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683

設計思想における集中と分散

2003/02/24

韓国テグ市の地下鉄火災事故はシステムの設計思想上、興味深い問題を提示していると思う。マスターキーを抜くと車載の非常用電源までカットし、ドアが開かなくなる設計が犠牲を大きくしたと考えられる。全ての制御機器の電源を1個のマスターキーで遮断するという設計思想はどういう考えでなされたのか、設計に長年たづさわってきた人間には興味がある。

運転手にとってマスターキーを抜くのは日常の習慣なのでパニックになったとき、それを引き抜いて逃げるかもしれないという人間工学的な検討は行なったのだろうか?幸い日本の車両はマスターキーを抜いても非常用電源は分散されているので遮断されないという。

おなじく火災が生じたとき、全ての電源を自動遮断するという設計思想も同じルーツを持つように思われる。

省力化のための集中化、自動化という設計思想が安全上あだとなっている。重過失致死として運転手を罰しても設計思想を変えないかぎり、安全は確保されないであろう。ヒューマンエラーは人間の本性に備わっていて訓練でなかなか変えられるものではないと肝に銘じておくことであろう。

車両に難燃材料を使う本質安全設計とか排煙能力など話題になっている。むろんその方がのぞましいことはいうを待たない。しかし燃えやすい車両でもドアが開いていた車両の乗客はほとんど助かっているにもかかわらず、パニックに陥って発車にこだわった運転手が、車内マイクで車内にとどまるよう指示し、停電でかなわず、結局断念してマスターキーを抜いて逃げたことはあったことである。運転手の間違った判断に従順に従った人々がどのくらい運転手を恨んだことだろう。

個人としての教訓は中央の司令に従順に従わず自分で判断し行動すること。地下鉄に乗ったらドアをあけるコックの位置は都度確認しておくこと。


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