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1529

曹操の再評価
2018/03/07

NHK BSプレミアムで三国志の真相発掘を見る。曹操が造った魏の首都、洛陽は目下発掘中。漢の長安に比べると宮殿が小さく、都の中に庶民が住んでいた。長安に は皇帝とその取り巻きしか住まなかったが洛陽では庶民も都に住んだのである。京都もこの洛陽をモデルにしている。調べると英考塾 不在文字、不離文字に 同じ記述を見つける。以下がその要約。確かにも朱子学に疑問を持ち、陽明学に転向した若者達が明治維新をやってのけた歴史をみて朱子学がもてはやされると きは独裁が全盛だった印といえる。しかしおかしなもので、テロに走ると後を引いて、朝鮮半島、満州へとのめりこんでゆくのだ。


時代が「曹操」を評価する時、その時代は変わろうとしている

「三国志」の英雄の一人で、中華北方に「魏」という国を建国し、三国随一の勢力を誇った。「赤壁の戦い(208)」は、珍しくも曹操が大敗する戦である。

三国志というストーリーを世界中に広めたのは、「三国志演義(羅貫中)」という小説によるところが多大である。三国志演義においては、劉備(蜀の建国者) が「善の象徴」とされているため、その「対立軸」として、曹操はことさら「悪」の部分が強調された。劉備はじめ、天才軍師の「諸葛亮」、武人の鑑「関羽」 などが、後の世において「神」とされていくことに反比例するように、敵役の曹操はますます悪の度合いを深めていく。

三国志演義が書かれた頃は明の時代だが、その前の「宋」の時代には、北方を異民族である女真族に占領され、「金」という国を作られてしまっている。そし て、宋は南へと逃れ「南宋」となった。「南宋」にとっては、北方の「金」は憎っくき敵である。その「金」が曹操に敬意を払っていると知るや、「南宋」では 曹操を徹底して嫌うようになる。その反動として、南宋の領土ともなっている「蜀の劉備」に絶大な人気が集まるのである。中国の正統な王朝は、三国の中でも 「魏」とされていたのだが、反曹操の機運の上昇、そして朱子学という流派の台頭により、「蜀」を正統とする説が支持者を集めたのだ。

曹操の生きた時代は、400年続いた「漢」という王朝がまさに滅びんとしていた時だった。王朝が傾くには然るべき理由がある。400年も続くと、それなり の膿も抱え込んでしまうのだ。衰退の原因の一つに「賄賂」の横行があった。高い官職をお金で買うのである。そのお金はどこから来るかと いえば、民の税金である。賄賂が盛んになるほどに民の負担は重くなった。その負担に耐え切れない民は土地を捨てるしかない。漢の最盛期には6,000万人 に迫る人口がいたというが、最小期で2,000万人、3分の1に減っていたという。戸籍の人口が減るということは、民が死ぬことだけを意味しない。隣国に流れていく。

小説・三国志演義では、曹操は「漢の逆賊」ということになるが、実際の行動を追っていくと、むしろ「漢の忠臣」であった事が分かる。曹操は死ぬまで皇帝の地位を略奪 することはなかった。漢では最高の権力をもつ「魏王(216)」の地位にまで登り詰めるも、結局は皇帝にはなっていない。あくまで「漢の臣」として一生を 終えている。「文王たれば良い」というのが曹操の言葉である。「文王」というのは殷の重臣であり、皇帝に取って代わる権勢を持ちながらも、最後まで殷に臣 従した人物である。皮肉なことに、漢の忠臣を旗頭にしていた蜀の「劉備」は皇帝の位につくのである。漢の逆賊とされる曹操が帝位につかず、漢の忠臣である はずの劉備が帝位につくというのは、漢の立場から見れば善悪が完全に逆転してしまうことになる。劉備は正義の代表の観点では、この辺りの解釈は非常に苦 しいものがある。そして生まれるのが、朱子学が推し進めた「蜀正統説」ということになる。

漢帝国衰亡の一因は民衆の流散であった。曹操は「屯田」という制度により、その流散した民を自領に糾合する。曹操は、行き場を失った民に牛や農具を無償で 提供し、灌漑設備まで整えて耕作を推進した。紛争地帯であれば、兵をもって民の耕作を守ってやったりもしている。民にとっては、漢の元で重い税に苦しむよ りも、曹操の元で安全に耕作できるほうがよほどに安泰である。曹操の支配下には多くの民が集まり、その収穫によって国力はいよいよ高まった。曹操の始めた 「屯田制」は、隋・唐の時代には「均田法」、日本に伝わり「班田収授法」となり、時代と空間を超えて後の世に伝わることとなる。こうして曹操再評価の気運は、三国志演義の悪評を超えて世に広まることとなる。

魯迅、毛沢東などは熱烈な曹操支持者である。曹操が再評価されるのは、決まって「時 代が窮した時」である。現代社会は窮しているのであろうか?いつになく、曹操は英雄の名を高めることとなっている。時代は変わろうとしているのかもしれな い。



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