大理から車で一時間ほどの街、右所。ここで市が開かれていた。狭い国道は、市に荷を運び市で買った品物を運び出すトラジ(耕耘機型の小さなトラック)に占領されていた。こうなると、道路は渋滞し、ちょっとやそっとでは動かない。この市を通過するのに、われわれの車は3時間かかった。あまりの渋滞に、永遠に動かないのではないかと何度思ったことか。しかし、もつれた糸が自然にほどけるようにいつのまにか動くから不思議なものだ。3時間の渋滞は、中国に来て最長の渋滞だった。
 それでも、市は何となく楽しい。渋滞にあえば、降りて市を見学する。市とは、移動のるつぼだ。様々な荷を人は運ぶ。それを交換してまた運ぶ。荷を運ぶ人は、市の人そのものだ。この市では、中元節に近いこともあって、先祖を売っていた。正確に言えば、先祖を象徴する紙の人形と、紙銭。いずれも最後に燃やすものである。立派な男女の先祖を私は買った。燃やさないといけないと言われたが、日本に持って帰ってきた。研究者にとって、先祖も重要な資料なのだ。どうして燃やすことができようか。
2000.8.11 右所の街で。