バットレス

バットレスはそもそも石造建築の壁体を強化するために、主として外壁に直角につきだしてつけられた短い壁のこと。控壁(ひかえかべ)ともいう。北岳が横方向に崩壊するのを抑えているように見える東側にある岩壁をバットレスともよぶ。

アーチやヴォールトが生み出す壁を押し広げようとする推力(水平方向の圧力)に対する補強壁としてもちいられる。スラストが石積みの壁から外に出れば壁は崩れてしまう。外にでないように壁を厚くすれば、窓がトンネルのようになって屋内が暗くなる。

窓のある付近の壁は薄く、窓のない壁の部分だけ厚くする方法がゴチック式教会建築を生み出した石工によって考案された。この厚い部分をバットレスという。バットレス上部にはスラストの方向を下向きにするために追加の加重を加えるために更に石が積まれ、ここに彫刻を施すようになった。

2世紀にはじまるゴシック様式の大聖堂では、壁体がますますうすくなり、ボールト構造の天井は高くなる。そのため壁体のうける圧力は増大し、それをささえる新たな工夫が必要となった。側廊のある場合は内身廊のボールトが生み出すスラストを側廊のバットレスに伝えるために、これにむけて壁面上部からかけわたしたアーチ状の構造物、すなわちフライイング・バットレス(飛梁、飛迫壁、飛控壁:とびひかえ)が考案された。ノートルダムのそれは華麗なものである。

このフライイング・バットレスの上部には、その重量を増加させるために、ピナクル(小尖塔)やフィニアル(頂華)がのせられる。彫刻で装飾されたピナクルのあるフライイング・バットレスがたちならぶゴシック聖堂のシルエットはとてもうつくしい。パリのノートル・ダム大聖堂はその代表例である。

July 3, 2002


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