メモ

シリアル番号 表題 日付

329

トービン・タックス

98/12/11

●1978年に米エール大学のケインズ派のノーベル賞受賞経済学者でジェームス・トービン教授が提言したもの

●外国為替取引に課税し、その税収で為替安定のための介入資金をまかなうという案

●為替安定策として注目されている。別名国際連帯税。

●では“トービン・タックス”は投機資金の流入規制にもつかえるか?

●実需のある場合のみ為替交換できるという原則は撤廃。

村上龍主催のJMMの論調

投機資金の流入によって、特定の財価格が高騰すると、必ずと言ってよいほど、資金流入をチェックすることが必要という議論が起きる。よく、「経済活動という“犬”が、尻尾=先物市場の価格を動かすのであって、尻尾が、“犬”を動かすのは合理的でない」との議論がなされてきた。ただ、投機資金の動きと、それ以外の一般的な取引を峻別することが難しいことに加えて、主要国の中でも、投機資金の規正に対するスタンスが異なっているため、世界レベルの本格的な規制にまで至ったことは殆どない。

今回も、投機資金の動きに寛容な米国と、欧州などの考え方の均衡点を見つけ出すことは、かなり難しい。もう一つ忘れてはならないことは、投機資金は、現物のデリバリーを伴う取引を行うことは基本的にないから、買った先物は、いずれかの時点で売り戻し、売った先物は、どこかで買い戻すはず。つまり、長期的に見ると、彼等の売り・買いは同じ額になります。ということは、長い目で見ると、彼等のオペレーションは、市場価格に対して中立ということになる。ただ、今回のように、潤沢な資金の一部が、投機資金となって商品市況に流れ込み、それが特定の財価格を高騰させ、実体経済に大きな痛手を与えるケースでは、短期的に、相応のスムージング手段が有効になる。問題は、主要各国の間の意見調整が難しいこと。意見の調整が出来ないと、実効性のある規制を実現することは困難。
ー信州大学経済学部教授 真壁昭夫

「投機マネーが原油価格高騰の犯人」との説に対しては、米国の国家機関の間でも意見が分かれているようだ。米国商品先物取引委員会(CFTC)は投機筋犯人説に対してやや懐疑的な立場にあり、ブッシュ政権も基本的には同様のスタンスです。サミットの首脳宣言においても、同様に商品先物市場の透明性向上を求めていますが、こうした公開市場におけるコモディティ価格の形成機能を追認する一方で、実体的な需給を反映した価格形成を促すよう生産や在庫の情報を共有・公開するなどの枠組み造りの必要性を提起している点は注目される。
ー金井伸郎 外資系運用会社 企画・営業部門勤務

投機マネーを国家権力が監視・規制できるのかという設問は、二つの問題を孕んでいるように思う。まず一つめは、市場対国家を巡る経済思想の問題、二つめは価格決定における投機の功罪です。前者については、「投機マネーを監視・規制できるのか」の前に、「すべきなのか」という点で、寄って立つ思想信条を受けて、考え方に差が生じる。
ー北野一 JPモルガン証券日本株ストラテジスト

価格高騰が投機マネーによるとして、政府が市場に介入して監視や規制をかければ、それは、市場の機能を奪って、需給の変化によって少ない資金で価格の急騰と急落を繰り返し、むしろ経済には悪影響を与える可能性があります。結局、価格高騰を止めたいと考えるならば、市場に政府が介入するよりも、本来の価格変動の要因である需給関係を改善して市場の調節機能で価格の安定を図るべきではないでしょうか。つまり、政府は、油田開発や代替エネルギーの開発普及、原油生産の政治的経済的な障害の排除、あるいは穀物の増産やバイオエネルギー生産の縮小などを政策的に行うべきではないでしょうか。

ー津田栄 経済評論家
 

Rev. July 14, 2008


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