ハモグリバエ』、人は我が輩を“絵描き虫”と呼ぶ。

「我にキャンパスを与えよ。されば芸術の神は我が手に君臨する。」

まず最初に『るう殿』にお礼を申し上げよう。

毎年毎年、我が輩にすばらしいキャンパスをあたえてくれることを! 今年は特に筆の運びが快調である。我が芸術作品の数々、気に入ってもらえただろうか?

我が輩のアトリエは葉の裏である。我が作品の描かれた葉をくるっと裏返して欲しい。さすれば、そこに深遠な芸術世界に身を置く我が輩の黄色い蛆型の姿を発見するであろう!

そして ナスタチウム、コモンマロー は絶好の画材である。丸く広く、腕が存分にふるえる。モナルダ、ポリジもよい。

今年は小品も手掛けることにした。ハンバーグ料理にかかせないマジョラムに描いたものは、いかがだっただろうか? ロケット、マーシュルー ちょっとかわったところで、フィーバーフューにも。

キャンパスには、描きに描きまくる。描くところがなくなるまで描きつづけるのだ!

葉っぱは真っ白になる。当然植物の栄養補給は遮断され、花つきも悪くなるらしいが、そのようなささいなことに頓着してては芸術家はつとまらないのだ! はっはっはっは。

我が才能を産みたもうた、偉大なる母の御姿である→

『るう殿』の住まいはネギの名産地でもある。このネギは母上の好物であり、我が輩の兄弟はこのへんではネギにアトリエを置くことが多い。

母上は華奢でいらっしゃる。2、3mmのいわゆるコバエのお姿である。コバエが元気に飛び回っていたら、そこに母上がいらっしゃることが多いのだ。また美しい黄色のドレスを身にまとっているが、人間の目にはなかなか認識できないであろう。

なお、我が輩はまもなくこのアトリエを後にし、地上へと移動する。蛹となり、羽化し、今度は作品ではなく生命を生み出す立場となるのだ。であるからして、鉢土などを清潔にするというようなことは、次の芸術家のために決してしてはならないのだ!

<ロケットの作品集>

左:筆いれ(産みつけられた卵もしくはその跡) 中:描きはじめ(卵が孵って葉を食べ始める) 右:描き終わり(葉っぱの色がなくなる。蛹になる)

なに? 我が輩をこの絶好のアトリエから追い出したいと?!

芸術家はいつの世でも、迫害という苛酷な運命をせおっているとはいえ、なんというおろかなことを!

農薬? ふっふっふ。ハーブに農薬を使うというのか? だいたい我が輩は薬には強いのだ。木酢液など屁とも思わんね。
我が輩をひねりつぶす? 針でつつく? ふん。我が輩が死んでも、このみごとな作品が消えることはないのだ!

ほほう、我が輩の大事な作品をすべてやぶり捨て、火中に投じると! かの残虐なる皇帝ネロしかり始皇帝しかり! そして? 我々の敵である、寄生蜂を探すと? ふっふっふ。そのようにうまくいくかな?
植物に寒冷紗をかけて母上をさえぎると? 、、、まあがんばってくれたまえ。

おや、『るう殿』の独り言が聞こえる。
「うーーーん。なぜか絶対つかない葉っぱがあるんだよねえ。いちごに、ローズマリーに、ソープワートに、オトギリソウに、バジルに、、。なんかコンパニオンプランツになりそうな気がするなああ。よおおしっ!」

う。ぎくうぅぅぅ。

参考資料:農協パンフレット

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