黒川流域

2018年3月4日(日)、歩く会は稲城市立 i プラザホールで開催される神谷百子マリンバ・ クアルテットを楽しむと同時に川崎市麻生区を流れる黒川流域の散策もしようと京王相模原線の若葉台駅に9:00集合した。黒川はこの界隈の水を集めて多摩川に流れ込んでいる。

ルートは3通り検討したが下記ルートが全長6.46kmで適当と判断して採用した。



できるだけ緑地を歩こうと若葉台駅を出て西北に向かって登り坂を登る。最高地点と思しき所に「丘の上広場公園」があり、西方の多摩センター方面を見晴らせる。眼下に八洋多摩という自販機メーカーの巨大な拠点が見えた。屋根の上にソーラーセルを沢山設置している。

アーチ型の「弓の橋」が 南多摩尾根幹線道路を横断している。この道路に平行に「よこやまのみち」という遊歩道が馬の背状の尾根につけられている。「よこやまのみち」はかっての 東海道があったルートだという。古代には水はけよく、また敵の接近を察知しやすい尾根筋に道を通すことが多かった。これは日本国内に限らず、例えば 1066年に征服王ウィリアムがブリテン島に上陸してからいわゆるヘイスティングズの戦いの合戦場へと向かった道も尾根筋に築かれていた。

多摩丘陵は武蔵の国府(府中)から眺 めると横に長く連なる山々であった。 夕暮れ時にシルエットとして浮かぶその美しい姿を、万葉時代の人々は「多摩の横山」、「眉引き山」などと呼んでいたので多摩市がこう名付けたと言う。多摩の南の縁に沿って全長10kmあるという。和田氏はいつかこの全部を一気通貫に歩きたいと言い出した。

尾根道を南下してゆくとエコプラザという草木資源化プラントがある。この近くの樹木で覆われた小高い丘が川ア市でもっとも高い地点で諏訪ヶ岳(144.3m)と呼ばれるようだが、登りを嫌い平らな道を巻いて歩く。

畑にそって南下すると「防人見返りの峠」からの道に合 流する。「防人見返りの峠」は、宇遅部黒女(うじべ の くろめ)が詠んで万葉集に収録された歌にちなんで命名された。地図には多摩丘陵パノラマの丘と呼ばれている小高い丘である。黒女は上丁(かみつよほろ)の椋椅部荒虫(くらはしべのあらむし)の妻。天平勝宝7歳(755年)2月、夫荒虫が防人として筑紫に派遣された際、多摩の横山にて

赤駒を山野に放し捕りかにて多摩の横山徒歩ゆか遣らむ (万葉集20-4417)

という歌を詠んだ。

防人見返りの峠の東隣にある 黒川配水場は、中世には丸山城と呼ばれた砦であったという。この付近の鎌倉街道は、中世の鎌倉街道に重なっている。鎌倉時代末には、鎌倉に向けて進撃する新田義貞の軍勢もこの道を通過していった。学校給食センターを右手に見下ろしながら気持ちのよい道を南下する。



防人見返りの峠を見上げながら小休止

国士舘大学多摩キャンパスにぶつかって左に左折して下ってゆくと農地が見えてくる。周辺の水 を集めて黒川が造った渓谷である。農家の庭先にはナハニラが淡い青色の花をつけていた。珍しいと思ったらアルゼンチンからの帰化植物だと言う。渓谷沿いに 歩いてゆくとやがてグリーンハウスが並んでいる。突き当りに庚申搭などの石造物があった。

更に行くと柿生発電所がある。川崎市民の飲み水である水道水が、津久井分水地(相模湖)から地 中の導水路(隧道管)を経て、17.4km運ばれて、当地で12.2mの落差があることを利用して水力発電をしている水路式発電所だ。発電に使用された水 はそのまま長沢浄水場に運ばれて、市民の水道水となっている。

「生そばかごや」(044-988-0318木定休)で昼食。520円のもりがおいしかった。ここで加畑氏と合流。

さて「よこやまのみち」10kmは3つの部分に分けられる。詳しくはwikiの「よこやまのみち」

@若葉台駅から「防人見返りの峠」まで

今回歩いた部分。

A「防人見返りの峠」から一本杉公園まで

多摩ニュータウン市場南の「古道五差路」周辺で遊歩道は消える。この南の町田市北部の小野路地域には、江戸時代に宿場としてにぎわった小野路宿があり、そこにあった一軒の旅籠(はたご)、旧「角屋(かどや)」を改修し、観光交流の拠点として再整備した施設が「小野路宿(おのじじゅく)里山交流館」がある。

B一本杉公園から唐木田配水所まで

「よこやまのみち」は多摩市総合福祉センターの先で奥州古道(古代の奥州街道)跡と代官坂が交差する。東京都町田市の下小山田の大泉寺は小 山田氏の館があったところといわれている。その大泉寺の北西の下小山田と上小山田の境界付近の丘陵尾根上を通る道がある。その道は深い切通状の昔のままの 姿の古道である。この道を地元では「代官坂」と呼んでいた。

ルート西端の最寄り駅は、京王相模原線南大沢駅。更に先の多摩境駅からは尾根緑道と鶴見川源流経由唐木田配水所まで歩ける。

February 19, 2018

Rev. March 5, 2018


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