人間行動進化学研究会 第5回 研究発表会
【共催】21世紀COEプログラム“心とことば−進化認知科学的展開”

日時:2003年12月12日(金)〜14日(日)
場所:東京大学駒場キャンパス・学際交流棟・3F学際交流ホール

プログラム:
人間の進化的理解研究会 HBES-J (Link)

以下、MINEW のコメント:

人間の進化的理解研究会(HBES-J)は、この話題に興味を持つ研究者などによる ゆるいつながりの研究会で、最近は年1回の研究発表会が主な活動となっている。 (以前は毎月の例会があり活発な議論の機会があったのだが、 フェードアウト気味で残念。)去年は函館での研究発表会で行けなかったが、 今年は東大駒場での開催ということで聴きに行った。 講演の多くは公開され、無料で聴講できるというのもいいところ。

今回は 21 世紀 COE「心とことば─進化認知科学的展開」と共催となっている。 これは HBES-J も主催する長谷川寿一先生が中心となって立ち上げた、 多くの学術分野にまたがる国家的研究プロジェクト。予算も巨大。 名前にあるように、人間を進化的に理解していくという方向性は HBES-J と同じもの。長谷川寿一先生はこのプロジェクトのマネージメントの方で 最近は忙しくなってしまったようである。

発表のうち印象に残ったものだけコメントする。
Ruth Mace の特別講演は、アフリカにおいて複数の文化を観察することで 見えてきた、父系社会と母系社会の文化的男女差傾向とその適応的理由について。 その土地の気候植生と家畜の有無の関連、交換材としての家畜の有無と 母系/父系社会の関連、が観察された。
長谷川真理子先生の発表は、戦前の日本における、女性の死亡率の過剰についての 文化的差別について。10-20 歳においての女性死亡率が大きいのは、日本独自の 文化的背景があったとする。
「言語進化を考える」は、人間独自のものである言語能力について、サルや鳥の 研究を参考にして迫ろうという発表。人間の言語の複雑さは飛び抜けているので、 他の生物のコミュニケーションを参考にしても、なかなか難しい。
「進化心理学と個人差」は、進化研究において今まであまり話題にされて こなかった個人差について考えてみましょうという提案。適応が進むと遺伝的には 一様になり個人差は無くなっていくはず。個人差は遺伝的なものなのか、 あるいは環境的なものなのか? 性選択が個人差を広げるのか? 面白そうな課題。


▼ Monty Hall Problem(モンティのジレンマ)

口頭発表の1つで「Monty Hall Problem」 (あるいは「モンティのジレンマ」「3ドア問題」)というものについて 初めて知った。何時間も悩んでしまうほどの不思議な問題なので紹介する。

伏せられた3枚のカードがあります。 1枚だけ裏に「当たり」のマークが付いています。 それを当てることができたらあなたは賞品を得ることができます。 まず、1枚選んでください。
あなた:「Aを選びます。」
では、ここでひとつヒントをあげます。私は当たりを知っていますが、 あなたが選ばなかったBとCのうち、Cは「ハズレ」です。 (カードを開いて見せる。)
  [A][B][×]
今なら、あなたは選択を「B」に変えることができます。変えますか?

あなたがどれを選んでも、それが当たっててもハズレてても、残り2枚のうち ハズレの1枚が示されます。その時、あなたは最初に選んだカードに固執して 変えないでしょうか、気が変わって選択を変えるでしょうか、 あるいはランダムに変えたり変えなかったりするでしょうか? よーく考えてください。
僕の選択は「変えない」でした。実験によると多くの人も「変えない」を 選ぶそうです。選択肢が2つになった時点で、直感的には当たる確率はどちらも 1/2 のように思え、それなら変えないでいいやと考えたからです。

しかし、実は選択を「変えない」場合よりも「変える」場合の方が 当たる確率は2倍高いのです(変えない場合 1/3、変える場合 2/3)。 単純に数学的に考えた場合にはそうなります。 説明は難しくて、僕が話してもなかなか信じてもらえないので、 誰かを相手に 100 回くらいゲームを繰り返して確かめてみるか、 下記の解説 Web ページを参照してください。

いったいどういう心理的効果、あるいは進化的思考バイアスによって こういう錯覚をしてしまうのでしょうか? 僕は「かけひき」をしている ということ(つまりコミュニケーション)がこの場合の鍵ではないかと 考えているのですが、なにかよい説明がありましたら教えてください。
モンティのジレンマ解説 Web ページ (Link)

2004/01/03 T.Minewaki
2004/01/10 last modified T.Minewaki

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