壁に囲まれて

白族の村は壁と壁の間の通路が際だつ。これは漢族の家にも言えることだが、家は、決して外部に対して開放的ではない。漢族は街自体を城壁で囲った。その思想は家の建て方にも反映しているのだろう。白族の家も、また、そうなのかも知れない。ただ、そこにもう少し文化的な解釈を付け加えるなら、家が一つの完結した宇宙という考え方がある、ということも言えるだろう。家の中は、一つの自立した宇宙だとすると、その家と家の間の通路とは、外部から来たよそ者がただうろつく場所でもある。だから、家々の門には魔よけが欠かせない。福を将来する文字も貼ってある。通路は、神や悪霊が跋扈するところでもあるのだ。われわれは、考えてみれば、その悪霊の調査に来ている。悪霊と出会うために来たもう一人の悪霊なのである。だから、この通路をうろつくのにふさわしい、という気分がしてくるのである。2000.8.12 白族の村にて