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831

1/f ゆらぎ

2004/07/03

予測の出来ない時間的・空間的なものの変化や、その不規則な変化の仕方の総称をゆらぎという。ゆらぎは予測の出来ない微妙なずれを持っており、ある程度までは予測可能であるものの、完全に予測することは不可能である。

ゆらぎをみる手段として、時間的な変化を見た場合、ある変化がその後に影響を残すことを「ゆらぎの記憶」という。影響力は時間の経過と共に減少するが、この現象を「記憶がなくなる」と表現し、特に一定時間で一定の現象をするものを指数関数型の減衰と呼ぶ。このとき、ゆらぎの記憶と時間との相関をあらわしたものを自己相関関数という。

時間的ゆらぎをパワー・スペクトル密度で見る場合は、波形を一定周波数(frequency)ごとの調和振動成分に分解する。このとき、その振動の二乗平均をとることで周波数の成分の種類や強弱を調べることができ、周波数ごとの成分の大きさを図にしたものをパワー・スペクトル図という。自己相関関数とパワー・スペクトルは相互に関係するものであり、どちらかが決まれば他方も定まる。

ゆらぎの種類はパワー・スペクトルの関数の形によって分類することができる。スペクトルの周波数をx軸、スペクトル密度をy軸にとってスペクトル解析をしたとき、周波数とスペクトル・パワーの間に何の相関もない無秩序なゆらぎの場合はスペクトルが一定の値を取り続け、平坦な線になる。このように白色スペクトルがみられ、すべての周波数を同じ成分で含んでいる状態を白色ゆらぎという。

周波数とパワー・スペクトルの間に相関がある場合には、低周波数になるほどスペクトルの値が大きくなり、右下がりの直線になる。これはゆらぎに記憶効果があるためで、記憶が残りやすいものほど急な直線になる。このようなスペクトルは更に細かく分類することができる。

低い周波数では白色ゆらぎをし、時間と共に指数関数型の減衰をするものをローレンツ型スペクトルという。このときの減衰の仕方は1/f2になる。この1/f2ゆらぎと白色ゆらぎの中間にあるゆらぎで、周波数とパワーの間に逆比例の関係があるゆらぎを1/fゆらぎという。1/fゆらぎは自己相似性をもったゆらぎであり、フラクタルの一種である。平均をとる時間を変化させても、その平均値は必ずばらつくため、非常に長い記憶を持っているといえる。

1/fのfは、時間的変化を分析した結果得られる成分の振動数や周波数(frequency)のことをさしている。時間的変化を周波数に変換し、その相関から分析をするために周波数が基本となるためfが用いられている。

人間が何か刺激を感じると、その情報が1秒間に複数個の電気パルスに翻訳され、神経軸策やシナプスを伝わってニューロンからニューロンへと伝達される。こうして脳に伝わった情報が再び体中へと返されるが、このときニューロンから発生する電気パルスの頻度は1/fにゆらいでいる。

神経軸策は、一度電気パルスを受け取ると、次にパルスを受けつけるまでに時間がかかり、また伝達速度も遅くなる性質がある。そのため、多数の神経軸策によって並列伝送することで多くの情報を伝えるしくみを取っている。このとき、神経軸策に与えられる電気信号パルスの配列が1/fになると、それ以上は配列は変化せず、安定して神経軸策を伝わっていく。

人間の体の各部の動きや知的活動、感情は脳からの情報伝達によって管理されており、電気パルスによる制御作用が働いている。そのため、心拍数やその他の器官、行動にまで1/fリズムがみられる。

このように、ゆらぎの現象は生体と密接に関わっているが、1/fリズムは自然界にも数多く存在している。ゆらぎは生の本質をなすリズムであり、ゆらぎがなくなった状態は死んだ状態をさす。生体は必ず1/fリズムを持っている。


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