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771

H2Aロケットの失敗原因

2003/12/14

NASDA(JAXA)報告によれば直接の原因は固体ロケットブースター(SRBA-R)の切り離し失敗である。その原因は固体ロケットブースター後部アダプター内部温度センサー全てに異常が観測されているようにブースターノズル周辺の異常高温により切り離し機構の信号ケーブルの溶断があったためと推定される。

SRBA-RSRBA-Rは米国より導入した一体型炭素繊維複合材(CFRP) 製モータケースの採用(旧SRBは高張力鋼製4セグメント方式) とノズルスロート材に3次元カーボン/カーンボン(3DC /C) 複合材を採用(旧SRBはグラファイト) でいずれも今回初登場。

地上での事前試験燃焼の結果、ノズルスロート内部に過剰エロージョンが発生し、その部分の肉厚を増した経緯がある。今回の事故はこの過剰エロージョンによって開いた穴からガスが噴出したのが原因とNASDAは考えている。

一体型CFRP 製モータケースはアラミド/エチレン・プロピレン・ゴム(EPDM)積層の気密インシュレーションを使っており、チャレンジャー号のようなゴム製のOリングなどもなく、ほぼ問題ないのではないかと思う。3DC /C 複合材をつかったノズルは内部過剰エロージョン対策もしたのでこれが原因ではないかもしれない。チャレンジャー事故のような未知の問題がるとすれば、推力方向制御のためにノズルコーンとモータケース接合部には4340鋼/エラストマ積層フレキシブルジョイントやCFRP/エラストマ積層断熱フレキシブルジョイントを使用しており、もしここに内部ガスが漏れる間隙などが生じれば後部アダプター内部温度センサー全てに異常を発生させ、分離機構ケーブルの断線に至ると考えられる。地上燃焼試験では発生しなくとも実負荷では推力方向制御によりノズルが大きく方向を変えるなどの影響でガスリークが発生することもありえるのではないか?

私の疑問は固体ブースターに推力方向制御が必要かということ。姿勢制御は液体燃料のメーンエンジンに担当させればよいとおもうのだが、基本設計思想に問題があるのではないか?(姿勢制御をつけたまま改造して成功したので杞憂であったのだろう)

固体ブースターはIHIエアロスペースエンジニアリング社製とのこと。IHIには、過去2回煮え湯をのまされた経験がある(水島重油タンクの底が抜けた事故とダス島LNGタンク底外板の低温脆性破壊)かなりいいかげんな組織でエンジニアの質は低く信頼できない。

12月6日付け朝日新聞「私の視点・ウイ−クエンド」で元IHIの技術者でノンフィクション作家の前間孝則氏は「NASDA技術者は覚めている。今回の原因が判明しても、別のところでトラブルが起こるでしょう。問題はもっと根本にある。組織体制、人の問題とか・・・・。旧NASDAでは、スケジュ−ル優先を声高に叫ぶ管理者タイプが増え、油にまみれ真に現場を知る技術者らしい人がいなくなった。H2用タ−ボポンプを製造していたIHIの工場を視察した当時の社長・真藤恒氏が「航空宇宙事業部門は『茶筒』だ。高度な技術を扱っていて自負も感じられるが、他の一般産業部門との技術的、人的交流が全くない。密閉世界で井の中の蛙になっている」と紹介している。


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