BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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11月19日・グラスゴー→(ロンドン)「マッキントッシュ巡礼。」

忘れ物。

ホテルをチェックアウトして、まずバス・ステーションへ行く。歩くとけっこうあるので、まずセントラル駅まで行って、そこで1日券を買い、それでリンクバスに乗ろうと思う。ついでに、セントラル駅へ行く途中でDaily Record Buildingを見ておこう。今日のマッキントッシュ詣での皮切りだ。

歩き始めて5分たって、気づいた。「忘れた!」。ホテルにサブザックを置き忘れた。戻って事情を説明すると、今まで一度も笑わなかったフロントの女性が初めて微笑んだ。

全荷物を担いで15分歩く。Daily Recordは見つからない。さすがにあきらめて、セントラル駅経由でバス・ステーションへ。クイーン・ストリート駅まではOKだったのに、バス・ステーションまでというと、このドライバーも50ペンス払え、という。どうも「鉄道の発行した券」としか見ていないようだ。いくら説明しても埒が明かないので、払っておく。

バス・ステーションのLeft Luggageで荷物を預ける。今日の行動に必要なモノはサブザックにあらかじめ入れておいてある。そう、ちゃんと準備して置いたのに(だからかもしれないが)忘れて来ちゃったのだった。

夜行のロンドン行きは深夜11時発。それまでひたすらマッキントッシュ作品を巡る。

その1:教会。

まずはQueen's Cross Churchへ。地下鉄でブキャナン・ストリートからセント・ジョージ・クロスへ行き、そこから歩く。30分かかってしまった。またも遠回り。

教会の身廊よりも、ホールの天井の方が印象的、というより、こっちはマッキントッシュがサインしているような空間だ。

スタッフが非常に親切で、しかも放っておいてくれる。写真は取り放題。

その2:教会ホールは閉まっていた。

次はRuchill Church Hall。マクドナルドのところを右へ、という。スタッフの言葉通り15分で着いた。しかし、closed。ここはカフェになっているはずなのだが。仕方なく外観だけ撮影。

そしてまた歩く。タクシーという手もバスという手もあったのだが、悩むよりも歩いていたら30分で地下鉄の駅に着いた。なんだ、実は近いじゃん。

その3:お茶。

ブキャナン・ストリート駅まで戻ってWillow Tea Roomsへ。なにゆえにRoomsと複数なのかと思ったら、いくつか部屋があるのだった。ここでスモークサーモンとクリームチーズのベーグルとお茶を頼んだのだが、最後にトイレに行って初めて気づいた。

例のシルバーに塗られたハイバックの椅子とか、豪奢な内装のDe Luxeは奥というか通りに面したところにあるが、どうもそこは公開されていないようだった。ううむ。

その4:学校。

ここから延々歩いてMartyr's Public Schoolへ。アドレスにあるParson St.は私の持っている地図には出ていないので、勘で行く。が、住宅地の行き止まりに来てしまった。ここから戻るのも癪だが。ぼーっとしていたら、どこかで見たような白い鐘楼が見えた。むむっ?

近づいたら、やはりそうだった。なんと裏側から接近していたのだった。ここは小学校なのだが、中央ホールの吹き抜けと天井のヴォールト、階段室は紛れもなくマッキントッシュだ。でも、傑作と言うよりは凡作かも。

その5:マッキントッシュ自宅。

今度も歩いてブキャナン・ストリート駅からヒルヘッド駅へ。Hunterian Art GalleryでMackintosh Houseを見るのだ。今日は完全にTube & Footというパターンだ。

ここは、・・・素晴らしい。マッキントッシュの自宅をオリジナルで再現しているのだ。

ダイニングルーム、ホール、書斎、ベッドルーム・・・・。donnationする価値のあるところだ。やはり、人が住むということが住宅に命を与えると思う。建築は使われてナンボ、だ。

ついでにギャラリーでホイッスラー・コレクションを見る。ワシントンのブレア・ギャラリーに匹敵するコレクション、と自賛している通りだ。彼がモチーフとテーマを完全に意識して分けているのはタイトルで自明だ。他にもレンブラント【キリストの埋葬】などがあっていいところだ。

その6:デイリー・レコード・ビル。

外はもう薄暮、というよりもっと暗かった。あとは食事してパブでも行くか。・・・いや、ひとつ忘れているぞ。Daily Recordだ。またまたブキャナン・ストリート駅へ行き、歩いて捜索開始。Renfield Streetだよなあ。あれっ? 「Renfield Lane」だって? ということは・・・あった!

つまりはアドレスを勘違いしていたのだった。見つからないわけだ。すでに真っ暗で外観を撮影しようにも通りが狭くてひきが取れない。感度とホワイトバランスを調整し、壁に体を押し付けてブレを防ぐ。て何とか撮影。フラッシュ程度ではビル上部の装飾まで光は届かない。

ついでにGlasgow School of Artの南面がライトアップされているはずなので、そこまで行って撮影。夜の7時を過ぎて、本日の巡礼は終了。

イタリアン・レストランでカネロニにサルティンボッカというまるでパルマあたりの食事をして、バス・ステーションへ。ここで時間をつぶし、やって来たバスに乗る。ほぼ定刻発車。しかし、なんと座席は若干傾斜しているものの、リクライニングではない。間隔も狭く、しかもほぼ満員。ありゃりゃ。どうなるんだろう、これから。

ロンドンまで約8時間。

photography and text by Takashi Kaneyama 2000

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