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1434

従軍慰安婦問題
2014/08/06

高校同期に朝日新聞の記者になった男がいる。彼は「記事の捏造なんては記者にとっては殺人の罪と同じくらいの悪いことだと徹底的に教育されている」といっていた。「だから、記 者が故意に記事を捏造することはありえない。大体は取材相手がウソをいったのが見抜けなかったか、勘違いしかない」と強い口調でいっていた。

2014/8/7に朝日新聞は 特集でいわゆる従軍慰安婦に係わる過去の朝日新聞の記事をもう一度検証した結果として公表した事項がいくつかあった。私が読んだ感じでは友人が指摘した規範を逸脱するものはなかった。たとえば;

@山口県労務報国会下関支部動員部長の高橋清次氏(故人)が済州島で行った「慰安婦狩り」を朝日は信じて1982年に報じ、(他社も報じた)そして社説に も 取り上げた。そのとき、元来「強制連行」は政府計画にもとづき炭鉱や鉱山に必要な労働者を動員したことをさす強制連行という言葉をつかって論じたが、済州 島に出向いて再調査するとこれは、高橋氏のウソであったことが判明したため、記事を取り消すと表明。高橋清次氏はその後も本を書き、この本が国連規約人権 委員会報告書(クマラスワミ報告)の資料になり、日本が性奴隷をつかっていたと世界から批判を受けた。日本政府は朝日が誤報を認めたから国連報告を修正し てほしいと報告書を書いたスリランカ人の弁護士にかけあったが、朝日の報道をみて報告書を書いたのではなく、高橋清次氏の本を読んで書いたので、修正する つもりはないという回答だったという。

A戦時下に国家動員法にもとづき軍需工場に動員した女性達を女子挺身隊とよんだ。慰安婦とは全く別であるが、1991/12/10の記事で記者が参考にし た「朝鮮を知る事典」平凡社1986年に両者を混同して書かれていた。この本の著者の宮田節子さんは既刊の千田夏光著「従軍慰安婦」を参考にして書いたと いう。ここには20万人が慰安婦として集められたとあった。

B元朝日新聞大阪社会部記者の植村隆氏が1991/8/11書いた「思い出すと今も涙 元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」という記事は韓国に出 張取材してものしたスクープであった。これを批判する側は取材対象の金学順という女性はキーセン学校に通っていた人で人身売買された人であることを隠し強 制連行されたと書いたとする。しかし植村隆の取材時には彼女はこれを隠していわなかった。北海道新聞取材時にはじめてキーセン学校にかよっていたと話した ものである。その後の他社の取材にも金学順はキーセン学校にかよったことは話していない。

というものだ。友人の元朝日記者は最近亡くなったが、「問題の記事を書いた男が入社したときに外報部の韓国系の部署を与えたのは俺だった」と生前 聞いた人が居 る。金学順のインタービュー記事を書いた 朝日新聞大阪社会部記者の植村隆氏は外報部の人間ではない。女子挺身隊と慰安婦を混同した記者でもないだろう。とすると山口県労務報国会下関支部動員部 長の高橋清次氏のウソを信じて報じた記者が外報部の韓国系の部署を与えられた男だということになる。朝日記者と親しかった友人に確認すると朝日の誤報が話 題になるともうかなり前に朝日とは縁を切っていた元記者は「スクープ記事の欲しい時機にこの記者があのネタを掴んだ。それに編集長以下がのり、朝日の大ス クープとなった。 この誤報につき朝日攻撃の先陣を斬った週刊誌の論評は全面的に正しい。あれはトンデモ記事だった」といっていたという。

日本会議メンバーの石破自民党幹事長、櫻井よしこ、読売新聞、産経新聞、文芸春秋などは小躍りして喜んでいる。石破自民党幹事長は国会で審議すると息巻いていた。「次世代の党」の山田宏幹事長は植村隆氏を国会に参考人招致すると息巻いている。

誤報はただせばよいことで、政府がこのように異常に喜ぶのは異様だ。戦争をはじめれば政府が関与しようがしまいがこういう事態に立ち至ることは自明なのだから目くじら立てるほうがみっともない。

Y氏は朝日新聞は20年以上も昔の取材の非をなぜ今頃になって認めたかと聞いてきた。私の推測は(間違っているかもしれないが)は以下の通り。

朝日新聞内部の慰安婦問題の認識は軍には売春婦(prostitution)はつきもので、彼女らの収入は兵士の10倍もあった。しかし軍としては安全衛生を心配して管理したくなる。 となると従軍慰安婦的(Comfort Women、Professional Camp Follower)な意味合いをもつことになる。それを認める公的文書は初めから存在しなかったか、あっても敗戦で破棄してしまっただろう。だ から一般論として慰安婦問題がなかったといえない。だから多少の誤報は問題ないだろうと放っておいた。しかし最近の韓国の動きは異常だし、それに呼応して 国内の朝日バッシングは酷い。ならば確実な間違いは認めてガス抜きしておかないとまずいと判断した。

というものだ。私はこの時期に誤報をみとめた朝日は戦略的勝利を得たとおもう。朝日批判をしていた日本会議な どは批判の根拠を失なうからだ。産経新聞などは完全に燃え上ってしまって韓国でつまずいているようだ。日本の新聞は中立を標ぼうしているが朝日と毎日はど ちらかというとリベラル。読売や産経は右だから読売や産経は韓国のあら捜しをしたがる。そういう記事は日本で売れるからだろう。産経のソウル支局長は朴槿 恵大統領のスキャンダルをながして侮辱したとして韓国の検察から出頭命令がでたそうだ。(その後逮捕)

従軍慰安婦問題でわすれてはならぬ人物にNHK入局後、『クローズアップ現代』『NHKスペシャル』などのプロデューサーとして、NHKの看板番組を支え 続けた永田浩三氏がいるとかってのNHKの同僚のO氏から教えられた。NHKが2001年1月30日に放送したETV特集シリーズ「戦争をどう裁くか」の第2夜 「問われる戦時性暴力」で、慰安婦問題などを扱う民衆法廷(模擬法廷)の日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷(略称:女性国際戦犯法廷、主催:VAWW -NETジャパン)に関する番組に関する一連の騒動について番組の内容や放送までの経緯について、放送前の段階から主催者側から問題点が指摘されたり、ま た放送後数年たって朝日新聞が政治家による政治圧力があったと報道し、それをNHKが否定するといった騒動の内実を東京高裁で証言したため、報復人事を受 け、二度とNHKの番組制作現場に戻ることはなかった。現在は武蔵大学社会学部教授。日本会議の主催者であり、かつ時の政府の安倍晋三首相の圧力があったかなかったかに関し、NHKと朝日新聞という日本を代表する報道機関同士の全面対決という異様な様相を呈した。

Rev. October 28, 2014


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