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1487

スフ
2015/10/19

映画監督だったTから『終わりに見た街』の制作当時、戦時色を出すため、スフの洋服を探しに苦労した話を聞いた。彼は一般には『スフ』と呼ばれた、戦争中 の粗悪な繊維製品、国民服とかに仕立て上げられたりした事は知っているが、現在、ステーブル・ファイバーは、どのような形で、どンな所に使われているの か?その進化と将来性について、教えてくれませんか?と聞いてきた。

私は「スフ」なんてなつかしい言葉があったことなどすっかり忘れていた。「ステープル・ファイバー」を短くしてスフと呼んだということも忘却の彼方だった。ステープル・ファイバーは短く切った短繊維、長繊維はフィラメントと言った。

スフの別名は「人絹」またはレーヨン。これなら大学の応用化学科で学んだ。カーボンファイバーで世界を制した「東レ」は昔は東洋レーヨンだ。矢花氏が就職 した「テイジン」も昔は帝国人造絹糸。両社とも「スフ」が会社のスタート。その前の本当の絹は和田氏の片倉工業が富岡で繭から作っていた正絹。

ナイロンやテトロンなどの石油系の繊維の出る前だからパルプやコットンなどの天然のセルロースを水酸化ナトリウムなどのアルカリと二硫化炭素に溶かしてビ スコースにし、酸の中で紡糸して(湿式紡糸)製造したもの。現在はナイロンやテトロンに負けてビスコースレーヨンは製造されていない。

しかし例外があってベンベルグまたはキュプラ(cupro)または銅アンモニアレーヨンまたは銅シルクといわれるものはすべりのよさからいまだに背広やス カートの裏地に使われている。最近杭工事に多角化してミソをつけた旭化成がつくっているようだ。銅アンモニアレーヨンの生産には銅アンモニア溶液 (シュバイツァー溶液) を用いる。この溶液は水酸化銅にアンモニア水を加え、アンモニア性硫酸銅とし、水酸化ナトリウムを加えることで作られます。この溶液は銅アンモニア錯体が 生じ、セルロースを溶解させることが出来る。このセルロースを溶解させた銅アンモニア溶液を酸性の水中に押し出すことで、セルロースが再生し、繊維を生じ るのはビスコースと同じです。

バイオ分解性のプラスチックともいえる。

最近、京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授が開発したセルロースナノファイバーは、植物繊維(バルブ)からリグニンをk除去しナノオーダー(1mmの百万 分のー)にまで細かく解きほぐしたものにを樹脂で固めると鋼鉄より強度の高いものができる。炭素繊維(カーボンファイバー)の6分の1程度のコストで、車 のボディから家電製品まであらゆる工業製品の材料になる可能性を秘めている。鋼鉄の5分の1の軽さで、強度はその約5倍。しかも熱に強い。プラスチックよ りもさらに軽くて、透明材料にもなる。樹木という自然資源を大いに活用できる。

Rev. October 30, 2015


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