日本でいちばん大切にしたい会社

坂本光司、あさ出版

「わかっていない」経営者が増えている

最近多くの人が勘違いしているのですが、会社は経営者や株主のものではありません。
その大小にかかわらず、従業員やその家族、顧客や地域社会など、その企業に直接かかわるすべての人々のものなのです。
どんなに高い技術を擁し、どんなによい商品を提供していたとしても、「企業は社会みんなのものである」という根本原則を忘れ、社会の公器としての責任や使命をないがしろにしている会社は、結局壊れていくのです。
なぜなら、社会通念に反した会社の言動は、時間がたつにつれてつじつまが合わなくなっていきますし、それに気づいた従業員や市場がまずは見切りをつけ始めるからです。
それで一生懸命働いている従業員が、
誰よりもその会社の本当の姿を知っているからです。
まじめに働いている従業員やその家族は、自分たちが勤めている会社の社会に反するような言動を、決して認めることができません。
欺瞞に満ち満ちた、いい加減な経営をしていると、離職するまじめな社員が続出し、商品の生産や販売する不可能になってしまいます。
その意味では、使命と責任を意識して行動することは、会社にとって、研究開発や生産力、販売力などの経営管理力よりもはるかに重要なことといえるでしょう。
極端にいえば、その会社の盛衰を決定してしまうといっても過言ではありません。

会社経営とは「5人に対する使命と責任」を果たすための活動

1. 社員とその家族を幸せにする
2. 外注先・下請企業の社員を幸せにする
3. 顧客を幸せにする
4. 地域社会を幸せにし、活性化させる
5. 自然に生まれる株主の幸せ

業績ではなく継続する会社をめざして

正しい決断をし続けていくには、ブレない正しい視点をもつことが大切です。
会社が今やっていること、これからやろうとしていることについて、「儲かる儲らないか」「とか、「他社に勝つか負けるか」といった視点ではなく、それが「正しいか正しくないか」「どんな判断をすることが社員のため、お客様のため、地域社会のためになるのか」などといった、会社がもっていなければならない正義感や倫理観に立って決断しなければなりません。
そのうえで、「その決断にやましいところはないか」を考えなければならないのです。
本当にいい会社とは、継続する会社です。
「業績が高い」といっても、業績が上がったときに社員を雇い、業績が下がったときに社員の首を切るようなことを繰り返しているような会社は、長続きしないものです。

「多くの人を満足させる」こと。それが会社の使命

経営がうまくいっていない会社の経営者に話をうかがうと「問題は内ではなく外にある」という方がほとんどです。
こうした経営者が必ず言うセリフは、「景気が悪い」「政策が悪い」「規模が小さい」「ロケーションが悪い」「業種が悪い」「いい人材に恵まれない」などです。
しかし、そんなことは関係ありません。
重要なことは、その会社が、私たちの心を打つようなことをやっているかいないか、なのです。
心に響く会社なのか、社員がやりがいをもって楽しく仕事に取り組める会社なのかということです。
これからの企業に問われることは、経営者の社員への思いの深さです。

経営がうまくいかない理由は内側にある。

企業経営は人・物・金だとか、人材・技術・情報だといいますが、こうした見方がそもそもの誤りです。
私の経営学では「1に人財、2に人財、3に人財」で、あとは人間を幸せにするための道具にすぎないと考えています。
景気は与えられるものではなく、創るものです。
お客様が喉から手が出るほどほしい商品を創り、提案すればいいのです。

日本理化学工業株式会社

障害者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる場をつくりたい

50年前に知的障害をもつ2人の少女を、「私たちみんなでカバーしますから」という社員たちのたっての願いで採用した日本理化学工業。
今、この会社の障害者雇用率は、社員の7割に及んでいます。
会社は、売上げを上げるために、利益を上げるために存在しているのではありません。
本当に人々に必要とされ、社員たちも誇りをもって働くことができる、その結果、みんなが幸福を感じることができる、そんな会社になるために存在しているのです。

昭和34年(1959年)のある日、1人の女性が、当時東京都大田区にあった日本理化学工業を訪ねてきた。
「私は養護学校の教諭をやっている者です。むずかしいことはわかっておりますが、今度卒業予定のこどもを、ぜひあなたの会社で採用していただけないでしょうか。大きな会社で障害者雇用の枠を設けているところもあると聞いていますが、ぜひこちらにお願いしたいのです」
障害をもつ2人の少女を、採用してほしいとの依頼でした。
社長である大山泰弘さん(当時は専務)は悩みに悩んだといいます。
その子たちを雇うのであれば、その一生を幸せにしてあげないといけない。
しかし果たして今のこの会社に、それだけのことができるかどうか・・・。
そう考えると自信がなかったのです。
結局、「お気持ちはわかりますが、うちでは無理です。申し訳ございませんが・・・」
しかしその先生はあきらめず、またやって来ます。
また断ります。
またやって来ます。
それでも断ります。
3回目の訪問のとき、大山さんを悩ませ、苦しませていることに、その先生も耐えられなくなったのでしょう、ついにあきらめたそうです。
しかしそのとき、「せめてお願いを1つだけ」ということで、こんな申し出をしたそうです。
「大山さん、もう採用してくれとはお願いしません。でも、就職が無理なら、せめてあの子たちに働く体験だけでもさせてくれませんか? そうでないとこの子たちは、働く喜び、働く幸せを知らないまま施設で死ぬまで暮らすことになってしまいます。私たち健常者よりは、平均的にはるかに寿命が短いんです」
頭を地面にこすりつけるようにお願いしている先生の姿に、大山さんは心を打たれました。
「1週間だけ」ということで、障害をもつ2人の少女に就業体験をさせてあげることになったのです。
就業体験の話が決まると、喜んだのは子どもたちだけではありません。
先生方はもちろん、ご父兄たちまでたいそう喜んだそうです。
会社は午前8時から午後5時まで。
しかし、その子たちは雨の降る日も風の強い日も、毎日朝の7時に玄関に来ていたそうです。
そうして1週間が過ぎ、就業体験が終わろうとしている前日のことです。
「お話があります」と、十数人の社員全員が大山さんを取り囲みました。
「あの子たち、明日で就業体験が終わってしまいます。どうか、大山さん、来年の4月1日から、あの子たちを正規の社員として採用してあげてください。あの2人の少女を、これっきりにするのではなくて、正社員として採用してください。もし、あの子たちにできないことがあるなら、私たちみんなでカバーします。だから、どうか採用してあげてください」
これが私たちみんなのお願い、つまり、総意だと言います。
社員みんなの心を動かすほど、その子たちは朝から終業時間まで、何しろ一生懸命働いていたのです。
仕事は簡単なラベル貼りでしたが、10時の休み時間、お昼休み、3時の休み時間にも、仕事に没頭していて、手を休めようとしません。
毎日背中を叩いて、「もうお昼休みだよ」「もう今日は終わりだよ」と言われるまで一心不乱だったそうです。
ほんとうに幸せそうな顔をして、一生懸命仕事をしていたそうです。
社員みんなの心に応えて、大山さんは少女たちを正社員として採用することにしました。
それ以来、障害者を少しずつ採用するようになっていきました。

人を工程に合わせるのではなく、工程を人に合わせる

障害者を受け入れたものの、はじめの頃は苦労の連続だったそうです。
どうやって仕事を教えればいいのかもわからない状態です。
普通は自分たちがつくったラインに人間を合わせるものですが、大山さんは、その子たちが精一杯の仕事ができるように、1人ひとりの状態に合わせて機械を変え、道具を変え、部品を変えていったのです。
1人ひとりとつき合ながら、何ができて、何ができないのかということを少しずつ理解していき、人に合わせて工程を組み立てていく・・・。
能力に合わせて作業を考え、その人に向いている仕事を与えれば、その人の能力を最大限に発揮させることができ、決して健常者に劣らない仕事ができることがわかったそうです。
採用の基準は、自分の身の回りのことができること、返事ができること、一生懸命仕事をし、まわりに迷惑をかけないこと。
そんな子どもたちは親切な子が多いそうです。
そこで、ある程度のレベルに達したらリーダーにすることで、それぞれのモチベーションが高まるといいます。

伊那食品工業株式会社

「社員の幸せのための経営」「戦わない経営」を貫き、48年間増収増益

寒天メーカーという斜陽産業のなかで、48年間増収増益を果たしてきた伊那食品工業。
ともすればその業績に目を奪われがちですが、この会社は決して業績本位で今日まで来たわけではありません。
「会社は社員の幸せのためにある」ことをモットーに、50年間一度のリストラもなく、同業者とも戦わず、とことん環境に配慮した工場をつくり、「100年カレンダー」で遠くを見通す経営をしてきたのが、伊那食品工業なのです。

「いい会社をつくりましょう」

社是と経営理念を同じものだと思っている人もいますが、私の解釈で言えば、社是とは、「わが社はなんのためにこの世に生を受けたか」「わが社の使命・目的はなにか」ということです。
そして経営理念は、それをもう少し具体化して、「会社の目的を達成するためめにどういう経営をするか」ということを述べたものです。
「いい会社をつくりましょう」
これが伊那食品工業の社是です。
それを見た多くの人が、最初は「なんだか、ままごとみたいに無邪気だな」と思うようです。
しかし、それを補足して書いてある文章を見たとき、誰もがこの会社の虜になるのです。
その文章とはこうです。
「いい会社とは、単に経営上の数字ではなく、会社を取り巻くすべての人々が「いい会社だね」と言ってくださる会社のこと」
つまり、「社員自身が会社に所属することの幸せをかみしめられるような会社のこと」と書いてあるのです。
「よい会社」ではなく、あえて「いい会社」と書いてあります。
「よい会社」をめざすのであれば、増収・増益を続ければそれで十分かもしれません。
「小社はこれまでも、またこれからも社員のリストラはやりません。なぜなら小社にとって、人件費はコストではないからです。人件費は目的である社員の幸福を実現するための生活費だからです・・・」
伊那食品工業の経営理念にはなんと書いてあるのか。
「企業は社員の幸せを通して社会に貢献すること」と高らかに謳っています。
さらにそれを補足する言葉として、「企業は企業のためにあるのではなく、企業で働く社員の幸せのためにある」と書いてあります。
伊那食品工業が伸びてきたのは、この社是と経営理念をベースにした経営を、ブレることなく続けてきた結果といえるでしょう。
3つの経営指針。
1.無理な成長は追わない
2.敵をつくらない
3.成長の種まきを怠らない

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中村ブレイス株式会社

「人を支える」会社には、日本中から社員が集まり、世界中からお客様が訪ねてくる
まだ日本に義肢装具のニーズがほとんどなかった時代に、過疎が進む故郷で、たった1人で創業した会社、それが中村ブレイスです。
ずっと弱者の視点に立ち、弱者のために物づくりを続けてきた会社です。
効率にこだわることなく、じわりじわりと評価を高めていった中村ブレイスは、「日本一、辺鄙なところにある会社」です。
しかしこの会社に、今では首都圏はもとより日本中から入社希望者が集まり、世界中からお客様が集まるようになっています。

株式会社柳月

地域に生き、人と人、心と心を結ぶ経営を貫いていく
北海道生まれ、大きく成長したものの、決して北海道から出ようとしないのが、菓子メーカーの柳月です。
十勝の自然を満喫してもらおう、お菓子づくりを体験してもらおうということでつくった34,000平方メートルの「十勝スイートピア・ガーデン」には、年間60万人ものお客様が訪れます。
柳月の願いは、「心と心をつなぐこと」。
地域の多くの人々が、お菓子のおいしさや気持ちのこもったサービスから、幸せをもらっているようです。

柳月5つの誓い
私たちは、心を結ぶ団らんをお手伝いします。
私たちは、心を結ぶお菓子をつくり続けます。
私たちは、心を結ぶ接客・サービスを行ないます。
私たちは、地域社会と心を結びます。
私たちは、心を結び、幸せをめざします。

杉山フルーツ

「あなたのお客でほんとうによかった」と言われる、光り輝く果物店
大規模スーパーの撤退で寂れた商店街に、光り輝く果物店、杉山フルーツがあります。
お客様にとことんおいしい果物を、という姿勢もさることながら、杉山フルーツが心を打つのは、その商売に対する姿勢です。
少ない予算で「引き出物をお願いしたいのですが」と頼まれれば、店員総出でお客様が感涙に咽ぶような商品を提供するその気持ち。
だから杉山フルーツには、全国各地からお客様が殺到するのです。

http://www.asahi-net.or.jp/~pv3n-situ/