BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL EURO2000への挑戦
CONTENTS
6月15日-17日/ブリュッセル

6月15日(木)

文無しの休養日。

今日の標語は「豊かな食事、適度な運動」。昨日までのハードスケジュールがたたって、ろくなものを食べていないのだ。

まず、中央駅へ行き、インフォメーションでEURO2000のための臨時列車ダイヤを入手。これで、シャルルロワでもリエージュでも試合終了後にブリュッセルまで帰れることがわかった。

王立美術館へ行くが、昨日の余波で文無し。「豊かな食事」どころではない。結局FortisBankの本店らしきところまで行ってお金を引き落とした。

美術館は、以前は無料だったような気がするのだが、とにかく気合いを入れて見て回るが、12時〜午後1時には15-16世紀のギャラリーが閉まってしまう。なんと肝心のブリューゲルをを見逃していたりする。ルーベンスなどの17-18世紀のギャラリーを回って地下のカフェテリアでチョコレートムースとオレンジジュース、コーヒーにする。そういうものしかないのだ、ここには。どうも「豊かな食事」にはほど遠い気がする。


ブリューゲルにはこういう作品もある(細部)。

さらに別棟の近現代を回っていたら、もう3時を過ぎていた。

中央郵便局へ行って小包の箱を買っておく。妙に人気のない郵便局だなあ、と思ったらひとつ上のフロアが本体なのだった。

スーパーで飲みものとイチゴなどを買ってホテルに帰り、風呂入って洗濯して仮眠をとる。バスタブがあまりに広いので寝そべって腹筋と背筋の運動をする。

で、近所のポルトガル・レストランでオマール海老のビスクと羊(いわゆるラムチョップ、フランス語でコートダニョー)のローストを食す。

ホテルに帰ってスウェーデン対トルコを観るが、0-0の凡戦。夜中にはどこかのアホが「England?」という間違い電話を何回もかけてくる。レセプションに国際電話のかけ方を聞きなさい、というのに、今度は「Reception?」とかけてくる。いったいどういう神経回路をしているのか?

通信はなぜか途中で接続が切れてしまい、回線が不安定なことが判明。Belgacomのせいか、ホテルの交換機か? どういうわけか、初回だけは5分以上もつので、それでなんとかする。

6月16日(金)

白鳥のせいで出遅れ。

おなかと背中の筋肉が痛い。昨日の運動のせいだ。ううむ、アホかもしれん。

パリの「マダム」へのファックスをフロントに依頼。そのままブリュージュへ。

或る人へのメール

6月16日、ブリュージュ、チェコ対フランス。

ブリュージュは前回来たときもなかなかよい街だと思いましたが、今回でもそうでした。というより、ここは 15世紀を冷凍保存したような街なので、変わりようがないのですが。


ファン・アイクの腕の冴え。

美術館でゆっくりしてから、現金が少し足りないなあと思い、キャッシュディスペンサーを探したらない。探すうちに駅まで戻ってもない。途中、運河沿いのベンチで休んでいたら白鳥が寄ってきたので遊んでいたのですが、そんな場合ではなかった。


キミたちのせいで、試合に行けなかったんだぞ。

キックオフの1時間半前だったので、スタジアムに行こうと思ったら、特別シャトルバスはチケットを持っていないと乗れない。ピンチ! しかもダフ屋さんは影も形も見えない。あるいは中心部の広場かもしれないが、そこまでは歩くと20分かかる。でも、駅前ではどうしようもなく、歩いてみたら、すでにさっきまでの大勢のひとはいない。みんな、バスに乗っていってしまい、警戒中の警察も一仕事終わった感じでのんびりしている。

完全に出遅れ。しかも、ここにはあんなに探したキャッシュディスペンサーがあったのです。やはりチケットのないフランスのサポーターがちらほら。途中、HiFi-shopの店頭でテレビを見ていたら、すでにフランスが先制していました。

今日の敗因は、余裕ありすぎの慢心と、判断ミスの重なり。キャパシティの小さな会場なので、もともとチケットが出回っていなかったせいもあるでしょうが。これで、明日のシャルルロワへの挑戦が決定しました。

6月17日(土)

逃げろ。

本屋を回り、ヴァン・ビューレン邸に行ったら開館日が土日から日月に変更になっていた。オルタ博物館へ行ったら、開館は2時からだった。苦労して探し当てたのに。近所の公園で休んでいたら、老婦人にオランダ語で道を聞かれた。幸い、オルタ博物館はどこか? という質問だったので、苦もなくクリア。

オルタ博物館が開く頃に行って見学。それから中央駅へ行ってみたら窓口に行列が出来ていたのでシャルルロワへの往復を買っておく。おつりが100BF足りないのに、あとで気づいた。まだ修行が足りない。

市場で送られたリスト通りにエッセンシャルオイルを買うが、該当するのが5本しかなかった。ホテルの戻って荷物を置き、すぐにスーパーへ買い出し。今日も明日も帰りは真夜中なのだ。

或る人へのメール

6月17日、シャルルロワ、イングランド対ドイツ。

ブリュッセルの駅からすでに警備の方々に囲まれています。シャルルロワの駅では、警備の人垣に沿って歩くしかなく、そのまま市の中心部へと歩かされました。駅前からメトロに乗りたかったのに。

街中がビールとソーセージとヘビメタ(なんとバンドが街頭でやっていた)だらけ。ただでさえうるさいのに。街の人は商売か怖いモノ見たさか、どちらか。

とにかく30分かけて駅まで地図なしで戻り、メトロに乗ってスタジアム付近までは行けたのですが。周囲を全部スタンドのゾーンごとに区切ってのチケットチェックになっており、その前でチケットがない連中がたむろする状態。ここでは"Ticket?" と尋ねてくるのはチケットが「欲しい人」であって「売りたい人」ではありません。ささいな行き違いからあほなイングランドのファンと喧嘩しそうになりました。人がしゃべるのをよく聞いていないからじゃ。

目の前で全速力でおっかっけっこ。チケット泥棒が被害者に見つかったらしい。救急車が来て、頭から流血する人を診察。これもチケットトラブルらしい。

とにかく遭遇するのは買い手ばかり、漏れ聞いた相場は1万ベルギーフラン。ついにキックオフ前にあきらめてビールを買って隙間から見えるスタンドの風景を眺めていたら。


これでもフーリガンを威嚇してい状態。左奥にスタジアムが見える。

突然、大勢が一斉に走り出してゲートを揺らす。あわよくばそこから乱入しようということらしい。しかも、誰が扇動しているのか、一瞬にして暴徒化するのです。しばらくしてあきらめて帰る。警察というか機動隊みたいなフル装備の人々は俄然緊張。もう1回、一斉にゲートを襲う。すると威嚇の銃声とともに装甲車が前進。

これはあせりました。申し訳ないが、花壇の花の上を走って逃げました。ここで流れ弾に当たるとか、逮捕されるとかいうのはできたら避けたい。一緒に逃げまくっていたので、捕まったらアウトでしたね。翌日の朝刊の見出しが頭に浮かんでしまいました。

「失業中の不良中年がフーリガン化、シャルルロワで暴行狼藉」

銃声は実は録音テープみたいでしたが、これはまずいといきなりジャーナリストのふりをして警察の写真を撮ることにしました。なにしろマスコミは警戒する機動隊をバックに嬉しそうにレポートしています。ひとりくらいわからんだろ。

超低空を舞うヘリの爆音で揺れるシャルルロワ。

しかし、いちおう理性が働いて最終列車の前に帰ろうと歩き始めたのですが、途中の市内のあらゆるところでフーリガンが群れていて、コトがあると試合そっちのけで突然暴れる。ついにモノを投げるわ、警察に尻を出して挑発するわ、ショーウィンドーを揺らすわ・・・騒乱一歩手前の状態でフーリガンと機動隊が対決状態。まっすぐに駅まで戻れず、迂回に迂回して駅にたどり着き、やっとブリュッセルに帰ってきました。

退却する途中でも騒乱だらけ、ゴミだらけで、いやあひどいもんです。

ホテルのテレビで見ると放水やら騎馬警官やらもっと激しい騒動だったようで、「あれは見なかったぞ」と少し残念でした。もうちょっと頑張ればなあ・・・って、そういう問題でもないような気がする。

というわけで、2日つづけて試合を見られませんでしたが、充実していることはたしかです(なにが?)。

photo & text by Takashi Kaneyama 2000

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