BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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11月9日・バース→ストラトフォード・アポン・エイヴォン「英国鉄道を憂う」

あほな駅員。

結局ストラトフォード・アポン・エイヴォンまで行って、そこからチッピング・カムデンまで日帰りしようかと思い、そのためには数少ないロンドンからの直行列車をレディングでつかまえないといけないので8時半にはチェックアウトした。

で、駅でストラトフォード・アポン・エイヴォン、マンチェスター、ウィンダーミア、グラスゴー、エジンバラ、ロンドン、オクスフォードへと経路を書いた紙を見せて周遊切符を作ってもらおうとしたら・・・あほな駅員がオクスフォードまでの片道切符を寄越した。それでは何にもならん。やり方はあるのだ、バースからエジンバラまでの往復切符を作って経路外はその都度買う(去年、ユーストンでダブリン往復を買ったときの方法)というやり方が。

しかし、そのおじさんがあまりにほがらかと「そんな切符はないよ」という対応をするので、こちらも明るくさようならした。こいつと話しても時間の無駄だ。

レディング経由のパディントン行きがもうすぐ出る。ほとんど時間がなかったのですばやくホームへ上がる。切符は間違っているが、とにかくレディングまでは行けるので、乗り換えてから車内で買い直そう。

しかし。

列車は大幅に遅れて、レディングでストラトフォード行きに間に合わなかった。しかも超混雑で通路まで人がいっぱい。

さらに。

レディングからとりあえずレミントン・スパまで行って、そこからバスにしようかとニューキャッスル行きを待ったがなぜか運休。結局、2時間近く待ってようやくストラトフォード行きをつかまえ、30分遅れでようやく着いた。予定よりも2時間半も遅れてしまった。

が、ついに検札がやって来なかった(正確には、通り過ぎて行った)ので、追加料金を払わずにすんだ。なにはともあれ、BritishRailsの各鉄道会社の将来は暗いぞ。切符の作り方も知らないわ、運休も遅れも何とも思ってないわ。

2度会う人には3度会う。

列車のなかでガイドと自称するおじさんが親切にも地図をくれ、B&Bがたくさんある道を教えてくれた。さらに、いいレストランはシープ・ストリート、シェイクスピア芝居のシーズンは来週から、シェイクスピアの生家はここ、家巡りのバスはここから出る、と解説。こういう場合、ツアーを売りつけるとかありそうなものだが、そういうことはなく明るく去って行った。

で、その教えにそむいてGuide Fridayあたりで宿を紹介してもらおうと歩き始めたら、またそのおじさんに会ってしまった。今は洪水で列車の運行が不安定なのだそうだ。で、交差点で「あそこのイームズベリ・ハウスが評判がいいから試してみなさい」と言われてしまい、しょうがなくそこで尋ねてみたら、今晩1泊だけしかないということで辞去。

再度Guide Fridayへ。宿の手配もしていることを確かめてから中に入ろうとしたら、また件のおじさんに会ってしまった。

「イームズベリはどうだった?」
「今晩だけしか空いてなかったので」
「それなら・・・」

と、また違う通りを教えてくれ、私が歩き出すのを見守っている。その勢いに気圧されて、ついつい歩いてしまった。全荷物(といってもふたつだが)をかついでいるので、早く楽にチェックインしたかったのだが、運命は「自分で苦労せよ」と諭しているようだ。

公園から通りをはさんだところによさげなホテルがあったので、高そうだったが入ってみる。ベルを鳴らしてから上を見たら"Dominique & Olive"というプレートがあって「もしかして個人宅?」と思ったがB&Bに近いホテルなのだった。

値段を聞くまもなく、まあ入れとうながされ、最上階のツインルームを見せられた。部屋は広くシャワー、トイレ、テレビ付き、窓からは通りをはさんで公園が見下ろせる。

一目で気に入ったが、問題は値段である。

すると、45ポンドでいいという。

本当は65だけどね。どこから来たんだ? 東京? 何で来た? 鉄道? まだ動いているかね? 洪水で遅れた? いや、いつも遅れているんだよ、英国の鉄道は。洪水はいい言い訳さ。日本では時間通り動くだろう。フランスだってTGVは時速200kmだ。だが、英国の鉄道はダメだ。

私はTGVの時速が速いのと定時運行は関連があまりないのではないか、と思ったが賢明にも黙ってうなずいた。まあ、英国が高速鉄道時代に適応できていないのは確かだ。

というわけで、キーを渡され、無事に宿を確保できた。前払いもクレジットカードの提示も宿泊カードの記入もなく。

散歩、そして散歩。

私としては珍しいことに、シャワーも浴びず、昼寝もせずに街に出た。チッピング・カムデンまでのバスと、マンチェスターかバーミンガムまでのコーチを調べないといけない。

と思ったが、何となく気持ちよさそうな通りがあったので行ってみたらシェイクスピアの生家だった。少し迷ったが入ってみる。シェイクスピアは本当は誰か? みたいな議論がかつてあって謎の多い人生かと思えばそうではなく、洗礼も死亡も遺言もゼーンブ記録があるのであった。ありゃま。

生家はなかなかよく修復され、ガイドの説明も楽しいのだが、私がもっとも注目したのはシェイクスピアにはおそらく何の関係もない庭のハーブ。

いちおう、ツーリスト・インフォメーションまで行ってバスの時刻表をコレクションする。だが、今ではチッピング・カムデンまで遠出する気持ちは薄れ、今日明日とこの小さな街でまったりと過ごそうという気分なのだった。

川沿いを散歩し、新聞を買って読む。アメリカ大統領選挙の続報。いまだになんで数え直しているのかよくわからん。HMVでチャートを見る。U2が1位、BLURが2位。

やっとレストランが開いたので、インド料理にしてボジョレーを1本飲みつつ、ベンガルフィッシュ(って何?)のフライと羊のロースト、アマレットのアイスクリームを食す。今回、初めてといっていいディナーに値する食事で満足して帰る。

ゆっくりとシャワーを浴びて、テレビのニュースを見ながらベッドでくつろぐ。なにかやるべきことがあったような気がするが、そういう雑事は心から遠ざけてそのまま寝てしまった。

photography and text by Takashi Kaneyama 2000

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