サンジェルマン大通りの古本屋
1990

 パリの古本屋へ入って驚くことは、フリの客は相手にしないことである。冷やかしやちょっと見るだけの客は客でないらしい。目的もなくドアを開けようものなら、何をお探しですかと声をかけられ、それもフランス語であるから、返答に窮してしまう。泡を食って、メグレのペーパーバックスは無いかと尋ねて馬鹿にされてしまった。