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宇宙線で火山を透視

あるいはガンマ線で原子炉内部を透視

2008/11/14 作成

宇宙線利用映像化

東大地震研究所の田中宏幸特任助教授は薩摩硫黄島を透過するミュー粒子線を2008年8月一ヶ月観測してデジタル記録を蓄積、これを使って透視図作成に成 功した。ミューオトモグラフィーという。

ミューオトモグラフィーの原理は2の面に多数設置したシンチレーターそれぞれを通過したミュー粒子線の位置と強度を記録 し、対象物、第1シンチメーター、第2シンチメーター、映像面を貫通するミュー粒子線のみをコンピュータでえらび、その強度を映像面上にプロットすれば2 次元透過像 が得られるというもの。前提はミュー粒子線は天空のあらゆるところから均一に降り注ぐということ。

青色のところはマグマが溶けて対流している部分。その上の黄色の部分は直径100mの火道。

2008/11/12朝日新聞記事より

田中宏幸特任助教授は浅間山の3次元内部構造も独自に開発した観測機器を山の東側と北側に設置し、2方向からの二次元画 像を組み合わせて立体画像を作成。映像化した。

<ミュー粒子線による事故炉の透視>

名古屋大学のグループは福島第一で写真乾板を使って原子炉内の透視図を作るという。鉛遮蔽箱内に間隔をあけて設置した2 枚の乾板を設置し、鉛を貫通するミュー粒子線が作る映像を撮影し、これをスキャンしてコンピュータ上で田中方式と同じような処理をして映像を描くのではな いか。ただ乾板では同じ長時間露光すると多数のミュー粒子線の作る映像がかさなって粒子線の方向が見えなくなる。それに鉛の遮蔽程度ではフィルムがガンマ 線で感光してしまう。分厚い鉛遮蔽が必要と思う。

名 古屋大学のグループ成功したという報道はないが、2014/1/24高エネルギー加速器研究機構の高崎史彦研究員(素粒子物理学)が2012/2- 2012/12にかけて東海第二原発の屋外にミュー粒子線計測装置をおいて燃料プールと格納容器の透視画像を得た。装置は主さ800kg(放射線遮蔽鉄板 除く)1セット2,000万円。



左:ミュー粒子線による透視映像   右:設計図から作成した密度分布

2015/3//19資源エネルギー庁の「平成25年度廃炉・汚染水対策事業費補助金」に係る補助事業(原子炉内燃料デブリ検知技術の開発)として、IRID及び高エネルギー加速器研究機構は福島第一1号炉の映像化に成功。炉内には何も残っていないと判断。速報がでた


<ミューオン触媒核融合反応>

東大の松田恭幸によればミューオン触媒核融合反応というものも構想されている。トリチウムの電子軌道に加速器でミューオンを軌道に打ち込むと、電気的に中 性のためクーロン力が働かず、高温にしなくとも重水素と核融合を起こす。不要となったミューオンはリサイクル利用される。でもトリチウムを使うわけでやは り怖いエネルギー源である。

ガンマ線利用映像化

<セシウム可視化コンプトンカメラ>

宇宙に於いて放射性物質の核種を識別し画像化したり、地上では、広い視野 (ほぼ180度)と核種に固有なガンマ線を識別する能力を生かして、敷地や家屋に広く分布したセシウム137 (Cs-137) や セシウム134 (Cs-134)の可視化できるコンプトンカメラも同じ原理。

<Si/CdTe 半導体コンプトンカメラ>

JAXAはシリコン(Si) と テルル化カドミウム(CdTe) イメージング素子で構成する独自の 「Si/CdTe 半導体コンプトンカメラ」 を開発した。鉛で作るピンホールカメラでも映像化は可能。

<高エネルギーガンマ線コリメータ>

森永先生が発案したSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)はセシウム、ルテニウム、コバルトなどから出る1MeV以上のガンマ線を測定しパソコンで映像化するという構想。

鉛ブロックでフィルターしたあと、薄い鉛の板を2a=1mm位の間隔で積層したアパチャ―を90°交差させる方式で炉心の点強度を、液体窒素で冷やしたゲルマニウム センサーでガンマ線強度を測定する。環境からの放射線を遮断するために全体を4トン程度の重い鉛で覆う。これを縦横に振り回して放射強度を液体窒素で冷却 したガリウムセンサーで測定して走査線を作り映像化するわけ。

コリメーターと炉心との距離d=30mとする。問題は炉直径5mを20分割できる解像度2b=5/20=0.125mを得るための90°交差する2つのアパチャー間距離 Lはb:a=d:L/2からL=2ad/b=(2x0.0005x30/0.0625=0.48mとなる。したがって1m3程度の鉛の塊の中にセンサーを設置しこれを砲塔のように上下左右に回転できる遠隔操作の戦車のようなものを作ればよいことになる。

問題は廃炉にするために中身をとりだすためには格納容器を満水にしなければならず、そのためには漏れ穴を探す方が東電にとってより重要で、この炉心映像化装置はその役に立たない。知的興味よりいかに廃炉にするかのほうが重要というわけ。

東電の目的は廃炉であるからやむを得ないとして原研は研究機関なのだから知的好奇心をもってもよさそうなものだが、なぜかそのような研究は2012年の報告書に見られない。

November 14, 2008

Rev. March 20, 2015


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