{ケージについて}
成長すると最大エジプテクスでは全長70cmくらい、他の種類でも30−40cmくらいにはなるので、ケージはそれなりの大きさが必要です。イグアナなどと違い地上棲なので、あまり高さは必要ないと思います。通常お手軽に済ますには、90−120cmの規格サイズの水槽で飼えます。もちろん余裕のある方は、さらに広い水槽、あるいは木製ケージなどを自作するのもよいでしょう。水槽の材質はアクリルの方が安全ですが、彼らは結構水槽壁をがりがりやるので、傷が付きやすいのが難点です。
上部には必ずステンレスメッシュなどの覆いをかけ、脱走されないようにして下さい。電気のコードなどを足がかりにして、壁をよじ登ったりする場合があります。天井の一角に小型のファン(うちでは熱帯魚水槽の水温上昇防止に使用する「クールファン」というのを使用しています)を設置し、水槽内の空気の流通を図ります。
{照明について}
元来砂漠棲の動物ですから、明るい環境を用意します。光源としてはフルスペクトラムランプ(トゥルーライト、レプタイルデイライト、イグアナライトなどといった製品があります)を全体の照明にし、レフランプや、バスキングライトなどのスポット照明を1部に使用します。
ただしこの種を飼育する場合、これらの人工光線だけでは彼らに必要な紫外線B波を十分得ることはできません。天気の良い日は極力自然の太陽光にあてることが、健康を保つためには必要だと思います。短時間の紫外線灯の照射も考慮に入れてもよいでしょう。
{環境温度について}
一般にこの種類はかなり高温を好みます。日中は40度近いホットスポットの下でも平気でくつろいでいます。ただし夜間は逆に低温に保った方が好ましいとされています。うちは夜間の温度は20度くらいに設定していますが、夏場はこの環境を維持するのは難しいです。
昼夜の温度差を付けないと、甲状腺の機能障害を起こすといわれています。また年間を通じて多少の季節変化をつけた方が、健康にも、また発情を誘発するためにも必要だそうです。
湿度も砂漠のような低湿度がよいようです。特に夏期はエアコンなどをうまく使って多湿に対処しなければなりません。
保温の仕方ですが、レフ電球やひよこ電球を使ってケージ内の空気全体を温める方法がよいと思います。エアコンなどで部屋全部を温室にできればベストです。ヒーティングストーンやプレートヒーターなどはあくまでも補助暖房の器械だと考えて、あまりこれらに頼らない方がよいでしょう。
特にヒーティングストーンは熱くなりすぎるタイプのものが多く、寒がりのトゲオアガマは空気の温度が低いといつまでも石の上から離れず、結果として腹部の低温火傷を起こすものがあります。十分注意して下さい。
{食餌について}
食性は、かなり草食傾向の強い雑食性です。文献には昆虫などを食べさせないと痩せてすぐ死んでしまうといったようなことが書いてありますが、必ずしもそうではないような気がします。ちなみに、私はほとんど彼らに動物性蛋白質を与えておりません。ミルワームやコオロギを好む個体もおりますが(特にハードウィッキー)、それでも週に1回くらい与えれば十分であると考えています。
昆虫やワーム類を与える場合、これらは著しくCa/Pのバランスを欠いているので(リンの過剰)、必ず炭酸カルシュウムを振り掛けてから与える方がよいと思います。Ca/Pのアンバランスが原因で起こる「代謝性枯骨疾患」は、草食爬虫類(特にトカゲ)の内科疾患として最もよく見られるものです。
わが家の献立は、小松菜、チンゲン菜、キャベツ、インゲン、ニンジンなどの野菜を中心に、九官鳥フードによく似たレプタイルフード(私がよく行く「ラブバード」というショップのオリジナルフードです)などを与えています。また、タンポポ、はこべ、クローバーなどの野草も適当に摘んでは与えています。
乾燥地域に生息するためか、餌も新鮮なみずみずしいものより半分干からびたような物を好んで食べます。ハムスターやウサギの床材に使用する乾し草などを、喜んで食べるものもいます。その他、黄色い花(食用菊など)、ペチュニア、サボテンなども食べるようです。ただしわが家にいる3種類とも、あまり花のたぐいは好まないようです。
毒草でなければ手当たり次第に与えてみて、好物を見つけてあげると良いでしょう。また、うちでは野菜類はすべて、与える前に炭酸カルシュウムを振り掛けています。
{水分補給について}
水入れから水を飲むようなことはまずありませんし、飼育環境の乾燥を保つ意味からも、水入れの設置はしない方がよいと思います。生乾きの食餌からの水分で十分生活できるようです。皮膚からの水分吸収ができるといったことが書かれた文献もありますが、詳細は不明です。(モロクトカゲと同様の水分吸収機構があるという説に対して、私は否定的な意見を持っています)
水を体にスプレーしてかけてやることも、脱皮時以外は必要ないように私は考えます。
{床材とシェルターについて}
床材についてはいろいろ試してみましたが、まだ、これが一番といったものを見つけていません。私がこれまで使用してみたものと、その感想を以下に述べます。
木の砂(おがくずを固めた猫用トイレ砂) | 乾燥力が強く、消臭作用も強力です。欠点は、細かく崩れたおがくずが呼吸器や目に悪影響を及ぼす恐れがあることと、ケージ周辺が大変汚れます。 |
アルファルファペレット(ウサギの餌) | 間違って食べても安全で、乾燥力、消臭力もあります。見た目もグリーンで自然な感じです。湿ってしまったものをそのままにしておくと、カビや細菌の温床になります。 |
ゼオライトの砂 | 乾燥力、消臭力は強いです。細かい粉が飛び散ることと、大量に飲み込んだ場合腸閉塞を起こす恐れがあります。 |
新聞紙 | 手軽で簡単に交換できるので衛生的です。乾燥力や消臭力はあまり期待できません。トゲオアガマの場合ホットスポットがかなり熱くなるので、めくれあがったりした場合、火災の恐れがあります。長期的に使用した場合のインクの影響も心配です |
赤玉土 | 飲み込んでも安全、色彩も自然な感じで、厚くひいた場合、穴を掘って落ち着くようです。皮膚に泥が付着して鮮やかな色彩が消えてしまうのと、これも細かい泥のほこりが出るので、ケージ周囲が汚れます。 |
人工芝 | 埃もたたず、見た目もきれいです。ただし飲み込んでしまった場合の腸閉塞の心配があり、乾燥力も弱いです。汚れたら洗って繰り返し使用できますが、だんだんと匂いが染みついて臭くなります。 |
現在私が使用している床材は、梱包用の段ボール紙です。ホームセンターで、90cm幅で、長さが10mのものが、1500円くらいで売られています。これをケージの床の面積よりもやや大きめに切断し、四隅にはめ込むようにしてケージ全面に敷きます。こうすると新聞紙のようにめくり上がりもせず、取り替えるのも楽です。表面に凹凸があり、滑らないので動物も歩き易そうです。またこの凹凸があるため、尿が直接体に付着しにくくなり、衛生的だと思います。
色彩も明るいブラウンで、思ったより違和感がありません。この段ボール紙の上に、いくつかの岩をおき、乾し草を適当に散らすと、割合自然な感じに仕上がります。
もちろん乾燥力や消臭力は期待できませんが、汚れたらその都度取り替えてもランニングコストは低く、かえって清潔を保てると思います。もちろん、細かい粉が飛び散ったりすることもなく、ケージ周りを汚しません。またトゲオアガマの場合、リクガメほど排泄物も多くないので、頻繁な交換をしなくて済みます。
今のところこの段ボール床材は、大きな欠点もなく、良い床材のような気がします。ただし、まだ使用してから日が浅いので、何か問題がでてくるかもしれません(例えば段ボールに使用されている接着剤の影響など)。何か新たに分かったことがあれば、またここで発表いたします。
シェルターは彼らの精神衛生上からも、また健康を保つためにも必ず設置してあげて下さい。野生化では穴を掘ってその中で生息していることが多いので、身を隠すものがないと落ち着かず、ガラス水槽などでは後肢で立ち上がって壁面を前肢で引っ掻き、最悪の場合腰を痛めることがあります。
シェルターとして、私は素焼きのディスカス産卵塔を使用しています。先細り感が彼らを落ち着かせるようです。その他。石や流木を組み合わせたものや、植木鉢なども利用できます。要は、かれらが潜り込めるスペースを提供できれば良いと思います。
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