
なんとか会社を変えてやろう
柴田昌治、日本経済新聞
まえがき
- 今の日本ほど、当たり前のことが当たり前にできていない時代も珍しいのではないでしょうか。
- 「人の生き方として正しいか、正しくないか」という庶民感覚や社会常識は後ろに押しやられ、常に「損か、得か」が判断において優先されます。
- 自らの既得権益を守るためには人間としての誇りすら捨ててしまっている大人がこれほど多い世の中(世間)では、子供たちが未来の自分に夢や希望を持ちながら健全に育っていくのはかなり困難なことではないかと思います。
- 人間というのは本来、ごく例外を除けば、まともな精神を持っているものです。
- おかしいと感じながら不正を働くのは多くの人にとって非常なストレスを伴うはずです。
- にもかかわらず、自分の属する組織(業界団体、会社、労組など)の小さな人間集団の利益のためには、エゴむき出しの行動をしたり、問題があっても表ざたにせずに隠すことが本気でできてしまうのはなぜか。
- しかし、心のどこかで良心の呵責と戦いながら、思い直したり、失望したりしているのはなぜなのか。
- 日本の改革の最大の課題として、ここに「波風をたてない」「言ってもムダ」といった組織の風土・体質の根深い問題が障害として横たわっている、と思うのです。
- 分権化したり、実力主義に転換するなど、組織再編や制度改革を断行することは難しくありませんが、風土・体質の変革なくしては成功するはずがありません。
- 「やっぱり会社は変われない」ままに破たんを迎えます。
- そういう組織は潰れて当然なのです。
序章「意識改革では変われない」
- 企業改革の中心課題は、「見えにくくなっている問題を見えやすくする」のが出発点。
- 企業改革には、「ハードの改革」と「ソフトの改革」がある。
- 「戦略」「事業計画」「制度」「業務プロセス」はハードの部分。
- 「企業風土」「体質」「文化」と呼ばれるものはソフトの部分。
- ハードの改革を成功に導くには、ソフトもそれに見合ったものに変えていくことが必要。
- どんなソフトかというと、「相談し合える関係」「協力し合える関係」である。
第2章「風土・体質を変えていくプロセス」
相談し合える関係づくり
「気楽にまじめな話をする場(オフサイトミーティング)」づくりのポイント
- 形式ばらずに気楽な雰囲気をつくる
- 結論を出すことをノルマにしない(結論が出ることは構わない)
- 人の話をまず「聞く」という姿勢を持つ
- 「話し合う場」から「聞きあう場」へ
- 立場を離れる努力をする
- 相手にレッテルを貼ったままにしない
- 正しいことを言い過ぎない
- 相手をやっつけ過ぎない
- 自分の弱味を素直に見せる
「オフサイトミーティングの体験レポート」
- 風土を変える。たやすいことではない。風土をかたちづくるのは一人ひとりの意識であるから・・・どう変えるのか。
- 主張しあい牽制し合う人間関係から、聞きあい知恵を出し合う人間関係へと変えていくのである。
- これは進化論の立場を、優勝劣敗、弱肉強食、自由競争の立場から共生関係の立場へとパラダイム転換するくらいの大きな変化である。
- ではどのようにして、それを変えていくのか。
- その方法論が、「オフサイトミーティング」であった。
- 僕は、この言葉を「気楽にまじめな話をする場」という程度にしかとらえていなかった。
- さて、しょっぱなから僕はその考え方の違いに戸惑うことになる。
- 初日。10時に集合して開始まもなく、まずはプロセスデザイナーの自己紹介から始まったが、これが企業人の常識的しきたりどおりではなく、延々と3,40分も続くのである。
- いきなりこの展開に、内心「ちょっと待ってくれよ」と困惑した。
- 一体、彼女の履歴を延々と聞くことが、僕の持ってきた課題と何の関係があるのか。
- 自己紹介とそれに含まれる問題意識は、この後、グループに分かれて討議するための、そのグループ分けに必要な程度の情報ではないのか。
- ならば、もう少し自己紹介を縮めてグループ分け後にもっと突っ込んだ自己紹介を行えばよいのではないか、と。
- 体制を立て直すために、休憩がほしいなと思ったら、ちようど事務局側が休憩を入れてくれたので一息つくことができた。
- そして、ひとつどういうやり方をするのかじっくり見てやろう、と腹を決めた。
- 引き続き、5人ほどが自己紹介を終わったところで、ある参加者から短かめにしては、という動議が出された。
- どうやら彼は僕と同じ考えだったらしい。
- そして、そのまま煮え切らずにここまできたというわけだ。
- が、僕はすでにここまで来たのであれば、もう少し他の企業の話も聞いてみたいと思うようになっていた。
- 結局このまま続き、その動議を出した人も非常に長々としゃべって、全員が終わった。
- 夕方六時までかかったから、一人平均でも30分はしゃべっていたことになる。
- 夕食後、分科会を2時間。
- その後、懇親会が2時間あって、その日は終了。
- 翌日、9時から全体討議となった。
- そして、なるほど、あの長々とした自己紹介の効果はこれにあったのかと感じたのは、この翌日の全体討議を通じてである。
- つまり、各種企業の集まりであるにもかかわらず、お互いが非常に素直なのである。
- そのため、全体討議のハイテンションは17時の終わりまで続いた。
- 終了まで、まだあと何時間あるというような「やらされ」時間を感じないのである。
- 「これだ」と目から鱗の思いであった。
- 「主張しあい牽制し合う人間関係から、聞き合い知恵を出し合う人間関係へ」と風土を変えていく、その変えるための方法論がオフサイトミーティングそのものなのである。
- 旧来のパラダイムに囚われていた我々が面喰らうのも無理からぬこと。
- オフサイトミーティングのやり方そのものが、すでに革新なのであった。
「企業の風土・体質」を「人が場を通して変えていく」プロセスをすすめる「企業内の世話人」に求められる資質
- 課題達成至上主義でない人
- 変革への思い入れが人一倍強い
- 制約条件を絶対視しない柔軟性
- フットワークのよさ
- 人と人との橋渡しをする力
- 起承転結の組み合わせ
- 違いを認める幅の広さ
「意思決定の仕方」
- 「衆知を集めて担当責任者が一人で決める」という決め方がある。
- 一般的に意思決定者というと、経営感覚に優れ、判断能力を持っている人間が適切なわけですが、現場レベルでは「その課題について一番情報を持っている人間」「その課題を最後まで推進していける人間」がリーダーになって責任と信念を持って決めていくのがベター。