2月14日
さようなら田澤君 〔自在人形・弘子画〕


どんなことでも「出来ません」とか「都合が悪い」と言ったことのない人がいます。いました。田澤實君です。径が1m.長さ6mの樅の木が必要だと言えば「探してきます。」と一週間後には届きます。等身大の楠木正成像を作る、本物の髪の毛のカツラが欲しいと言えば「大丈夫です。すぐ用意します。」と答えます。容易く引き受けたがこれは無理だろうと思いました。その田澤君が「パリ展に私も行きます。」と同行しました。「先生の作品が一番。ヨーロッパのアーチストなど問題じゃない。」と言いながらパリの街を闊歩していました。あんなにパリを楽しんでいた田澤君が、帰って一週間目の2月6日の夕刻逝ってしまいました。心不全でした。背筋が凍り付くような出来事です。「奥さんの土産はこれ!」と頂いた〔自在に体形が変わる人形〕を涙しながら、弘子が描きました。通夜式を済ませた8日の夕刻「田澤さんに頼まれた物です。」と本物の髪の毛のカツラが届きました。

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