◆ 人はなぜ歌うか / 永 六輔 ◆
Book Image 書名:人はなぜ歌うか 〜六輔流・日本音楽史
著者:永 六輔(えい ろくすけ)
編集:日本放送協会・日本放送出版協会
発行:日本放送出版協会
定価:560 円(税別)
2003年2月1日
ISBN4-14-189079-0 C9473 \560E
「遺跡を掘っても音楽は出てこない」をキーワードに、全国で実地に
見聞きした音楽体験をもとに、日本古来の音楽を六輔流に掘り下げます。
日本人が昔から親しんできた豊かな音楽表現がきっと見つかります。 (表紙より)

Contents
  1. 人はなぜ歌うか〜序説
  2. 古墳から歌は…
  3. 三味線渡来
  4. ドレミがやってきた
  5. 官軍マーチだ
  6. 音楽お取調べ
  7. 焼跡のジャズ
  8. メガフォンから着メロまで
  9. 人はなぜ歌うか〜コンサート

NHK 教育テレビ「人間講座」で、2003年2〜3月期に放映された番組の テキストとして出版されたものです。
講師の永六輔は「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」 「遠くへ行きたい」等ヒット曲の作詞者であり「夢であいましょう」などの TV番組でも活躍していました。

歌や音楽というものは、どうしてこんなにも強く心を動かすのだろうかと つねづね不思議に思っています。音色ひとつ、メロディ1フレーズで 人を惹きつけずにおかないものがある。人間の祖先が言葉を話すずっと前から、 たぶん吠え声のような形で「歌」はあっただろう。その遺伝子が現在も働いて 音楽を感じさせているのだ。ではそのエッセンスは何か? それについての答えを 教えてくれそうな感じがして、このテキストと番組に興味をひかれた。

歌は発声したとたんに消えて行ってしまうので、大昔の歌は残っていない。 楽譜がない時代のものはなおさら手がかりがない。永さんが調べたところでは、 日本では約1400年前くらいに音楽が演奏されたという最初の記録がある。 それは中国から渡来したものらしい。
お経、民謡、三味線、そんな日本独自の音楽があったところに、 1549年フランシスコ・ザビエルが西洋音楽(ドレミファソラシド音階)を持って 来日する。苦労しながらも西洋音楽は日本に広がって行く。平均律音階と五線紙は 普及し便利になったが、それ以外の(かつて日本にあった)音程は重要視されなく なったという弊害ももたらした。

永さんが親しくした歌手についても語られます。淡谷のり子さん、三波春夫さん はもう他界した偉大な歌手ですが、戦争という苦しい時代を通過して歌い続け、 晩年にこの人たちが本当に歌いたかったのは、普通の人に寄り添った歌だったと いうことです。

TVが普及して、ヒット曲が「生産される」ような世の中になりました。 携帯電話からも「着メロ」が流れ溢れています。 でも結局は、歌に込められた思いが大事なのだ、と訴えます。 誰かの歌を肉声で聴く、あるいは自分で歌う、調子っぱずれでも、 そこに大事なことがある。
この講座の中で僕が最初から言ってきているのは、人間が気持ち良く歌ったら それでいいではないですか、ということです。なぜわれわれが楽器に 合わせなければいけないんでしょうか。合わせなければいけないのは 楽器のほうじゃないんでしょうか。
第9回の章に、偉大な音楽家たちの言葉が羅列されているのですが、 その中で僕が特にいいなと思うのは、以下の言葉です。
レナード・バーンスタイン(指揮者)
歌について何かを言えるとしたら、それは歌を歌うことしかない。

2003/04/29 T.Minewaki
2003/04/30 modified T.Minewaki

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