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ケシ

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 ケシ

薬草園の花


<阿片の採集>

未成熟の果実の表面に刃物でキズをつけ、でてくる淡紅色の乳液を固める。これを集めて加熱乾燥させたものが『阿片』である。

婦人は小柄なきゃしゃな体に真珠のように光る灰色の繻子の着物を着ていた。かたわらの低い台には、阿片のキセルがあり、小さなランプが燃えていた。老夫人は、痩せてしわだらけの顔の、猿のように小さくて鋭い、落ちくぼんだ黒い目で彼をみた。
「立たせなさい。そういう礼儀は必要無い。その男は女を迎えに来たのか?」
「そうでございます、老夫人さま」
と、門番が答えた。
(略)
老夫人はたいそう威厳のある態度で注意深く彼をみつめ、なにかいおうとしたらしいが、奴隷が差し出した阿片のキセルを手にしたとたんに、彼のことなど忘れてしまったように見えた。一瞬、身をかがめて、むさぼるようにキセルを吸うと、その目の鋭さが消えて、忘却の靄でもかかったようになった。

王竜は彼女の目が再び彼をとらえるまで、その前にたちつくしていた。
「この男はここでなにをしているのかね?」
彼女は突然怒ったようにたずねた。まるでなにもかも忘れてしまったかのようであった。
「わたしは女をいただきにまいりましただ、老夫人さま」
王竜は驚いて言った。

パール・バック「大地」

毒・害

薬・効

<未熟果実
アルカロイドを20数種類以上を含む。代表的なものが、モルヒネ、コデイン、ノスカピン、パパベリン。

症状:中枢神経麻痺、呼吸麻痺。阿片を常用すると阿片中毒となりその服用量が増す。幻覚症状が起こり、手足がふるえ、持続的な作業に障害を来たす。禁断症状がでる。

アヘン戦争:イギリスとの三角貿易から、国内に大量の阿片中毒者を出したかつての中国(清)は、この貿易を中断させようとしたが失敗。これが原因であの有名なアヘン戦争をひきおこし大敗するのである。

江戸時代、津軽藩のつくった『一粒金丹』という強壮剤には阿片が入っていた。(古来、阿片のことを「ツガル」と呼んでいた)

現在では医療用に岡山、和歌山県で栽培されている。

キャプション
・金平糖のとげとげはケシの種を核にして砂糖を徐々にまぶしてできたもの。
・アンパンなどの上に香味をつけるためにふりかける。
・七味トウガラシの材料の一つ。
、、という具合にケシの種にはまったく害はない。「ポピーシード」として市販もされている。

ケシは、モルヒネなどのアヘンアルカロイドを含むため、わが国では「あへん法」で 一般の栽培は禁止されている。「あへん法」で規制されているケシは、「ソムニフェルム種」と、「セティゲルム種」の2種類。

1.ソムニフェルム種  Papaver somniferum L.
高さ100〜150cmになる一年草。花は白色、赤色、紫色など様々で、一重咲き・八重咲きがある。

・ソムニフェルム種(一貫種)
わが国で、あへん採汁用に作り出された品種で、花弁は4枚。5月上旬〜中旬に10cmほどの白い花が咲く。

・ソムニフェルム種(八重咲)
不正栽培で摘発されることの多いケシ。5月中旬〜下旬に咲く。


2.セティゲルム種   Papaver setigerm DC. (アツミゲシ)
高さ50〜100cmになる一年草。花は紫色と赤色。ソムニフェルム種に比べて全体に小さく、4月下旬〜5月中旬に咲く。

みにゃかちゃん撮影
実際に撮影されたもの

ところがこのケシ(アツミゲシ)は、日本のいわゆるその辺のひょんなところで自生しているのをみかけることがある。
あなたのそばにももしかしてこのケシが?

← ↓ 朝日新聞愛知県版記事より

<切り抜き提供:はまのさま>

『ナガミヒナゲシ』との比較

<special thanks :
みにゃか氏が『ナガミヒナゲシ』と『アツミゲシ』の
比較ページをつくってくださいました>