メモ

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1234

リットン調査団

2009/02/13

マルクスは、先進国(19世紀のことですから英・仏・独である)の資本主義は内蔵する矛盾のために自然崩壊し、かわってプロレタリアートによる革命が起こって人民のユートピアが出現すると論じた。レーニンはそんな悠長なことは言っていられない、自己崩壊を待っていたら日が暮れる、革命は格差のあるところにマッチを擦れば自然発火するのだといって、ボルシェビキ運動を促進した。レーニンの思想と行動は帝政ロシアの衰退・腐敗とあわさって、共産革命というのが起きてしまった。

イギリスやフランスの政府・外交関係者たち(ブルジョア階級ですね)は、革命の波及をひどく恐れ、ドイツやイタリアをソヴィエト革命からのバッファーにしようとした。イギリスはヒットラーと妥協し(ミュンヘン会談)、国際連盟はイタリアのエチオピア侵攻を許し、スペイン市民戦争への不干渉を決め込んでヒットラーやムッソリーニのご機嫌をとり、そうして彼らにコミュニズムへの防波堤になってもらい、共産革命の拡大をおさえようとした。

アジアで日本の満州進出を許し(連盟はリットン調査団でお茶を濁した)、制裁を科さなかったのは、もし日本が日中戦争で負けてしまったら、中国は混乱し、その真空状態に北からソヴィエトの影響がどっと入りこんできてしまう。そうすると革命軍によって(つまりソヴィエトの傀儡によって)イギリスやフランスやオランダの権益が脅かされることになると恐れたのだ。

連盟主要国の優柔不断はかくしてヒトッラー、ムッソリーニと関東軍の暴走を許し、けっきょく世界はもう一度悲惨な大戦争をすることになったわけだが、反面、マルクスの唱えた(そしてレーニンたちがめざした)プロレタリア革命も、その後ユートピアをもたらすことはなく、かわりに世界の数千万のひとびとが世代を超えて悲惨と辛酸を舐めた。

わたくしたちがいま遭遇している金融危機を鑑みるに、資本主義だって成功してきたとは到底言いがたい。マルクスの時代は産業革命のまっただなかで、資本主義はおおきく飛躍し、グローバリゼーションがはじまった時代でもあったが、彼の時代のグローバリゼーションがもたらしたものは、より大きな不公平と貧富のあいだの格差だったわけで、そのことは今の時代とよく似ていると Rethinking Marx は論じる。

-TIME誌(2009/2/2版)に「RethinkingMarx マルクスを考え直す」という特集の春具による要約


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