BON VOYAGE!

「哀愁のヨーロッパ」
SPECIAL EURO2000への挑戦
CONTENTS
6月12日-14日/アムステルダム→ブレダ→ブリュッセル

6月12日(月)

存在しない席。

ロッテルダムへ移動して、そこを拠点に2試合を見ようという目論見だったが、ロッテルダムでは部屋が払底していて、ドルドレヒトへ。しかし、この小都市も満室でブレダへ。ここでとなりのローカル駅近くのビジネスモーテルみたいなところに宿を確保。

全荷物をかついで移動すること6時間、4回列車の切符を買って乗ったことになる。ぜいぜい。こんなことなら、デルフトにいるあいだにロッテルダムの宿を予約しておけばよかった。

そしてアイントーホーフェンへ。

或る人へのメール

ポルトガル対イングランド。

カテゴリー2のチケットに500とか400とかふっかける陽気なおじさんに「昨日のオランダ戦で150だぞ。笑わせるな」(こっちも対抗上さばをよむ)と交渉開始。結局110Gの席を150Gで買ったのですが・・・。

さすがイングランド戦、もぎりが2回で、それぞれ格子状のパネルのあいだの狭いところを通らされます。しかし、入ってみたら席がない。row1は最前列なのですが、そこにはもともと席がない。row2から始まっているので。さっそく、スタッフに掛け合い。同じ境遇の「存在しない席」のチケットをもった人々4人を引率してスタッフのおばさんが事務局と交渉するも、けっこうな時間がかかる。もうキックオフの時間なので、場内で待て、ということで戻ったらイングランドが先制。スコールズのヘッド。うううむ。ポルトガルを応援したいのに、周りはみんなイングランドだし。

ようやく新しい席が確保されて、チケットを交換。カテゴリー1の200Gの席になりました。ここも前すぎて見にくいのですが、目の前をマクマナマンやオーウェン(不調なのかすぐコケル)が走っていくのがなかなかです。


オーウェン、このあと倒れてしまう。

なお、ホテルはロッテルダムでダメ、ドルドレヒトでダメ、ついにブレダ(っていったい何人がこの街を知っているだろうか?)のそれも郊外のビジネスホテルに泊まっています。帰途は試合後の列車は立ったままの蒸し風呂でしかも20分遅れ、駅前ではタクシー待ち20分。

以上、ご報告まで。ちなみに試合は0-2からポルトガルが逆転して3-2で勝利。ユース優勝の黄金世代の最後の輝きになるかもしれません。いままで「ファンタスティック」「美しい」と形容されてきたポルトガルが、ついに「強い」チームになる日がくるのか? でも、フィーゴとルイ・コスタの技というかスピードというか余裕というか、絶品です。


逆転の決勝ゴールを決めたヌーニョの歓喜のラン。

6月13日(火)

ノルウェーの巨体が踊る。

せっかくブレダにいるので、中心部を散策する。市場が立っていて、きれいなカリヨンが鳴る街だ。

ひまをいいことに、バールレ・ナッソーへ行く。ここはオランダ内にベルギー領の飛び地があるところで、市役所も警察も郵便局もふたつずつ両国のものがある。しかもその飛び地が入れ子のモザイク状で、地図マニアとしてはそそられる街なのだ。


一軒の家にふたつの番地。ベルギーでは2番地、オランダでは9番地。

ブレダに戻ってロッテルダムへ。

或る人へのメール

13日、ロッテルダム、スペイン対ノルウェー。

ロッテルダムの市内交通の1日券(1日中乗り放題)は、この時期にはEURO2000の16か国から選べます。最初、"Which coutry?"と聞かれたときは何事かと思いましたが。今日は当然スペインを買い、トラムでスタジアム"DE KUIP"に向かいました。

しかしまあ、どこもかしこもノルウェーだらけ。例のバイキング帽をかぶった大男たちが狭いトラムでジャンプすると、当然天井に角がぶつかるのでありました。

今回はふつうの人がカテゴリー2のあまりを100Gで売ってくれました。ただし、記載名は「NORWAY」。この時点でスペインのキャップを隠すことが決定。

さて、試合はあまりに退屈で眠くなりそうでした。周りのノルウェー人が寝させてくれませんでしたが。ノルウェーは「疲れを知らない厳しいチェック」でボールを奪うのですが、ゴールするアイディアが貧困。スペインは中盤でも前線でもことごとく長身で足の長いノルウェーに立ちはだかられて、自分のプレーが出来ず。


勝利の雄叫び。

結局、自陣からのロングボールをダイレクトでループシュートした一発がころころとゴールインしてノルウェーが1-0で勝利。スペインは「ビーチで昼寝していたのか?」と揶揄されるくらいで、このぶんだとまた98年の二の舞になりかねません。

帰りのトラムは大行列で、とことこと歩いていったら、みんながフェンスを乗り越えていくので真似したら捻挫しそうになりました。やっぱり北欧とは体格が違い過ぎます。

ホテルに着いたら(今日は1時間50分くらいで帰れました)ユーゴ対スロヴェニアで、なんとスロヴェニアが0-3でリードしていて、しかもミハイロヴィッチは退場処分。ありゃまあ、と思っていたらあっという間にユーゴが3点つづけて叩き込んで同点。すさまじい試合でした。ゴール裏はもはや狂乱の巷。

というわけで、ラウル、最後までゴール前で張っていたのですが不発。体調は悪くないようなので、今後に期待しましょう。

6月14日(水)

有り金がなくなった。

ブリュッセルへ。このあいだ、予約したホテルなので、昼過ぎには余裕で着いた。さあ、何をしようかなあ・・・と昼寝した。今度は大きいバスタブもあるのだ。

さて、メトロに乗って行くか。と思ったら現金がなく、PLUSのキャッシュディスペンサーを求めてさまよう。とりあえず5000BFだけおろしておく。

或る人へのメール

6月14日、ブリュッセル、イタリア対ベルギー。

まずは、ベルギーフランの現金を5000BFだけ引き落としました。銀行レートなの1BF=2.5円くらいのはずなんですが、そうすると12,500円。これで明日まで生き延びよう。

トラムを2回も乗り間違えた末に、スタジアムに到着。ここが以前ヘイゼルスタジアムと呼ばれていたころ、ユヴェントス対リヴァプールの試合で血塗れの惨事があったわけで、おかげでここは「ボードワン国王スタジアム」と改名されています。

今回は交渉が難航しました。「3000」「いや、2000」とやっている脇で「4000で買う」という輩が現れてチケットをさらっていきます。このカテゴリー2の定価は2065BF。ちなみにこのひったくり野郎はイタリア人でした。ううむ。2500あたりで手を打とうと思っていたのに。

結局、カテゴリー1の3650BFを5000BFで買いました。なんか、敗北感。なにしろ、有り金全部なので飲み物も買えない。帰りは1日券を持っているからいいようなものの。7500を5000に値切ったという見方もできないわけではないのですが。

ちなみに、売った方はアルバイトらしく、「東京までビーチサッカーで2回も行ったよ」と、友だち扱い。しかしなあ、キミに「you are good guy.」とか言われても全然嬉しくない。

席はやや低いものの、中央にかなり近いところでなかなかよかったのですが、試合はというと。問題は開幕戦で好きになったベルギーが0-2でまったくいいところなく負けたこと。
イタリアはいつものようにカウンターからの速攻で5分で先制し、さらに後半にデル・ピエロが入ってすぐにフィオーレが2点目。このフィオーレは注目です。イタリアの貧困な中盤の救世主になるかもしれません。少なくともこの大会でゾフはフィオーレを組み立ての中心に考えているはずです。


スタンドはベルギーの赤だらけ・・・というわけでもなかった。

さらにベルギーはオウンゴールまで献上・・・と思ったら審判の温情でキーパーチャージをとってもらってノーゴール。終了間際のロスタイムにはやる気なさそうに蹴ったデル・ピエロのFKがあやうくゴールイン(GKがかろうじてフィスティング)しそうになり・・・。

一気に沈んだベルギーサポと一緒にメトロで帰りました。しかし、グランプラスは封鎖状態で、目の前のホテルに近づけない。機動隊のおじさんに「どうやって行くんだよ?」って聞いたら「ぐるっと回れ」とニコニコしながら手を回す。一緒にビールを飲んだら楽しそうなオヤジでしたが、このビール腹でフーリガンに対抗できるのか、とっても心配です。

photo & text by Takashi Kaneyama 2000

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