがある。ストラトフォードでもインヴァネスでも。たしかに機能するし、もちろん相応の料金は払う」
「でも、いくらチャージしたらいいかわからないし。ちょっと待ってね」

旦那さんを呼んで来てさらに相談。相場が30分で2〜3ポンドだと説明し、かける番号が海外でなくnationwideであることをリモートアクセスの画面を見せて納得してもらい、ようやくOKに。

というわけで、無事につながった。25分玄関ホールに立ち続けてメール受信、FTPアップロード、BBS書き込み、メール送信。

高いところから失礼。

11時30分、外出する。バスが止まっていたので乗り込み、中心部コーンマーケット通りの南端で降りる。「今日は塔に登ってそして買い物」というテーマにしてみた。が、とくに何も考えていないので、とりあえず歩く。

そうしたらAshmolean Museumに来てしまった。おお、ここをもう1回訪ねるか。しかし、ここのショップで買い物することになるのは間違いないので、荷物が出来る前に塔に登っておこう、と珍しくまっとうなことを考える。さて、塔はどこだ? と、ここで地図を見る。すると、さっきバスを降りたところにCarfax Towerがあった。わははは。最初から無駄足を踏んでしまったではないか。

さて、塔に行く。狭い螺旋階段が永遠に続くような錯覚に襲われる・・・こともなく、あっさり着いた。こんなに早くていいのか? しかも小さい屋根の四方に板をめぐらして囲いをしただけ。それでも、オクスフォードに高い建物は少ないので見晴らしはよい。先客の中年婦人は「この日を待っていた」のだそうで、たしかに久しぶりによく晴れている。寒いのは変わらないが。


東側を見下ろす。

まだ元気なので、もうひとつ登れるところへ行く。University Church of St. Mary the Virgin。実は、この名前では地図に記載がないのだが、University Collegeのチャペルだから近くだろう、と当てずっぽうでHigh St.を行く。あった。しかも、ここは昨日ツーリスト・インフォメーションでチェックしておいた土曜日のコンサートの会場だった。

これは奇遇だ(←何も調べず、何も考えていないだけ)、と中へ入れば学生が楽器を搬入し、演奏者の椅子を並べていた。たぶん、今晩あたりにゲネプロでもするのだろう。ショップでついつい、オクスフォード名物、顔の彫刻のポストカードをまとめ買い。タワーへはショップの横から入る。

階段は、最初は広くて緩やか、そして突然屋外に出てこんな彫刻と対面できる。

それからが本番で、石造りの狭い螺旋階段をえんやこら登る。手すり代わりに太い紐が下がっている。おお、これこそ塔というものだ。しかし、私ですら息切れせずに着いてしまった。

ここは塔の四方をめぐる回廊なので、一挙に360度見渡せるわけではない。それよりなにより、風景どころではなくて、私を魅惑したのは塔の四隅から吠える怪獣と奇人たちであった。おお、パリのノートルダムに登った時以来の感動だ。

降りてから、せっかくなので明日のコンサートのチケットを買おうとしたら、ここではなくて通りの向かいのOxford University Press Bookshopで売っているという。チラシでは「OUP Bookshop」とピリオドもなく省略されているが。さっそく、そこへ行って無事購入。ハイドン、パーセルをはじめとする宗教ミサ曲の合唱である。しかもなぜか曲目にはアメリカの霊歌(Spiritual songs from America)もあるので、楽しみだ。

また美術館。

午後1時過ぎには二つも塔を登り終えてしまった。あとは成りゆきでアンティークか古地図でもショップ巡りするか・・・と歩いていたら、雨が降りそうな予感がしたので、さっき行きそびれたAshmolean Museumに入る。なにしろ無料だし、雨はしのげるし風は吹き込まないしトイレはきれいで無料だし椅子はいくらでもあるし見る物もたくさんあるしカフェもショップもあるし・・・って、そういうことではなくって。

ここは建物も立派だが、コレクションの内容も一級だ。多少偏わりがあるにせよ、イタリア・ルネサンスやラファエル前派、古代エジプトあたりは見事なものだ。ワールドクラスと言っていい。で、そういうところで散歩気分でぶらぶらする贅沢。ウッチェロやらバーン=ジョーンズやらイスラムの壺やら水墨画やらミケランジェロの素描やら。エジプトからこんなものまで持って来ている。

そして予感通り、ショップで4冊も本を買う。ケルト文字のデザイン教科書(書き方の図解)、ケルトクロス研究書、バーン=ジョーンズの小カタログ、古代料理を美術から復元したレシピブック。なんだかものすごくマニアックな印象があるが、単に気のせいだろう。

買い物三昧。

「THE BOOKSHOP」Blackwellsへ。知っている人は知っている老舗だが、私はArt店に行ってミニ・プリントとカレンダーを買った。ミニ・プリントは1枚3.25ポンド(500円ちょっと)だったので全点をチェックしてブレイク、エッシャー、ファン・アイクの3点に厳選した。どうせ印刷複製なのだから安いほどいいのだ。

ついでに階上で大判の本をゆっくり眺める。椅子に座って読んでいると時間を忘れる。さらにリラックスすると「ここはどこか」も忘れて寝てしまうので注意が必要だが。ここで買ってもいいが、あまりに重いので内容だけ確かめてAmazon.comあたりで買って送ってもらうのが最も楽で安い。書店には悪いが。

外に出たら、雨だった。ええと、ええと、何か買わないといけないものがあったんだっけ?

よく思い出せないが、Bordersでヒギンズの新作ペーパーバックを買う。ついでに読売新聞も買う。

Marks & Spencerの食品売り場は充実していなかったので、Westgate Shopping Centrer内のSainsbury'sでLady Greyほかを購入。

雨がさらに激しくなっている。金曜の夕方でバス停に長蛇の列。HMVで少し遊ぶ。ユーロビートというかハウス系が全盛だが、聞いても全然面白くない。

関西に明日はあるのか?

ちょうど来たバスで帰る。今日もまたドンピシャで下車。というか、車内の半分近くはそこで降りるのだった。

部屋に戻って読売新聞を読んでいたら、なんとガンバ大阪が鹿島に負けて、優勝の可能性がなくなっていた(嗚咽)。そして京都はカズのハットトリックで何とか90分で勝って、降格確定に待ったをかけた。しかし、勝ち点で並んでも得失点差が15点もあっては絶望か(号泣)。

Balti Restaurant<Alkazar>というところへ行った。単に一番近いレストランだから。客がひとりもいないのだが、スタッフが忙しそうにしているのは、デリバリーをやっているらしい。郊外では当然か。けっこう安くてまとも。ムガール料理の神髄、とメニューにあったので頼んだらマトンの香草トマト煮だった。

photography and text by Takashi Kaneyama 2000

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