◆ 愛はなぜ終わるのか / ヘレン・E・フィッシャー
Anatomy Of Love
書 名:愛はなぜ終わるのか / Anatomy of Love
著 者:ヘレン・E・フィッシャー / Helen E. Fisher
訳 者:吉田 利子
出版社:草思社 1993
ISBN 4-7942-0508-2
人間は4年で離婚する!?
愛の解剖学
愛は4年で終るのが自然であり、不倫も、離婚・再婚を
くりかえすことも、生物学的には自然だと説く衝撃の書。
男と女のゆくえを占う全米ベストセラー!
あなたの恋愛観が変わる!
(帯より)

ロマンチックなタイトルだけど、恋愛小説ではなくて、 これはダーウィニズム進化論の本です。

なぜ恋するのでしょう? なぜ結婚するのでしょう?
なぜ恋は醒めるのでしょう?
なぜ浮気し、不倫し、離婚するのでしょう?

進化の観点から、恋愛と結婚を解釈するとどうなるか?
こりゃ面白い。

彼女の答えは、こうです。

「人間の遺伝子は、恋愛し、結婚し、恋は醒め、浮気し、離婚し、 そしてまた恋するようにできている。」

じゃあなぜ、遺伝子はそうできているのか?
そういう遺伝子を持つ方が生き残る確率が高かったからです。

雄はより多くの子供を残すために、 雌は子供の多様性を得るために、浮気をします。 そして子供を確実に育てるために、みかけは1妻1夫を維持します。 子供が(4年で)手を離れると、別のパートナーを求めます。

それは、進化的に見て妥当な戦略です。
少なくとも、数万年前には有効な戦略でした。そして、私達は その遺伝子を継いでいます。

「逐次1妻1夫制」を「生涯1妻1夫制」に変えたのは、 定住農耕社会でした。男女等価な分業であった、生活の糧を得る 作業が、鋤を使いだして以降は男性の手に渡りました。つまり、 女性は男性に頼らざるを得なくなり、土地の共有は離婚を 難しいものにした。共同体に階級が生まれ、戦争はさらに男性の 地位を高めた。

「妻は夫に従うべし」「死がふたりを分かつまで」は、 定住農耕社会とキリスト教がつくりあげた鎖でした。 しかし、人間の本来の性質は(残念ながら?)そうはできていません。

より稼ぐ方が偉い顔をする、という状況が長く続きましたが、 近頃は、非肉体産業が仕事の多くを占めるようになったので、 女性も男性と同等やそれ以上に稼ぐことができるようになりました。 腕力は必要なく、土地にも縛られません。
もう男性に頼らなくても良いのです。これで「生涯1妻1夫制」 は形骸化します。

彼女は予言しています。21世紀には、女性は今より仕事上有利になる。 結婚年齢は上昇し、出生率は低下し、離婚と再婚は増えるだろう。 離婚産業、再婚産業がビジネスとして栄えるだろう。
でもそれは、新しい事ではなくて、狩猟・採集社会時代の、人間の もともとそうであった形態に近付いているのだ、と。

彼女の仮説は、証拠といえるほどはっきりした裏付けはないように 見えますが、筋立てにはなるほどと思わせるものがあります。
ほんとうに、僕の恋愛観・結婚観は少し変わってしまったように思えす。

1995/08/22 T.Minewaki
2002/11/04 last modified T.Minewaki

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