地震と原発

2016年5月16日(月)から4日間の久住・阿蘇地方の旅を計画し全ての予約が完了して、決行まであと1月という時点で熊本地震が発生した。4月末に なってもおさまる気配がないため、中止せざるを得なかった。この旅ののため地震情報をみながらまとめた原発への影響は、そもそも過去1000年間の活断層 は地表ですべて見つかっているわけではないのだ想定外はいずれ生ずるだろうということ。

中 央構造線沿いの大地震のリスク

熊本地震はまず日奈久(ひなぐ)断層帯で前地震が発生し、布田川断層帯に伝播して本震となった。さらに別 府ー万年山(は ねやま)断層帯へと東進した。別府ー万年山(はねやま)断 層帯は1596年の慶長豊後地震以来初めて動いたことになる。いずれも中央構造線のうち、別府ー島原地溝帯に含まれる。沖縄トラフ、別府ー島原地溝帯、四 国や紀伊半島の中央構造線はユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込み、沈み込んだプレートが大陸棚の地 底に溜まり、溜まった物質が冷えて更にマントル内部に深く落下する際に地殻を一緒に引き込んだ窪地と考えられるという。そういう目でみれば、瀬戸内海も九州の地溝帯が東に向かって伸び、そこに海水がながれこんだものと見える。 四国に向かって伸びる中央構造線はこれでできた断層とも見える。この中央構造線が動くと2016年夏再稼働を目指す伊方原発の審査の前提条件が崩れるのではないかと心配したが、四国の部分は1000年に1回 の歪開放の頻度とか。まだ前の愛媛地震から400年しか経過してい ないし、そもそもここは圧縮力が働いていて、九州の地溝帯とはメカニズムが異なるという見方もある。一方日奈久断層帯の南にある再稼働した川内原発に向か う向かう可能性は 残っている。どちらにせよ中央構造線上の地震は浅いところに震源地があるため加速度は大きく、破壊的な力が構造物にかかる。制御棒が挿入できないとか送電 鉄塔倒壊すれば川内原発の電力を福岡に消費地に送れなくなる。



赤線は中央構造線 wiki

地溝帯の活断層の多くが東西方向に延びてお り、この線の南側はフィリピン・プレートに引っ張られて南北方向に正断層型の運動を起こすとされたが国土地理院が「だいち2号」データのSAR干渉解析結 果を組み合わせ、2.5次元解析を行い、地殻変動の準上下成分、準東西成分を求めたところ北側が沈降し、東に動いたという。これは引っ張られたという より押されたように見える。



赤は隆起、青は沈降


赤は東、緑は西

別府-島原地溝帯の南西方向の延長上に は西南諸島の北側に平行する沖縄トラフ(舟状海盆)がある。成因は同じである。熊本地震がどこまで拡大するか、まだわからない。万年山は下万年と上万年に 分かれる2段メサ(卓状台地)である。

今回の熊本地震では最大震度7、加速度にして1,399gal が記録されている。益城町で1580ガルという。震度7では周期が0.3secまたは5secに相当する。



原子炉への影響

独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)が行ったBWRに関する数値実験では上下方向の加速度が2G(1,960gal)を超えれば原子炉の 制御棒が引っかかって挿入不可になる。PWRの場合は加速度が増えれば落下速度が遅くなることがわかっている。また伊方原発の建造物の強度設計で 想定した基準地震動は 650gal、川内原発の基準地震動は620galである。スクラムの設定値は160gal。もし、川内原発で直下型地震が発生すれば、建物は破損し、制 御 棒が入らないこともありうる。規制委員会は地表に活断線が見え無ければよしとしているが、今回も地表に断層面が露出していないところでも、新たに断層線が 現れた。規制委員会の想定外がはずれることは充分ありうる。また規制委員会は停電に備え、電源車を常時構 内に待機させることにしているが、益城町ではこの電源車が横転している。

今回の南阿蘇の崩落現場は阿蘇の外輪山が別府ー島原地溝帯の引っ張り力で裂けてできた立野渓谷から外輪山の内側に降った雨が熊本に向かって流れ下る谷の近 くにある。この渓谷にかけられた阿蘇大橋に向かって斜面が崩れて橋も持っ て行ってしまった。近代的大型土木機械で動的平衡になっている地表を掘削して強引につけたものだ。その掘削した部分の急斜面がまず崩落して、 自然斜面も一斉に崩れたという感じ。ある意味人災、だがこれは快適な暮らしのために犠牲だろう。ここに国土交通省は治水目的の立野ダムがの建設を意図して いるが、はなはだ危険なものとなる可能性がある。

1週間過ぎて布田川断層帯は少し静かになってきた。地震学者によ れば別府から四国への断層は400年前に動いたから後600年はもう動かないだろう。しかし熊本から南の日奈久はまだあるかもしれない。というわけで別府 から初めて別府で終わる我々にとっては好都合。現在の道路はどうなっているトヨタのサイトで調べた。全コースに関しては迂回道路はある。ただし阿蘇山へ上るコースは交通規制している。 火口を覗くことは最初から目的としていないため、中止する理由がないと思っていたが、4月末になっても首相視察後の湯布院で震度5が発生し、駅舎のガラス が破損するのを見て断念する気持ちになった。

今回、車庫入れする新幹線が脱線している。たまたまラッキーな時間帯だったということなのだろう。いずれにせよ、レール原理の車両は直下型は震度7クラス では脱線するのを防ぐ技術として遊園地のようなガイド車輪付きの車両にしなければ不可能ではないか。いずれ新幹線も直下型地震ではP波で止めるシステムが 間に合わず1000名を超す大事故に遭遇するだろう。

March 10, 2016

Rev April 29, 2016


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