メモ
シリアル番号 |
表題 |
日付 |
1373
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ギャップレス避雷器の開発
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2012/12/29
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30年以上前(1970年代)に通産省(当時)に関係した新製品実用化の過程での記憶を紹介します。当時の常識では、避雷器とはカーボランダム(炭化珪素
(SiC))
を主成分とする非直線抵抗体と直列ギャップから成るものでした。明電舎では、松下電器が発見したZnOバリスタを改良して直列ギャップの不要な画期的な電
力用ギャップレス避雷器を開発し、結果的に世界の避雷器は全てこのギャップレス避雷器に切り替わったのですが、実用化の初期には当時の日本の法律の解釈の
問題で、大変苦労しました。(海外では、このような事はなく、「良い物はすぐ採用する」と言う風潮でしたが・・・) 当時は変電所機器の運転開始前
に、”法“(電気設備技術基準)に決められた「耐電圧試験」を実施する必要があり、機器を雷過電圧から保護する避雷器だけは、耐電圧試験を実施すると焼損
する危険があるので、「耐電圧試験の際、回路から取り外してよい」と言う事になっていた。但し、別に定める”規則”により認められた避雷器以外は「耐電圧
試験を実施しなければならない」事になっていた。この“規則”によると、別に定める“告示”に相当する避雷器であることが必要であり、告示の内容は、電気
学会規格(JEC-XXX)の丸写しであった。通産省よれば、電気学会の規格などは「有効団体の約束事」に過ぎず全く権威がないが、技術的には頼らざるを
得ず、“告示”に転載することにより権威を付けていたようである。明電舎の開発したギャップレス避雷器は技術的には“告示”の避雷器よりはるかに優れてい
たが、当時の“告示”を改定(追加)しない限り実用化が困難であり、当時の規制社会では“法”の改定には多くの手続きと長期間の審議が必要であり、切歯扼
腕した記憶がある。現在では何等の問題なく運用されているが、1984年に酸化亜鉛形ギャップレス避雷器専用の規格(JEC-217-1984)が制定さ
れ、其れを活用して“告示”の修正が実施されるまで10年以上を要した。その為、通産省の本省課長レベルに対して“ご説明”
(電気学会規格担当部門の責任者と共に)を何度か実施した記憶がある。酸化亜鉛形ギャップレス避雷器の優秀性・信頼性のついては国際的にも認知されてお
り、通産省も承知していたので、“告示”改定までの期間は”通達”などの手段で内部処理・運用していたものと思われるが、その後転勤して担当から外れてい
たので、詳細については承知していないが、長期間問題なく運用されていた様である。
元明電舎小林談-ECHOR議事録