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1490

TGVの脱線
2015/11/19

パリのテロですっかりかすんでしまったが、東洋経済onlineの報道は

2015/11/13複数の技術者を乗せて試験運転中だった高速鉄道TGVの車両がドイツ国境に近いフランス東部ストラスブール近郊の村、エックヴェルス ハイム付近で脱線した。当該区間は、在来線へ合流するために西行きと東行きの線路がちょうど分離し、間隔が開いている箇所で、運河を跨ぐために築堤となっ ている。西のメッス方面から進んできた線路は、ちょうどこの場所で進路をカーブで南へ向けて在来線へと合流し、ストラスブールへ向かう。事故車両は、カー ブ内側の線路から外側へ押し出されるような形で、両線路の間にある空き地と、線路を横切る形で流れる運河の中へ転落した。空き地付近の草地は無残にはぎ取 られ、そこに無造作に横たわった車体は、2005年に尼崎で起きたJR福知山線脱線事故を思い起こさせる。フランスの高速鉄道史上、試運転・営業中を問わ ず、もっとも重大な事故だったと報じられている。
今回、脱線・転覆した車両は、フランス国内で使用されているもっとも標準的な2階建て車両TGV-Duplex型のうち、Dasyeと呼ばれる改良型であ る。これは、2007年以降に製造された新しい車両をベースに、横方向および垂直方向の加速度を監視するセンサーや、信号、架線の状況をチェックする監視 モニターなどといった検測装置を搭載した試験専用車両だ。
この日行われていた試験は、営業最高速度時速320kmの認可を得るために、その10%増しの時速352kmで運転するもので、今年9月から同じ車両を使 用して、繰り返しテストが続けられていた。このようなテストは特別のことではない。日本でも新路線の開業前走行試験や、新型車の試運転では必ず行われてい る。現在世界最速となる時速360kmの営業運転を目指すイタリアでは、その10%増しとなる時速400kmの走行試験を開始している。
その後の発表で、事故発生現場は最高速度時速160kmの区間となっており、試運転では同様に10%増しの時速176kmまで引き上げて試運転を行う予定だったが、ほぼ最高速度に近い時速350kmでカーブに差し掛かり、脱線転覆したという説が有力となっている。
主たる原因として考えられている速度超過を起因とする事故だとして、どうしてそこに至ったのか。そこで思い出されるのが、13年7月に発生したスペインの 高速列車脱線事故である。で、その時も高速新線から在来線への接続部分で、速度超過した列車がカーブを曲がり切れず横転し、多数の犠牲者を出す事故となっ た。
日本の新幹線のように、すべての区間を専用線で走るシステムではないヨーロッパの高速鉄道は、停車駅となる各都市付近では、必ず在来線への接続部分があ り、そこでは信号システムのみならず電源まで切り替える国も多い。もちろん、切り替えている最中にまったく信号が作動しないシステムというのは、あっては ならないことだが、スペインでは実際に事故が起こってしまった。営業運転より上限の高い、高速運転をする試験ということで、信号装置の電源そのものを切っ ていたことも考えられる。

鉄道車両設計の専門家である安井氏のコメントは
写真にあるカーブ形状と転覆した車両の長さ(18.7m)から、カーブ半径は 700m〜800m と推定できます。軌道のカント(自動車ではバンクとい う)が充分に(14%位)付いていたとすると、遠心力が均衡する速度は 100〜110 km/h になります。このカーブを 150 km/h で走行しても、余程のこと(レールの締結装置が緩んでいたとか、)がない限り、脱線はしません。
しかし、最高速度が 350 km/h も出る列車ですから、200 km/h 位で走行してしまったのだと考えます。因みに、尼崎事故では、半径 800m、均衡速度は 60〜70 km/h、このカーブに 116 km/h で進入してしまったものです。
また、日本の新幹線では、最小曲線半径は 2500 m、均衡速度は 約210 km/h で、300 km/h で走行しても脱線はなかなか起こらないと思われます。(350 km/h ではダメ。)
試運転ということで、試験区間の線形に慣れてなかった運転手および試験スタッフが制限スピードを見誤ったのでしょう。


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