BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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11月19日・グラスゴー「ついてない日。」

見つからない。

日曜日の朝はゆっくり・・・というわけでもないが、毎朝のアップロードを終えて出かけたのは10時過ぎだった。

今日はひたすら、マッキントッシュである。

まずはデイリー・レコード・ビルをめざすが・・・ない。なにしろ地図上にテキトーにドットしてあるだけでアドレスがないので(後日注:本当は書いてあった。見落としていただけだった。アホじゃ)おおよその見当で行くしかない上に、見学不可で外観のみしかみられないので何の表示もないかもしれないからなあ。で、うろつき回った挙げ句、「まあ、いつでもいいのは後回しにしよう」と、セントラル駅に向かう。

列車がない。

そこで鉄道・地下鉄1日券(Roundabout Ticket)を買おうと思ったのだが、窓口が長蛇の列だったのでクィーンストリート駅へ。そこで無事購入して、昨日行き損なったHouse for an Art Loverへ行こうとまたセントラル駅へ。サンデー・ヘラルドを買って昨日のセルティックの試合を振り返りつつ、列車の表示がスクリーンに出るのを待っていた。

30分待っても出ない。あ、と思ってTmetableを見直したら、この線は日曜日には運行しないのだった。あれれれれ。House for an Art Loverは土日しか公開しないのに。しまった。ううむ。タクシーか?

何のために1日券を買ったのか? ここで発想を変えてブキャナン・バス・ステーションへ行って明日の夜行を予約にしに行く。ちょっと遠い上に上り坂なのでリンクバスを待つ。これで少しはRoundabout Ticketの元を取ろう。

余計な金を取られる。

しかし、なぜかバスのドライバーは50ペンス出せ、という。クィーン・ストリート駅発行だから、というのだ。不可解だが、50ペンス出す。本当はリンクバスは全部フリーで乗れるはずなのだが。こいつ、Roundabout Ticketを知らないのかもしれない。

今日は、まったくついていない。

ロンドンへの夜行は24ポンド、明日の深夜11時発だ。ロンドン着は翌日朝の7時5分。バカ高い鉄道で行って遅れや運休にやきもきする気はもうないし、飛行機で行くよりもグラスゴーで使える時間が長い。これで、明日もフルに使えるので今日あせる必要はないのだ。

今度はクィーンストリート駅まで歩き、タクシーを探す。見あたらないので地下鉄をひと駅だけ乗ってセントラル駅のタクシー乗り場へ。今日は何度ここへ来たことか。すでに1時を回っている。

やっとマッキントッシュ。

というわけで、House for an Art Loverで1時間以上過ごす。ここはマッキントッシュの残したスケッチに基づいて新たに建てられたもので、建築プランや細部にはHill HouseやGlasgow School of Artで見たようなところがある。スケッチから現実の建物にするために、いくつも欠けていたところに他のマッキントッシュ作品から引用したからだ。

そして、最初から見学やイベントのためを想定しているので、その配慮がしてある。それはいいのだが、本来は住居なのに誰も住まないまま見学者に公開される、という珍しい経緯なので、たとえば暖炉は一度も使われた形跡がないし、キッチンもあるはずだが見学エリアにはない。つまり、住人の生活感がまったくない。

暖炉の上のグリーティング・カードとか、ダイニングルームの棚の皿(マッキントッシュのスケッチでは、皿をディスプレイした様子が描き込んである)とかもないのだ。

しかしまあ、クライアントがマッキントッシュから引き渡されたばっかりの家に入ったつもりで、見て回る。


ダイニングルームの壁上方をめぐるフリース。


音楽室に午後の光が溢れる。暖炉の構成が秀逸。


北側の外壁。

オルガンの響きに包まれて。

帰りはどうしようかなあ、と思いつつ東へと歩いて行く。どこかで地下鉄の環状線にぶつかるはずなのだ。20分ちょっとで目論見通り地下鉄の駅を発見。そこからケルヴィンホール駅まで行って、また東へと歩く。

ケルヴィングローヴ美術館、というかグラスゴーでは単にArt Gallery and Museumと表記するようだ。Galleryはもともと回廊とかいう意味だが、ここでは階上をめぐる言葉の源義通りのGalleryがFine Artに割り当てられ、地上階は恐竜やら武器やら衣装やら動物やらの博物館になっていた。ちなみにグラスゴーではすべてのmuseumは無料、と誇らしげに書いてあった。


正面のパイプオルガンに奏者が・・・見えない?

3時半に、パイプオルガンの音が響いた。月に2回くらい、無料コンサートがあるらしい。ほほう。20分ほど聴いてから、ギャラリーへ。1900年代のグラスゴーのアーティストを集めた部屋に、マッキントッシュの作品がある。

さらに絵画へ回ったら、なんとジョルジョーネが2点もある。彼は若死にしたから作品数は少ないのだ。見れば、ボッティチェリの【受胎告知】やレンブラントの【鎧を着けた男】、ロセッティ、バーン=ジョーンズ、ホイッスラーなどなど。なかなかのコレクションで喜んでしまう。

5時前なのに、外はもう暗い。このあたりは広い公園で天気さえよければ気持ちよさそうなのだが、まるで真冬の京都のような底冷えがする。そのなかを、またまた歩いてホテルへ帰着。

夜は<北京菜館>でワンタンスープと酢豚と炒飯とアイルランド風アイスクリームという食事のあと、ライブをやっているパブかバーを探すが見つからず、凍えてきたうえに危ない輩がところどころに溜まっているので、面倒なことにならないうちに帰る。

photography and text by Takashi Kaneyama 2000

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