メグレ捜査地図
Place des Victoires
メグレがヴィクトワール広場の例のレストランに入って行ったのは、一時だった。彼の心はちょっと不愉快な気持ちがわだかまっていた。というのは、一介の役人にすぎないものが、マスクランのような男と力競べをすることは、用心深いとは言えなかったからだ。
(河出メグレ警視シリーズ『メグレと政府高官』より)
1区・パレ・ロワイヤル界隈
パレ・ロワイヤルから目と鼻の先にヴィクトワール広場はあるが、ルイ十四世の騎馬像がぽつねんと佇むいささかうら寂しい場所であった。メグレ警視が政界の黒幕的政治家と渡り合ったとされるレストラン《フィレ・ド・ソール》と覚しき店も見当たらない。太陽王の名をとった小さなビストロが一軒あるだけである。このルイ・キャトールズのブルゴーニュ料理を昔、辻静雄先生が新潮文庫で書き下ろした『新・パリの居酒屋(びすとろ)』で褒めていたことを思い出したが、午後の休憩中だったので食事をとることは出来なかった。
ヴィクトワール広場