かしこまったイ族の老夫婦

 それにしても、イ族の婦人のあの帽子は、いつみても不思議だ。彼女たちは、農作業でもこの帽子をかぶる。道路をこの帽子の集団が歩いていると、イ族の村に来たことを実感する。シラピン村で、調査で世話になっている老夫婦に写真を撮るというと、おばあさんは、さっそく隣の部屋へ行って、帽子をとってきてかしこまった。このエイのような平べったい帽子を何故かぶるのかよくわからない。日よけの傘なのか、雨よけなのか、宗教的な意味があるのか。いずれにしろ、少数民族の女性達はかならずといっていいほど独特のかぶりものをしている。頭とは何かで覆う物なのだ。たぶん、そこには、自分の霊魂を簡単には奪われない宗教的な意味があるに違いないと思っている。
 このイ族の家の土間は暗い。夏でも、気温は低いから、こうやって火を焚く。従って、部屋の中は煙でいぶされ、視界も悪い。写真もぼんやりとしてしまった。彼らが座っているござは、彼らのソファーである。客が来ると、もう少し上等なござを出してそこへ座れとすすめる。この写真は、その上等なごさから撮ったものである。2000.8.24 シラピン村にて