シリアル番号 | 表題 | 日付 |
765 |
身分内身分 |
2003/10/30 |
江戸時代の武士身分は一様ではなく大別して
●「侍」身分・・・袴OK、私服勤務、無条件の家督相続OK
●「徒士」(かち)身分・・・袴OK、制服強要、家督相続には読み書きソロバン能力が必要
●「足軽以下の奉公人」身分・・・裸足、制服強要、昇進は徒士止まりという鉄の天井
の3つに大別でき、身内内身分間の差別ははげしかった。この対立が明治維新の原動力になった。ヨーロッパの近代革命が王侯貴族の支配身分を非支配身分が打倒したのに比せられる。
無条件の家督相続をしていると藩主は象徴になり、家老会議も形式化する。「何もしない空っぽの頂上会議」に向かって、膨大な無駄書類があがり、おぼっちゃん家老たちがひたすら花押やら黒印を押していた。有能な非エリート武士が毎日毎日、規則・慣例にしたがって、この書類を書いていた。彼らは「藩がどうなるかは自分の仕事ではない。それはエリートの仕事。今日提出する書類が大切だよ」・・・そんな感じで日々つつましく暮らしを守っている藩組織の姿がある。
こういう組織文化は、現代の我々の政府、我々の会社、我々の学校に受け継がれているのではないか。
その後、藩はなくなり、武士は滅びた。そして今日本を見回すと・・・・
日本史研究者 磯田道史 朝日