BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIALスペイン蹴球紀行
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第1話:35分遅れの出発

またも遅れた。飛行機ではなく、私が家を出るのが、だ。

予定では、朝の6時に家を出ればゆっくり間に合うはずであった。6時20分でも、ちょうどいいくらいに着く。まあ、20分の猶予があればいいだろう。

しかし、終わらなかった。PowerBook2400のファイルのバックアップが。すでに荷物もできているのに、出かけられない。ホントは、ネットでいろいろ情報をもっと調べてもおきたかったのだが、そんな時間はない。

結局、6時25分にバックアップを途中で切り上げてPB2400と電源アダプタを詰め、最後の点検をして、家を出た。そしていつもの3WAYボストンバッグを肩にかけようとして気づいた。

「肩ストラップがない!」

慌てて戻って捜索。ないはずがない。考えた末、バックパックストラップを収納するスペースで発見。そこで思い出した。前回、成田から帰るときに邪魔なのでしまったのであった。

この時、すでに6時35分。まあ、しかたないかと歩いていて、今度は靴を間違えて履いて来たことに気づいた。G.T.HawkinsのTravellerは少し堅いが厚いソールでトレッキングも可能な丈夫さと、オペラに行っても許容されるスタイリッシュさが気に入っているのだ。それを忘れて普段遣いのウォーキングシューズを何気なく履いてしまった。

まあ、いいか。かつてこの靴でイタリアやフランスに行ったのだ。古びたとはいえ、楽な靴ではある。かくしてJRを乗り継いで上野に着いた。この時点で集合時間の1時間半前。いつもの特急はだいたい成田空港まで1時間20分弱だから、運良く京成上野駅へ渡る信号が青で、運良くすぐに出る特急かスカイライナーがあって、成田空港ですぐにカウンターに辿り着けば、間に合うかもしれない。

しかし、どうせそんなに急ぐ必要はないだろう。

そして。

なんと間に合ってしまったのである。ありゃま。ドタバタしつつチェックインし、UAのマイレージに加算してもらい、ルフトハンザの時刻表をもらい、15年前の東京銀行のT/Cから2万円をペセタに替える。東京三菱銀行の窓口で「念のために確認します」っていうくらい古いチェックである。さらにAIUでいちばん安い保険に入り、このあいだ壊れた旅行用財布の代わりにひも付きの財布を買い、500ccのミネラルを買い、入出国カードを書いて出国し、ゲートに着いたのは搭乗予定時刻の15分前であった。ぜいぜい。

(第1話:35分遅れの出発 了)

text by Takashi Kaneyama 2000

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