自然の人間社会への復讐

イギリスのジャーナリスト、デボラ・キャドバリーの書いた「メス化する自然」と
言う本を読んで少なからず衝撃を受けた。

書かれている内容は最近マスコミでも再三取り上げられている「環境ホルモン汚染」
に関わるものであるが、彼女の世界中の学者を網羅した取材に基づくドキュメンタリーで、ここでその膨大な内容を再掲するのはこの評論の主旨ではない。この本を

通して自分なりの感想を述べたい。

人類はここ数十年の間に、人類の発展を旗印に数々の品物を次々と新しく作り出してきた。作り出していく課程で、地域住民には大きな犠牲を強いる結果となってきたことも事実である。代表的なものは大気汚染であり、重金属による救いがたい疾病である。これには化学物質や医薬品も含まれるかもしれない。原子力による救いがたい放射線による汚染も深刻であった。

しかしながら、多大の犠牲の上にではあってもこれらの問題はそれなりの知恵と正義でもって解決してきたし、今も解決への努力が続いている。

しかしながら、この環境ホルモン汚染に伴う『性の錯乱』は単に人類だけではなく、地球上のあらゆる生物に対する錯乱であり、根底からその存在を揺るがすものである。つまりあらゆる生物が絶えず繰り返している生存への課程で、我々が知らない間に或いは知らないところで、その道筋を誤らせ、急速に破滅へと突き進んでいるのである。

しかも大事なことは、これらの錯乱が、人間がこの世に新しく開発した物質、又はその派生品が原因で起こっていると言うことである。DDTとかPCBとか、或いは最近特にゴミ処理に関連して問題になっているダイオキシン等々枚挙に暇がない。

何れも自然界に生きる我々生物はこの様に急に出てきた新しい物質を十分に認識できなくて、類似した味方だと思って取り込んでしまうという悲劇が拡大し始めているのである。つまり自然は人工的に自然を作ろうとしたこの人間の欺瞞的な行為に対して、敢然とその挑戦状を突きつけてきているのではないだろうか。

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