想い出     04.11.1

                                 

                          ナナ、2004年11月1日早朝永眠す。

  平成4年の1月、近くの道路をうろついていた迷い犬が、通りかかったうちの奥さんにすがりつき、そのまま家についてきた。最初、飼うのに反対だった私も一晩泊めてやると、情が移り、早速犬小屋を買ってきて飼い始めた。体はやせ細り、首輪もなかった。ただ、人なつっこく、少しはしつけがしてあったので飼い犬であることはわかった。捨て犬か迷い犬だろう。柴犬の雑種。雌犬でもあり、以前奥さんの家で飼っていたロクという犬よりは頭が良さそうだが忠犬ハチ公よりは頭が悪そうなのでナナと名付けた。医者に診て貰ったら、推定年齢1.7歳くらいではないかと言う。それから12年、ナナとの生活が始まった。目が大きくて、食事をほしがるときは目がうるうるとする。その目に耐えられなくてつい食べ物をあげてしまう。そんな調子でかなり甘やかした。最初は庭の犬小屋で飼っていたが、雷に驚き庭から脱走する出来事があってからは、家の中で飼い始めた。犬を飼い始めてから旅行に行けなくなった。それで犬を連れてどこかに行きたいということで、ナナを連れて行くために長野に小さな山小屋を作った。人は、その山小屋を大きな犬小屋と呼んだ。私の人生の中で、ナナとの12年間は、なかなかのものだったように思う。私は、感情をあまり外側に出さない人間だが、ナナには違った。子供が居ないわれわれ夫婦にも、ナナの貢献度はかなり高い。ナナとの想い出はいくらでもあるが、とても書き尽くせるものではない。今、ナナは、私の横で安らかに眠っている。リンパ腺のガンと告げられてから、10ヶ月。よくここまでもった。食事を受け付けなくなり、寝たきりになってから一週間。ナナの最後の命の燃焼に、私達夫婦は付き合った。ついに今日の未明に息絶えた。終わったという感じだ。最後の一週間はナナも苦しそうだった。本当にたたかっていた。医者もなんて生命力が強い犬だと驚いていた。が、今日、静かに息するのを止めた。推定年齢14歳。ナナご苦労さん。