BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
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11月7日・バース/レイコック「何もない村」

コッツウォルズはシーズンオフ。

8時半にはホテルを出てバス・ステーションへ。インフォメーションは開いていなかったが、チッピング・カムデン経由でストラトフォード・アポン・エイヴォンへ抜けるバス、X55は10月一杯で終わっていた。コッツウォルズではメジャーなチッピング・カムデンにさえ、なかなか行けないのか。

鉄道駅へ。ここでは英国一般の相談に応じる、というので「ここからどうしたらチッピング・カムデンに行けるか」尋ねた。で、モートン・イン・マーシュからバスがあるそうだ。しかし、この係員は私よりも地図も時刻表も見方がわかっていなかったぞ。例のサービスの終わっているX55を持ち出すし。

いろいろ時刻表をコレクションして、いったん中心部へと戻る。

18世紀がそのまま。

アベイ(Abbey)で、典型的なファン・ヴォールトを見る。

11月12日にRemenbrance Day(戦没者追悼記念日)があるので、ポピーを刺した十字架や戦没者名簿が展示されている。バースは、英国空軍のドイツ爆撃の報復で1942年4月に激しい空爆にさらされ、多くの一般市民が亡くなった。


中世写本ふうの戦没者名簿。

今日もロイヤル・クレッセントへ。昨日は1番地のミュージアムが月曜で休館だったのだ。ここは家具、調度品、絵画から小物までほぼ全部18世紀のオリジナルを揃えて生活を再現しているのがウリ。各部屋にガイドのおばさんがいて、質問に答えてくれる。というか、勝手に触らせてくれない(当たり前だ)。

いまは冬期のディナーのデザートコースを再現とかで、なんと温室栽培のパイナップルで客を驚かせたんだそうだ。18世紀に。いやはや。

駅までただ戻るのも癪なので、エイヴォン川沿いの歩道に降りて歩いていく。これで川が泥色でなければいいのに。

レイコックへ行けるのか?

チッペナムまで列車で行って、そこからレイコックという小さな村へバスで行こう、という計画なのだが、バスはどこから出るのか、いつ出るのか、だいたいチッペナムはどんな街なのか、情報がまったくないので出たとこ勝負なのである。

というわけで、12時過ぎにチッペナムに着いた。駅前にはタクシーしかいないので、構内を探索してバス停は駅から南へ歩いたあたりと判明。テキトーに歩いたらインフォメーションがあったのでレイコックまでのバス便とバス停の場所を聞く。234番のバスで、日中は1時間に1本、毎時10分に出るらしい。

無事にバス停に着いて、ぼんやりしていたら、まだずいぶん早いのに234番のバスが止まっていたので、ドライバーがいないけど中で座って待つ。やがてドライバーが来たので料金を払ったら、すぐに出発してしまった。まだ1時4分なのだが。6分も早いぞ。それでいいのか?

10分で着き(ドライバーがちゃんと教えてくれる。だいたい、見慣れない人間は私だけなのだ)、あたりを見回すが・・・誰もいない。ううむ。聞きしにまさる小さな村だった。しかも、見所とされるアベイもタルボット博物館も修復中とか来年再オープンとか週末だけとかで、すべて閉まっている。オフシーズンの田舎はこんなものだ。

本当に何もない。

紅や黄色の落葉が舞う中を延々散歩する。きれいな芝生のグラウンドにもぐり込んで瞑想する。パブやティールームやパン屋さんをのぞいていく。・・・ということをやっていたら、いい加減寒くて冷えてきた。ブルルルッ。


教会の墓地で会ったデブ猫。

セルフサービスのティールームでハムと蜂蜜マスタードサンドイッチ、ポットで出るミルクティーで温まる。1時間に1本のバスを待ってチッペナムへ、列車でバースへと戻る。

かくも貧しき食事。

郵便局に寄ってみる。が、ただ寄っただけだ。ここでぐずぐずしているあいだに、本屋とかメンズショップとか旅行代理店がどこも5時半で閉店してしまった。アホじゃ。

昨日見つけておいたスーパーで食料調達。賞味期限間近で値引きになったサンドイッチと寿司、ミネラルウォーターとキルシュのポケット瓶、サラダ3種をテキトーに小さなボックスに詰め、デザートにチョコレートクリーム。しめて9.76ポンド(1600円くらい?)。このうち、キルシュが5.49ポンドもするので、700円くらいで十分贅沢な食事は可能ということだ。

・・・と思ったが。ホテルに帰って食べてみたら、寿司とサラダは想像を絶するまずさだった。巻き寿司なのだが、おにぎりよりも堅くごはんがくっつき、半搗きの餅に近い。しかも冷たい。中身の漬け物はまるでピクルス。サラダは酸味が強すぎるし、カレーとかメキシカンでいいかと思ったが全然スパイシーではなかった。急速に食欲をなくし、おかげで少し痩せそうだ。

photography and text by Takashi Kaneyama 2000

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