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日米開戦時の日本の暗号解読力

2002/04/11

神戸大助教授蓑原俊洋(みのはらとしひろ)2002/4/5朝日夕刊文化特集記事によれば日米開戦時の日本の暗号解読力は愕然とするほど稚拙であったとの従来の定説は覆された。2001年7月米国立公文書館の資料のなかからみつかったCIAの報告書に基づき、日本外務省外交資料館の追跡調査によれば日本の暗号解読能力は諸外国と同じレベルにあったことがわかった。東郷茂徳外相は米国が一時検討した暫定協定案「modus vivendi」を暗号解読で知っており、後、1941/11/26に米政府より正式に出されたハルノートで米国が暫定協定案を捨てたことを知り、暫定協定案で東条英機首相を説得していた東郷は米国は開戦を決意したと悟って開戦に合意した。

日本の外務省の情報の専門家だった岡崎久彦氏によれば、歴史にもしはないがもし、開戦時の共和党の下院の指導者だったハミルトン・フィッシュは開戦反対論者だったし多数派も反対であったので、もし日本がこのハルノートを公表していたらアメリカは戦争できなかったか不幸にして開戦しても世論は戦争続行に疑問を持っただろうという。それでも硫黄島で米軍の犠牲2万人が 出たことを米国民が知れば、戦争反対の声が沸き起こっただろうという。

山本五十六が本来戦争反対だったのに「どうしてやれというなら奇襲しかない」と言ってしまったこと。さらに歴史を遡れば篠原喜重郎が英国が持ってきた日英同盟を日英米三国同盟に変える案を「そうですか、ではあなたがアメリカと交渉して御覧なさい」といえばよかったのを「これではアメリカは呑みませんよ」といってしまって日英同盟が消えてしまうことはなかった。

結論からいうと指導層の情報をいくら分析しても米世論の動向を読みきれなければ、国際政治動向はわからず正しい判断はできない。

学士会報2002-II No.835


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