養老渓谷

Wakwak山歩会は 2011年11月23日から1泊2日の予定で養老渓谷に遊んだ。前泊を含めて2日間で歩いた総距離9.73km、累積登り293m、累積下り246mである。


第一日

鎌倉駅11:27君津行きの乗る。五井駅13:26着。駅でおにぎりをい買い、小湊鉄道のホームで往復券を買って乗り込む。ディーゼルカーである。どうい うトランスミッションなのかわからないがギアシフト音が聞こえない。途中、紅葉を狙ったカメラマンが多数、走行するディーゼルカーに向けてカメラの放列を 敷く。小湊鉄道は養老渓谷沿いに坂を上る。養老渓谷駅14:49着。

宝衛橋と白鳥橋(吊橋)を渡って2.4kmを40分かかって歩き、前泊の「鶴乃家」に到着。(Hotel Serial No.504)。宝衛橋から見る渓谷は深い。温泉は黒湯とよばれヨウ素が含めれている ためか黒褐色である。源泉は常温で沸かしている。

10年継続した当会もメンバーの故障で参加者減少となった。一同話し合い一旦解散し、時々気が向いたら声を掛け合ってアドホックに計画することになった。 21:00就寝。

第二日

9:00出発。出世観音の参道である観音橋をすぎたところを右折して2.6kmの中瀬遊歩道に下る。河床は平滑な粘板岩で人工の飛び石伝いに渓谷 を横断する。



養老渓谷 くりさん撮影

やがて弘文洞跡というところにでる。蛇行した 河川を人工的に短絡させて農 地に転用する工法を川廻し(かわまわし)というが、夕木川が弘文洞跡より下流で養老川に合流していたのを短絡して養老川に 流すために140年前に隧道をつくって夕木川を養老川に接続した。しかし、1979年(昭和54年)5月24日の未明に突如トンネル上部が崩落してただの 川になってし まったといういわくつきの場所だ。トンネルの天井が落ちた跡がそれと見える。



弘文洞跡

夕木川は写真の手前の養老川に直角に交わる角度で手前向きに流れてきて手前の岩盤に当たって90度右に曲がり、約1km養老川に並行に流れて再び右に曲 がって養老川に合流していた。そこで農夫が岩盤に洞窟を掘って、直進させて養老川 に合流させたのである。Google航空写真で見ると折角造成した長さ1km未満、幅20m程度の逆U字型の土地だが、いまでは耕作されておらず雑草に覆 われ ている。

共栄橋で河底から上がり、トンネルを通ってバス通りにでる。ここから水月寺までの3.4kmはバス通りを歩く。養老川は深く切り込んでいるが周辺は台地に なっていて桃源郷のような趣がある。水月寺で一休み。ここから3.2kmの滝めぐり遊歩道に下 る。途中、最近崩落して露頭のあるところに案内版がある。この渓谷は200万年前に海底から隆起した厚さ500mの大田代層を流水が削ってで きた渓谷だと知った。大田代層は凝灰岩、黄色 砂岩、青灰泥岩の互層でできているという。この層は水が染み出ているし、一泊した養老温泉も黒湯といってなにやらヨ ウ素が溶け込んでいるような色をしていた。海岸よりには茂原のガス田もあるし。関係があるかなとい思ってあるいた。岩盤の傾斜も数度というものであった。



大田代層



帰って調べると日本天然ガス株式会社がガス生産とヨウ素生産しているのは太田代層と梅ヶ瀬層だという。したがって養老渓谷はガス貯留岩の展示場のようなと ころだ。

砂が堆積するのは海岸付近の比較的浅い海が一般だが、この時代の堆積は水深800m程の古東京湾であった。大地震や台風、洪水などが引き金となり、数百年 に一度発生する海底での地滑りや土石流が深い海に砂を運んだと考えられている。通常時は泥が堆積しているところに、数百年から千年に一度砂が運ばれて、砂 岩と泥岩の互層ができあがった。何千〜何万もの砂岩と泥岩の互層は、海底に半円錐状の小高い地形を作ってゆく。これを海底扇状地といい、梅ヶ瀬層、大田代 層はその典型的な地層という。また、海底扇状地は天然ガスの貯留層としても重要な役割を果たしていると考えられている。

地質の専門家であるH氏は古東京湾に堆積した地層に含まれている地下水(化石水)には多かれ少なかれガスが含まれ、溶存ガス量が多いところでは水溶性ガス 田となり 溶存ガスが少ない場合でも、油断すると2007年に渋谷の温泉施設でガス爆発事故が生じたようなことになるそうである。

滝めぐり遊歩道のドンつまりに「栗又の滝」があった。ここだけ岩盤が固く、エロージョンが進まず段差ができたらしい。滝頭まで上ると滝の斜度は20度くら いの緩いものだとわかる。この角度は古東京湾海底が太平洋プレートで押し上げられた岩盤の傾斜と同じだ。同じ傾斜は三浦半島から鎌倉に見られる。



栗又の滝にて   マーさん撮影

ここで解散直前のwakwak山歩会メンバー総員集合写真撮影。栗又の滝を見ながら昼食をとり、満員のバスにのって渓谷駅に戻り、小湊鉄道で五井に戻る。 あとは鎌倉まで1本だ。

今回の旅ではシンチレーションメーター持参で空間線量を計測した。数値はmicroSv/h

渓谷駅:0.07
宿の窓辺:0.09
弘文洞跡:0.07
水月寺:0.093
水月寺の数値が高いのはお堂の屋根から落ちた雨水が雨受けで乾燥したため濃縮したのであろう。

地球の歴史で約77万〜12万6千年前の時代を代表する標準地ラテン語で「千葉時代」を意味する「チバニアン」は市原市の養老川沿いに露出する地球の磁場 (地磁気)が逆転した痕跡を残す地層である。その場所は今回の養老渓谷駅より下流(北側)に当たる小湊鉄道の月崎駅と上総大久保駅の中間点に近い養老川岸に露出している。

November 25, 2011

Rev. December 12,  2017


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