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ビジョン経営のライフデザイン研究所 since 2010-10-15

ビジョン経営の
(有)ライフデザイン研究所

女性経営者に「時間と心のゆとり」を創っています

女性経営者がリーダーシップを発揮すると、
「会社(組織)が向かうべき方向・目標が明確になり、目標実現のために、社員ひとり1人が自ら考え、行動する会社(組織)を創り上げることができます」

掲載誌

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ビジョン経営を実現する組織づくりと人材戦略

人材教育2002年9月号

「ビジョンとは、わかりやすくて、シンプルなもの」
「あるべき姿を明確にする」
「ビジョン経営に重要なチームの役割」
「変化が常態のいま、能力開発し続ける必要がある」
「ビジョン経営は能力主義を実現し、企業文化を創造する」
ビジョン経営とは、「未来の顧客」に対して「未来の価値」を提供するために、企業が組織としていかに取り組むかというシステムを構築し、実行することである。
そして経営者だけでなく、社員もそのビジョン実現に参画していることが大切だ。
では、ビジョん型の組織と人材づくりのために、どのような考え方とシステムをとればいいだろうか。
わかりやすく提示していきたい。
・・・・・・

「ビジョンとは、わかりやすくて、シンプルなもの」

企業にとってのビジョンとは、具体的には「わが社は、こういうお客さまに対して○○したい」という言葉で表現できるものだ。
ただしこの場合のお客さまとは、現在の顧客のことではなく、未来の顧客のことである。
その未来顧客に対して提供したいことが、企業にとってのビジョン創造である。
しかし、ビジョン経営の前提であるビジョンを描けない企業は、実は少なくない。
志を持って創業したであろうベンチャー企業であっても、例えば3年後のビジョン、言い換えれば3年後、どのような顧客にどのような価値を提供するのかと問うても、容易に答えることができないことが多々ある。
ビジョンは具体的でなければならない。
お客さまとはだれか。
個人なのか会社なのか。
価値とは何か。
価値には有形と無形がある。
製品・商品は有形だが、サービスや時間は無形である。
納期を守るのは無形の価値だ。
例えば、福祉機器を製造する会社が、「高齢者に幸せを提供する」というビジョンを掲げたとしよう。
もっともらしいビジョンだが、具体性に欠ける。
高齢者といってもさまざまだし、幸せを提供するとはどういうことなのか。
「足が不自由な方が、だれでも手軽に操作できる車椅子を提供する」という表現なら、そのために何をすべきかが理解しやすい。
わかりやすくてシンプルでなければ、ビジョンといえない。
わかりやすいからこそ、そこで働く社員は自分が何のために働いて、何をすべきかが理解できる。
ビジョンを明確にできないベンチャー企業で働く社員は、何のために働いているかを見失ったまま、ただ忙しい毎日に体力も精神力も消耗し続ける。
一方、明確なビジョンがあるベンチャー企業で働く社員は、ビジョン実現に自分も参加しているという手応えを実感しているので、残業で徹夜が続いても苦にならない。
コンビニエンスストアで考えてみよう。
ほとんどのコンビニエンスストアにレジは2つあるが、1つのレジにしか店員がいないことが多い。
もう1人店員がいたとしても、店内の棚に品物を並べるなど、ほかの仕事をしているからである。
店内にいるお客さまが少なければ、それでもいいだろう。
では、レジ清算のお客さまが増えた時はどうか。
急ぎ2つ目のレジに戻りお客さまに声をかけ清算する店員がいる一方で、レジが混み始めてもいっこうに品揃えの手を休めない店員がいる。
この差を、個人のやる気の差だと指摘するのは簡単である。
しかし、個人のやる気ではなく、適切な行動という開発できる能力基準として経営システムに組み込んでいかなければ、企業は顧客貢献、いわばビジョンを実現することはできない。
そもそもコンビニの価値とは、「お客さまが必要なものがいつでもすぐ買えるという便利さ」を提供することではないか。
使えるはずのレジを閉めたままお客さまを待たせているようでは、コンビニとはいえないのである。

「あるべき姿を明確にする」

ビジョン経営とは、未来顧客に対して未来価値を提供するために、企業が組織としていかに取り組むかのシステムを構築し、実行することである。
そしてこの経営システムは、集客と個客対応とやる気のトライアングルが重要である。
しかもその関係は、上位に未来顧客に向けて未来価値を創造するというビジョンがあって、そのビジョン実現に向けて未来価値を創造するという手応えを社員に感じてもらうための手段を講じるものでなければならない。
ビジョン経営とは、まずビジョンありき、でなければ成り立たないのだ。
ゴルフに挑戦する場合で解説するとわかりやすい。
私は最近、妻とゴルフを始めた。
その際にまずしたことは、リゾート地のゴルフ場に3ヵ月後のラウンドの予約を入れることだった。
それから私たちは、ゴルフの練習を始めた。
とにかく3ヶ月後にはゴルフ場のコースに出て、さっそうとスイングをしている私がいなくてはならない。
そのためにはどうすべきか。
恥ずかしくないスイングができるようになる。
とりあえず前に進めるようになる。
ルールを覚える。
・・・・・こうして私はゴルフのスキルを身につけていったのだが、これはまさにビジョン型ゴルフ練習法だ。
うまくなってからコースにでる、などというやり方はビジョン型ではない。
あれもこれもとやみくもに練習を重ねるうちに目標はどんどん大きくなり、ゴルフ場でラウンドするのがゴルフの醍醐味であるはずなのにコースデビューは遠くなるばかりだ。
大切なことは、あるべき姿を明確にすることだ。
そのうえで、何がなんでもやる。
ビジョン型にはあきらめない限り失敗はないことも加えておく。

「ビジョン経営に重要なチームの役割」

では、ビジョンを実現するためにはどのように手段を講じていけばよいのか。
企業は資産を持っている。
資産には、設備や資金などの有形とノウハウやアイデアなどの無形がある。
人は、労働者としてカウントするならば有形であるし、一人ひとりのノウハウやスキルをカウントするならば無形である。
これらの資産が活動し始めると価値が生まれる。
ビジョン実現の手段、つまり経営計画を策定する際に留意すべきは、目標は常に顧客に向かう矢印の軸で設定しなければならないということである。
中期経営計画を作成する際に、売上高や利益を○%増と設定する企業は多い。
しかし、これにはあまり意味がない。
売上高は、顧客によって決定されるからだ。
顧客は価値と価格を比較し、買うか買わないかを判断し、決定する。
顧客から企業に向かう矢印の軸の価格に購買者数を乗じると売上高になる。
売上高から費用を差し引いたものが利益だ。
売上高とは不安定なものであり、自分たちでコントロールできるものではない。
目標は自分たちでコントロールできるものでなければならない。
コントロールできない目標は、目安の目標にすぎない。
ビジョンを実現するために必要なことは、どのような価値を顧客にていきょうするのか、どのような活動をすべきなのか、どのように資産を蓄積していくか、を考ええることである。
それが中期経営計画となり、次はその中期経営計画を達成するために組織の再編成が必要とな。
組織は戦略に従うのだ。
ビジョン経営では、チームの機能が極めて重要となる。
現実に社員が働く場は、チームのなかにあるからだ。
その意味でまず、チームの機能を明確にすることが重要である。
組織を構成する各々のチームは、どういうチーム顧客に対しどういう価値を提供していくのか。
これは、トップダウンで決定されるだけでは不十分である。
組織全体を俯瞰したうえで、各チームの機能を決定するトップダウン型の指示が必要であるのはいうまでもないが、現場を知るチームが自ら機能の提言ができなければ、戦略が画餅に帰する危険性がある。
第一、社員自身にビジョン実現に自分も参画しているという手応えを感じてもらうためには、提言は重要である。
そしてトップは、現場からの意見を取り入れた後、再びそれぞれのチームの機能を検証する必要がある。

「変化が常態のいま、能力開発し続ける必要がある」

チームの機能が決定したところで、個人の役割が決定される。
ビジョンを実現するために策定された戦略をお題目で終わらせないためには、戦略によって再構築された組織からチームへ、そのチームからチームの構成員である個人へと役割を連動させなければならない。
個人の役割が決定すれば、自ずと個人に対する評価基準も決定する。
役割を果たすには、言い換えれば、「評価されるため」には、当然、役割を果たすために必要な能力は開発してもらう必要がある。
変化が常態である現代において、企業のビジョンは常に変わり続ける。
それゆえ、社員には能力開発をし続けてもらう必要がある。
能力は腐るのだ。
ビジョン実現のために企業戦略を転換し、組織を再編成し、人材の評価基準を変える。
社員は、能力を開発し続けないことには評価してもらえない。
小倉昌男ヤマト運輸元会長の著書「経営学」から、同社が宅急便をスタートさせた際のキーワードを拾うと、「個人の小さな荷物を送りたいお客さまに対して、一個500円で原則全国どこでも翌日配達を提供する」というビジョンが明らかになる。
大量輸送の物流サービスから宅急便というビジョンに変わった時、同社のセールスドライバーに必要な能力も当然変わった。
運転手からセールスドライバーへの転換は、大型トラックで幹線道路を走るスキルよりも小型トラックで住宅地の細い道へ苦もなく乗り入れし、お客さまと対話できるスキルを評価するからだ。

「ビジョン経営は能力主義を実現し、企業文化を創造する」

ビジョン実現のために社員のやる気をいかに引き出すかが、ビジョン経営の成否を決定する。
必要なのは、社員の意識改革である。
そのために企業が行うべき第一段階は、自律的に能力開発に取り組むための仕組みづくりである。
能力とは何か。
潜在能力という言葉で示されるように能力には資質なども含まれるのだろうが、私は能力を限定し、能力とは習得できるものだと規定したい。
それゆえ私は、知識と技能と行動を能力だと定義する。
能力は仕事のプロセスとその結果を通じて評価されると考える。
能力は習得できるからこそ、チームリーダー層、プロフェッショナル層、オペレーション層というような会社ごとの名称はあると思うが、能力開発次第でそれぞれの階層(ステージ)で活躍することが可能となる。
その際、大切なことは、各階層の役割と必要な能力を明確にしておくことである。
以上から、ビジョン経営は、シンプルな能力開発主義システムであるといえる。
階層をステップアップするためには、役割に応じた能力が必要であり、経験年数など意味を持たない。
ただし、能力開発主義システムという現実だけに捕われてしまうと、社員は自らの弱点ばかりに目がいってしまいがちになる。
大切なのは、自分の強みを理解し、それを伸ばすことでチームに貢献することであるはず。
弱点の克服ばかりに汲々としていては、本来の能力を発揮することができない。
知識と技能に裏づけされた行動を能力であるとすれば、行動に影響を与える企業文化の醸成が重要である。
顧客貢献はビジョン経営の前提ではあるが、そのために深夜・休日まで働くことがその会社の企業文化だとしたら、それは社員に納得し難い。
企業文化ではなく、悪しき企業風土にすぎない。
社内にあるコミュニケーションの形やリーダーシップのありよう、規範や意思決定の型、仕事の手順や雰囲気などは企業風土であり、これらは変えることができる。
企業風土は過去から現在の遺物であり、企業文化は未来に向かって創造するものである。
過去は変えられないが、未来は創造できる。
まず各チームの風土を変えることだ。
それが素晴らしいものであれば全社に波及するはずだし、そうなれば企業文化は新たに生まれる。
以上の点から、社員の意識改革を促進するために人事部が果たすべき機能は2つある。
まず第一に教育に関しての人事部の機能は、自律的な能力開発を促すための気づきの仕組みをいかにつくるか。
そのためには、ステージごと、チームごとの能力要件を明らかにするとともに、チームの一員としてその人がどのような能力の強みを持ち、どう伸ばしていったらよいかという視点に立った、個別の能力開発基準を設けることが必要である。
第二に、チーム文化、企業文化醸成に関しては、方向性を明確にし、特にリーダー・メンバー同士がざっくばらんに話し合える文化をいかにつくるかが重要となる。
その意味では、人事部の風土改革を率先して行い、人事部のチーム文化を醸成することで企業文化づくりに挑戦してみてはいかがだろうか。