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シリアル番号 表題 日付

807

BSE

2004/05/06

BSE(Bovine Spongiform Encephalopathy) は牛海綿状脳症と訳されている。体内に入った異常プリオン・タンパク質が正常プリオン・たんぱく質の立体構造を転移させてしまい、分解できず、神経系に蓄積してしまうことが原因。

日本でBSEが発生したときに当時の米国側は、日本から米国向けに輸出するものについて政治的に全頭検査を義務付けた。マスコミもそうだそうだとうので科学的な理屈で国民を説得するかわりに農水省の次官が辞任して全頭検査を受け入れ、政治的に国民の要求にすりよった経緯がある。

異常プリオン・タンパク質の検査法は

一次スクリーニング(迅速検査):エライザ検査

二次テスト(確認検査):日本ではウェスタン・ブロット法(WB)と 免疫組織化学検査(IHC)のクロスチェック。米国ではIHCのみ。

現在我々が使える検査法では30ヶ月未満の牛はプリオンの濃度が低すぎて全頭検査しても感染が見つからない可能性が残っている。そこで脳、脊髄、脊柱、扁桃腺、回腸遠位部などいわゆる特定危険部位に加え、回腸遠位部を拡大して小腸なども食用禁止にするほうがリスクが低いわけである。

日本では全ての月齢の牛の特定危険部位の除去と焼却処分を行っている。しかし小腸などの内蔵が市場にでまわっていて30ヶ月未満の牛の検査漏れに出あう危険は残っている。全頭検査で問題ないと一般大衆は思い込んでいるため、モツ煮やヤキトリで感染するリスクが残っていることに変りはない。

米国では30ヶ月以上の牛は特定危険部位プラス小腸を除去。30ヶ月未満の牛は扁桃腺と回腸遠位部のみ除去。そして除去された部分はブタ、ニワトリの肉骨粉にリサイクルされている。

米国は自国でBSEが発見されると「全頭検査はしても意味がない」とコロっと変った。米国の変化は政治的にはおかしなわけだが、科学的な知見が増えたための変化ではある。日本も 検査法に関する見解はほぼ一致しているが、危険部除去に関しては日米どちらもリスクを抱えているという感じである。 今回の日米摩擦は米国産牛輸入のリスクと日本に残るリスク問題を同時に解決する良い機会だろう。

日本では全頭検査しているが、現在の検査法では20-30ケ月の若い牛の感染は検知できないとされているので科学的には無意味な政治的ショーと見なされている。 また日本の食肉処理場では伝統的にスタンガン(stun gun、気絶銃)で気絶させ、心臓が動いている時にピッシング(pithing、脊髄破壊)で脊椎に針金を通してとどめをさす方法をつかう。痙攣の危険性を除く屠殺法で作業員の安全は確保できる。だがこの方法はプリオンを血液にのせて全身に送る可能性がある。BSEが発見されてから各国はこの方法を取りやめたが、農水省は2009年まで使ってよいとしている。2006年2月の時点ではまだ51%がこの方法である。農水省は検査で陰性しか出荷しないから良しとしているが、若い牛が仮に感染していても現在の検査法では陰性とでるのだ。こんな偽善はない。2009年まで日本産牛肉は食べないほうが無難である。

米国では20-30ケ月の若い牛は無意味な検査はせず、プリオンが体内に拡散する恐れの少ない方法で屠殺し、かつ背骨などの危険部位を除去するという方法で日本に輸出されているので、むしろ安全と言える。

大方のマスコミはこのようなことを伝えず、大衆におもねているので、農水省はほおかむりを決め込み、日本牛の危険性が看過されている。

ーアエラ2006/1/1-8

Rev. January 5, 2007


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