BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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11月15日・エジンバラ→インヴァネス「ネッシーを描いた。」

少しだけ信頼回復。

早朝。突然、一番早い列車でインヴァネスに行くことを決意。それなら急げ。ページを作ってアップロードし、荷造り、チェックアウト、朝食。

ところが、カフェで朝食を注文してから出てくるまで15分もかかってしまった。このへんがスコットランドの呑気なところである。エジンバラ・ウェルヴェリー駅まで速歩。8時40分のインヴァネス行きがスクリーン表示に出ているのを確認して窓口に並ぶ。発車まであと10分。しかし、心配は「切符を買うのが間に合うか」ではなくて「たしかに走るのか? ちゃんと運行するのか?」なのだった。

ヨークとランカスターで土砂崩れがあったらしく、またまたダイヤが乱れている。そのなかで、奇跡的に定時に発車し、3時間19分かかるはずが、わずか14分遅れの3時間33分でインヴァネスに着いた。油断して、「インヴァネス駅に着く」というアナウンスがあるまで靴を脱いだままだったくらいである。もしかしたら、スコットランド鉄道はまだ大丈夫なのだろうか? 昨日の時点では「もう鉄道はやめてバスにしよう」と思い詰めていたのだが。

インヴァネスは思ったよりも小さな街で、ツーリスト・インフォメーションも充実している。ここでご推薦のB&Bへ。1時までにチェックインしてほしい、ということで急ぐ。非常にフレンドリーで親切でていねいなホストのおばさまアンがなにからなにまで案内して説明してくれる。なのだが、私の方は実は早くインフォメーションに戻ってネス湖行きとスカイ島行きのツアーかトランスポートを調べたかったので、あまりに詳しい説明は上の空で聞いていたりする。

それ行けネス湖。

さて、アンは出かけ、私も1時には出てまたインフォメーションへ。午後2時からのネス湖ツアーを発見し、すぐに予約。スカイ島はツアーがあることはあるが今は隔日催行で明日木曜日にはない。なので鉄道とバスの時刻表をもらう。ローカルPOSTBUS(郵便配達車が人も乗せる。そういうことだから1日に1往復くらいしかない)の時刻表までゲット。

というわけで、そのままトニーという白ヒゲのおじさんのミニバスでネス湖へ。ツアーと言っても私のほかは若いカップルひと組だけの3人である。

自然史にやたら詳しく、大陸移動から地質学から植生まで、岩石とか植物の名前が頻出する。そのおかげでネス湖がなぜあんなに細くて長くて深いのか? ということはよくわかった。スコットランドって大昔は赤道近くにあったなんて、知ってた?

肝心のネス湖よりも、アプローチの道路沿いの紅葉がものすごくきれいだ。もともとScotland nativeではなく、植林したものだそうだが。

途中、なぜか牛に餌付けする。高級牛らしく、ものすごくおっとりしていて、トニーがパンを振り回して呼んでから28秒後(手動計時)にようやく動き始めて、こっちに寄って来る。

問題の「怪物」の目撃証言や写真は、トニーが手製のファイルを紙芝居のようにめくりながら解説してくれる。これが科学的というか論理的というか、ロマンとか夢とか幻想とかには縁もゆかりもなく証言も写真も切って捨てていく。意図的な偽物はもちろん、善意の見誤りとか思いこみ、でしかないのだ、トニーにとっては。傑作は犬が棒をくわえた写真がなぜネッシーになったのかというくだりで(写真を比べれば一目瞭然)、他も波の反射、ひっくり返った船、アザラシ、ということになってしまう。

ふうん。そういうことなら、ここは私が描いて見せよう。

ツアーは城の崩れた跡を見てから、Loch Ness Exhibition 2000の展示へ。このチケット代(5.95ポンド)も込みで9ポンドなのだ。

さて、結論は? 展示ではかっこうよく環境問題にまで話を広げながら、定石の「結論をくだすのはあなたです」で、終わっている。トニーによれば、もっと端的な結論が提示される。自ら「Boring」と言っているが。それは・・・インヴァネスまで来てトニーに聞いてね。

ハイランド・ミュージックを求めて。

5時前には中心部に戻った。すでに夜の街だ。しかし、暗いだけでレストランのほとんどはまだ開店していない。トニーが言っていたMusic Museumを探してみる。バッグパイプを吹かせてくれるらしい。もちろん、もう閉まっているのだろうが場所だけでも確認・・・できた。下にはバーがあって毎日ライブをやっている。

そうか、トラッド・ミュージック・パブ。すると、探すまでもなく角を曲がってパブが見つかると、かなりの確率でライブ・ミュージックをやっている。ダブリンよりも確率は高いかも。それでは、とスポーツ・パブも探してみる。今晩はスコットランド対オーストラリアとイタリア対イングランドとアイルランド対フィンランドがあるのだ。すると、やっと1軒、大スクリーンでSkySportsを流すところを見つけた。よしよし。

まだ試合開始まで早いので、パブの向かいのインド料理店でタンドーリなどを食す。座ってコーヒーを飲んでいたら急に疲れが襲ってきた。そういえば今朝は4時には起きていたんだっけ。満腹で苦しいし。帰っちゃおうか?

そういうわけで、パブはやめておとなしくB&Bに帰る。ラウンジにも部屋にもテレビはある。SKYは入ってなくてもBBCでハイライトくらいやるだろう。かくして怠惰にBBCを見続け、「モース警部」とか「DIY SOS」とかを見てしまう。ところで、アメリカの大統領はいつになったら決まるのだろうか?

photography and text by Takashi Kaneyama 2000

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