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1448

スコトーマ、スコトーシス
2014/12/11

スコトーマ:ギリシア語の「盲点」 心理学用語で洗脳
スコトーシス:ギリシア語の「闇」 

核分裂の応用という禁断の「知」を手に入れた人は、それを捨てることに大きな抵抗(未練)を覚えるようだ。その魅力に 囚われて、それ以外の素朴で効率の低い手段には目もくれなくなるのだろう。彼らは明らかに、3/11 がわたしたちにもたらした「啓示(ひらめき)」を排除しているように思われる。これを「学ぶということに対する抵抗」と友人の小笠原氏がいう。

学ぶということは、人間と人間世界の状況をあがなう要素を含んだひらめき、直観に通じるはずのものである。しかし、わたしたちはいつもひらめきを得たいと望んでいるのだろうか。バーナード・ロナガンは次のように述べている。

「人はひらめきを望むことができると同様、敬遠することもできる。光への愛だけではなく、闇への愛も存在し得るのである。先入観や偏見によって理論的探究 が妨げられることはよく知られていることだが、未熟な感情によって具体的、個人的事柄に関する理解が偏ったものになることは、それよりもずっと簡単に起こ り得る。

一つのひらめきを排除することは、そのひらめきから生じ得る、さらなるいくつもの質問や、そのひらめきを補って、偏りがなく、均衡のとれた視野にし得る、 さまざまのひらめきをも排除することにつながるのである。より広い視野を欠くことは、結果として、わたしたち自身についてだけでなく、他者についても誤解 を生む行為を生ずる。そのようなゆがんだ理解を経験することによって、人は、人間生活の外的ドラマから逃避して空想の内的ドラマへ引きこもることを好むよ うになる。」(田村亮子訳 Bernard Lonergan "INSIGHT": Longmans Green and Co,Ltd., London, 1957,p191.)

ロナガンはこのようにゆがんだ理解を「スコトーシス」(ギリシャ語の闇を意味するスコトスと、それによって生じてきた死角を表すスコトーマに由来する)と 呼んでいる。このような用語を取り入れながら、ロナガンは学ぶということに対する頑強な抵抗についてよりよく理解できるようにしてくれた。まさにこの「ス コトーシス」こそ、今日の人間形成においてきわめて大切な問題に正面きって取り組むことを遠ざけてしまう。

スコトーシス、つまり、(それが起こることによって)苦痛をもたらすひらめきを排除しようとする動きによって、わたしたちは自分自身の経験が学びのプロセスに組み入れられるのを妨げ、人生の一連のできごとを傍観する見物人のようになってしまう。

(中略)

スコトーシスに陥ることによって、わたしたちは、正義や平等について長く激しい討論をしながらも、一方では教師を憎んだり、学友たちが必要としていること を無視するようになる。スコトーシスの影響のもとでは、残虐行為に満ちた世界のただなかにありながら机上の空論をはてしなく戦わせたり、肥満に悩む人たち によって飢餓問題についての議論が繰り広げられたりする。

 ロナガンのことばによると、「スコトーシスは、起こってほしくないさまざまなひらめきを起こし得る視野の広がりが、意識にのぼってこないように妨げる異常である。」

Henri J. Nouwen “Creative Ministry” 
(ヘンリ・ナウエン著「友のためにいのちを捨てる」佐々木博訳 女子パウロ会刊)


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