ピアノレッスンの日々

 

01/12/16
ツェルニー「毎日の練習曲」8〜9番あたり、インヴェンション6番、モーツァルトのソナタK.311を練習中。ツェルニーの9番は必殺連続3度の練習曲。異様に難しいんですけどこれ。あと、気まぐれでショパンのスケルツォ2番などを弾いてみました(←弾け弾けって言う人がいるので)。でもやっぱり難しいわ。ナニが難しいって、調性に慣れてないから難しい。変ロ短調って何ですか?みたいな。ショパンって変ロ短調が好きなのよね。それは知ってるけど、黒鍵が多くて指が滑ります。でも、この調性だと確実に人差し指・中指・薬指が黒鍵に来るので、黒鍵さえ外さなければ案外弾きやすかったりするのだ。あとは跳躍しまくる箇所さえ克服できれば弾けそう。変ロ短調のアルペジオ&スケールの予備練習を半年くらいやれって感じです。
あと、最近良かったのはアリシア・デ・ラローチャというおばあちゃんピアニストのCDです。メンデルスゾーンの無言歌、ショパンの舟歌・子守歌・幻想ポロネーズというマターリ系なのですが、これが素晴らしい。音色がすごく良いです。ブレンデルと同じで、最初の1音から全然違うの。適度の華やかさと厚みを持ちながら、暖かい響きがあるのね。ショパンの舟歌、いろんな人の演奏を聴きましたが、彼女がベストです。場面転換に合わせて響きが自然に変わっていく様子がとても美しい。子守歌、幻想ポロネーズも素晴らしく、自然に演奏に引き込まれてしまいます。こんなショパン、普通の人には弾けません。こういう人こそがピアノの上手い人なのだわ、きっと。今年の来日コンサートには行かなかったんだけど、かなり後悔してます。
01/12/12
エンシェント・コンソート・プラハのコンサート@カザルスホール。ヤン・ヤクブ・リバ(チェコの作曲家)の弦楽四重奏曲とベートーベンの第九、というプログラム。いろいろ思うところがあったので、真面目に書いてみます。
リバの四重奏曲はこじんまりとしているけど、スラヴ的な感覚が入っていていて演奏も良かった。アンサンブルがよくできている感じ。
休憩をはさんで第九。よい演奏なのだが、どうしても腑に落ちないところがあった。ベートーベンがこの曲で狙っていた「爆発的な歓喜の表現」。それを具現化するためには絶対的な音量が必要であり、したがって、現代楽器を用いたフルオーケストラと大合唱団による演奏が最適な選択であると思われる。それをあえて古楽器で、しかもクインテットで演奏するというのは、音量に頼った表現を切り捨てるという意思表示に他ならない。
では、彼らは何を狙って小編成で演奏したのか。目的は、この大曲に秘められた構造をえぐりだすためだけ、と言ってよいと思う。対位法的に書かれたフレーズや、ビオラの内声など、大編成では埋もれがちな音を大切に聴かせる。これにより、聴きなれた第九が驚くほど新鮮な響きを伴って再創造されたのである。オーケストラでは鈍重になりがちな第一楽章の見通しのよさ、第三楽章のメロディがフゲッタ風に変奏される箇所の美しさもこの編成ならではであろう。
特筆すべきは終楽章である。合唱の加わるこの楽章はとにかく長い上に展開が豊富なため、捕らえどころがないまま進行する演奏が少なくない。しかし彼らは人数の少なさを逆手にとって、楽曲の進行に合わせてハーモニーの質を変化させるという、高度なアンサンブルを展開した。それは独唱、合唱においても同様で、独唱者が鋭く声を張りあげたかと思えば柔らかいハーモニーのコーラスがフォローしたり(この程度は誰でも思いつくだろうが)、意識的に子音を強調しながらテンポを上げて高揚感を出したりと、大編成では難しい表現が次々と出てくるのである。第九というと、独唱ソプラノが毒々しい金切り声を張り上げ続けるイメージがあるが、古楽器の音色・奏法に合わせて柔らかい声質を中心にビブラートを抑えた唱法を多用するなど、細心の注意を払っている様子が伺い知れた。
このような濃やかな表現の積み重ねが、ともすれば冗長になりがちな終楽章に活動的な生命力を与えていたし、この曲ではあまり感じされない瑞々しさすら覚える要因にもなっていたと思う。ひょっとしたらベートーベンもこうした「瑞々しい生命力の表現」を意図していたのではないだろうか。彼らの演奏は音量こそ不足していたけれども、確かな説得力を持って聴衆の心を打ったことは確かである。
01/12/11
ピアノ教室の日。モーツァルトのロンドは先生からOKが出てしまいましたが、自分的にはもっと極めたい部分があるので練習したいと思います。次はモーツァルトのソナタK.311(トルコ行進曲のやつ)にとりかかる予定。第1楽章の変奏曲が意外に難しいけど、一通り初見で弾けるレベルなので慣れれば大丈夫でしょう。
01/12/09
来週、ベートーベンの第九を聴きに行くので予習としてCDを聴いてます。っつーか、ひたすら長いんですけどこの曲。短い動機をシンフォニックに展開させる、いかにもベートーベンな構成です。第1楽章から第4楽章の伏線が出てくるところとか、逆に第4楽章の入りで第1楽章の回想フレーズが入るところとかも、いかにもだと思います。でも第4楽章でコーラス隊が二重フーガを始めるあたりからもうどうでもよくなったりして。総動員してフーガやるなよ、みたいな(笑)。
01/12/05
カザルスホールにて、白神典子/ブレーメン弦楽ゾリステンによるベートーベン・ピアノ協奏曲1番、ショパン・ピアノ協奏曲1番(いずれも室内楽版)の演奏会。今年聴いた日本人の演奏では出色。白神さんはピアニッシモの巧いコントロールの取れたアルゲリッチ、という感じのピアニスト(ほめすぎ?)。弦楽とも息もよくあっており、協奏曲の第三楽章での活動的な表現や、ルバートしてからインテンポに戻るときの推進力などは素晴らしかったです。アンコールは珍しいブルックナーのピアノ曲と、ベートーベン・ピアノ協奏曲2番第三楽章(!)。
ベートーベンとショパンを一緒の演奏会で弾くのは難しいと言われていますが、全然問題なかったですね。白神さんは初めて聴いたのですが、ファンになってしまいました。
01/11/30
東京国際フォーラムでセミナーがあったので、帰りに銀座のヤマハに寄ってモーツァルトのソナタ集と、ベートーベン「悲愴」「月光」ソナタの楽譜を買いました。最近無性にベートーベンが弾きたくなっていて(あんなに嫌いだったのに)、ポピュラーなところでこの2曲かなと。月光ソナタも、第一楽章は中学生の頃から弾いてるし、問題は第三楽章だけです。今日やったら初見でけっこう弾けちゃったんですけど(わーい)、やっぱりアルペジオを弾く基礎練習が必要だと思いました。嬰ハ短調(C#-minor)のアルペジオは、黒鍵が多くて指がすべりやすいんので。すべりやすい→正確に打鍵しようとして手首に力が入る→腕が疲れる→さらにすべる、という悪循環ですね。これはもう基礎練習を積むしかないざます。ちなみにツェルニー先生の練習曲集はベートーベンのソナタの予備練習になるような曲のオンパレードです(笑)。
01/11/26
京都より戻り再び練習の日々です。モーツァルトが楽しいのでソナタ K.310などを弾いてみたのですが、わりと弾けそうなので次はこれかK.311(トルコ行進曲付き)かなと。K.311の第一楽章の変奏曲が弾きたくてたまらないんです。トルコ行進曲の最後の分散オクターブ以外は技術的にはほとんど問題がないしね。あの部分、かのルドルフ・ゼルキンも音を外してますね。ライヴCDを聴いてわかったんだけど、あのゼルキンでもミスが出るんだからしょうがないよね、みたいな(笑)。
01/11/25
京都嵐山の青山音楽記念館で青柳晋さんのピアノリサイタル。リスト:オーベルマンの谷、ショパン:タランテラ+ソナタ2番(葬送行進曲のやつ)、ファリャ:アンダルシア幻想曲、ラフマニノフ:前奏曲という、多彩なプログラム。
まず、オーベルマンは眠かった。端的に言って、ねちねち唄いすぎ。1曲目だし、もっとサラッと弾けよ、みたいな。ショパンのタランテラは指がよく動き、快活な演奏。ソナタ2番も第1楽章の構成感の表現は良かったのですが、そのまま同じ調子ですべての楽章を弾いてしまったのが謎。2楽章のスケルツォをあんなにガッツンガッツン弾く必要はないのでは。重いばかりで、スケルツォらしいスピード感が皆無っす。逆に第3楽章(葬送行進曲)はテンポ速すぎ。あの曲を遅く弾くのは難しいんだろうけどさ、緩急の対比ってのもあるでしょう。後半のファリャとラフマニノフも似たような感じ。とにかくしっかり、がっちりと演奏するので暑苦しい。アンコールはリストの溜息とラ・カンパネラ。この2曲は弾き慣れているらしく、スピード感も十分で良い演奏でした。
青柳さんは小柄な人なので(ワシより小さい感じ)、大きな音を出そうとして全体に無理をしているように思いました。すべての音がmp〜ffくらい演奏されてしまう。あの身体ではなかなか大きな音は出せないので、もっとピアニッシモに気を遣うべきでしょう。あと、しっかり鳴らそうとするあまり、タッチが画一的で離鍵が遅くなり、全体にベタベタした演奏になっていました。ショパンもラフマニノフも、がっちり弾く部分と軽くレジェーロに弾く対比がほとんど感じられなかったのです。アンコールの溜息やカンパネラはレジェーロな軽さもよく出ていたので、惜しいです。
ミスタッチが非常に少ないし(ほとんど完璧)、音色も適度に華やかなのですが、全体的な印象は生真面目ですごくつまらない、という、ある意味非常に日本人的なピアニズムですね。指を動かすだけでは演奏にならないんですよ、とワシがいつも注意されてることがそのまま当てはまってしまいます。もう32歳ということなので、この先つらいっすねえ、としか言いようがないです。てゆうかこの人、桐朋で講師やってるみたいですが、この程度の演奏しかできないのにピアノの先生やってていいんでしょうか?←ちょっと厳しい今日のわたくし。
01/11/22
練習スタジオで練習。最近グランドピアノでの練習の必要性を感じつつあるのです。速いトリルは鍵盤が上がりきらないうちに次の打鍵動作に入るのですが、こういう練習はグランドでないとできないので。モーツァルトのロンドもどうなることかと思ったけど、今日はようやく形になってきました。
帰りにタワーレコードに寄って内田光子のモーツァルト・ピアノソナタ全集のCDを購入。ちょこっと聴いたけどかなり良いです。
01/11/10
ツェルニー毎日の練習曲は6〜9番あたり、インヴェンションは5〜6番。それと新しくモーツァルトのロンドK. 485の練習を始めました。このロンドはソナチネアルバムに収録されている曲です。最晩年のホロヴィッツがよくリサイタルで弾いていて、ビデオで見てもすごく良い感じなのですが、自分ではもうちょっと違う感じに弾いてみたいと思ったので取り組み始めました。
01/11/04
サンクトペテルブルク・フィルのコンサート@東京オペラシティ。ラフマニノフのヴォカリーズ、ピアノ協奏曲2番、交響曲2番というコテコテなプログラム。指揮はテミルカーノフ。協奏曲のソリストは、6年前に日本の音楽コンクールに12歳で参加してショパンの協奏曲を弾いて優勝したラン・ラン君(中国人)。当時から気になる存在だったのですが、その後留学などを経てアメリカでデビュー。このたびめでたく日本でもお披露目ということになりました。
ラン・ランは前評判が結構良かったし、CDでも素晴らしい演奏をしてるのでそれなりに期待して行ったのですが、実際聴いてみたらもう圧倒的でした。オーケストラとの息もバッチリ合ってるし、音色の幅も広く、神経の行き届いた演奏でした。そしてなにより、表現がめちゃくちゃ情熱的。第一楽章の暗い情念、第二楽章のロマンティシズム、第三楽章の超絶技巧と、各楽章の特徴を掴んでいるのですが、一貫して情熱的に弾いていて、聴く側へのアピール度がひじょーに高いです。テミルカーノフは過剰にロマンティックにならないようにしていたようですが(何度もラン・ランの方を見て、合わせにくい箇所もしっかり合わせていた)、最後は猛然とテンポアップして怒濤のような「ダンダダダン!!」で終わり。あまりにも凄い演奏で、大拍手。当然、ラン・ランのアンコールとなるわけですが、ここで弾いたスクリャービンのエチュードOp.8-12がまた超絶技巧&パッションの嵐で、終わった後も拍手鳴りやまず。オケのメンバーが「大したもんだよ」という顔をしているのですから推して知るべし。
後半の交響曲2番も熱演。というか、協奏曲であそこまでソリストに弾かれてしまっては、燃えるしかないでしょう。ものすごい迫力、大編成大音量にも乱れず、素晴らしい演奏でした。ムラヴィンスキー時代に比べるとリラックスした雰囲気で、柔軟性もあったと思います。アンコールは「くるみ割り」のパ・ド・ドゥ。本編にはないハープが置いてあったので、どこで使うかと思ったらこのためだったんですねぇ。
とりあえず今日の感想は、ラン・ランすごすぎ。ショパン・コンクールで優勝したリ・ユンディはまだ未熟という感じですが、ラン・ランの演奏は若者らしい感性と情熱が溢れつつも音楽としてはしっかり完成されている点が違います。この二人はタイプが違うので比較する意義はあまりないのですが。ただ、キーシン以後の若手ピアニストが不作だなあと思っていた中では、ラン・ランが一番良いなと思います。上手にまとまった演奏をする人や技巧的に優れた人は大勢いますが、ここまで聴く者の心を激しく揺さぶることができる演奏家は少ないです。ワシも同行した友人も、思わず涙を流すほど感動させられました。アンコールのOp.8-12は、すでにホロヴィッツ以上ではないかという声がありますが、さもありなん。
01/11/03
シプリアン・カツァリスのリサイタル@神奈川県民音楽堂。みなとみらいとはうって変わって、超デッドなホール。ここでオール・ショパン・プログラムをどう弾くのか、けっこうキビシイのではないかなーとか思っていたのですが、ほとんど問題なかったです。
カツァリスは昨日のブレンデルとはタイプが違い、ピアニッシモ命という感じで弱音が絶妙。鍵盤を優しく撫でるように弾くタッチから、たいへん繊細な演奏が生まれていました。雨が降っているのでプログラムを変更して「雨だれの前奏曲」を弾くあたりの演出も憎い。あと、この人は何気ないフレーズの中から特定の音を強調して対旋律を作り出す名手で、聞き慣れた「幻想即興曲」のテーマから思いもよらないメロディラインが浮かび上がってくるのには驚きました。またノクターン2番なども、通常のフレーズだけでなくバリアント(ショパンが弟子の楽譜に「こんな風に弾いてもステキだよ」と書き残した即興的フレーズ)を混ぜて華麗さを演出。これも憎い。
前半が小曲で、上記のような小技を効かせた演奏だったのですが、後半の葬送行進曲とソナタ3番はかなりオーソドックス。ソナタ3番はかなり弾きにくいと思うんですが、早めのテンポでぐいぐい弾いちゃいました。格好良かったです。
01/11/02
アルフレッド・ブレンデルのリサイタル@横浜みなとみらい。大ホールが半分程度しか埋まっていないという悲しい状況。空席がいっぱいだったので、適当に座席を移動して、音響の良い位置で聴きました(ここは音響が悪いホールなので、座席を選ばないと辛い)。
ブレンデルはCDをいっぱい持っているんですが、地味・堅実・構築感主体というイメージでした。実際に聴いてみると、もう、とにかく音色が美しいのです。適度な華やかさを持ちつつも太く暖かみと深みのある音で、ピアノってのはこういう音色で弾くべきだよな、と痛感しました。プログラムは前半がハイドンのソナタ+モーツァルトの幻想曲とソナタ、後半がベートーヴェンのディアベリ変奏曲だったのですが、もう前半から素晴らしい演奏でモーツァルトのソナタが終わった段階でブラボーは飛ぶわ、カーテンコールが起こるわの盛り上がり。ディアベリ変奏曲も演奏時間50分を超える大曲なのですが、33回の変奏をいろいろ手を変え品を変え全く飽きさせずに聴かせてくれました。聴衆の質も素晴らしく(ピアニッシモのときは物音ひとつしない)、演奏内容も良いリサイタルでした。
自分としては、ひたすら美しい音色と、妙に楽しそうに弾いてるブレンデルの姿が印象的でした。70歳記念のツアーということですが、ウィーン・フィル&ラトルとのベートーベンの協奏曲4番を聴けなかったのが残念。(正直、あまり期待していなかったので。まさかこんなに素晴らしいピアニストとは思わなかったです)次に来日したら、ぜひ聴きたい演奏家です。
 
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