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1190

石灰硫黄合剤

2008/04/29

最近、練炭による一酸化炭素中毒に代って、硫化水素による自殺がはやっている。化学の教科書には硫化鉄に塩酸をかけて硫化水素を発生させる実験が紹介されている。しかし硫化鉄は 市販されておらず一般の人にとっては入手困難である。

更に調べると硫黄の入った入浴剤と塩酸を混ぜるとある。化学の常識ではこれでは何も生じない。おかしいと思って更に調べると某製薬製の入浴剤「M」と便器等の塩酸系洗浄剤を混ぜるという。 「M」の製法は生石灰と硫黄を水に溶かしたものという。この製造時に化学反応が生じているはずである。

生石灰が水と反応して水酸化カルシウムCa(OH)2が生成し、これが硫黄と反応して石灰硫黄合剤となる。これはLime sulfurとも呼ばれている。主成分は多硫化カルシウムCaSxが主成分である。特に五硫化カルシウムCaS5が有効成分という。強いアルカリ性 の製剤で酸性物質と混合すると硫化水素を発生するとある。 この製剤は風呂釜を痛めるが、家で温泉気分を味わえるというので隠れた人気がある。白骨温泉の経営者が温泉に添加していたのもこれのようだ。

カイガラムシ、ダニ等の殺虫剤、さび病、うどんこ病の殺菌剤として使われる伝統的農薬も石灰硫黄合剤である。 リンなど使わないから残留農薬の心配もなく、安心して使える農薬だ。これら薬剤を製造している製薬会社にはとんだ災難だろう。

ちなみに 硫化水素は全ての細胞と共生しているミトコンドリアに作用して、酸素呼吸を阻害する。硫化水素 を一番多く取り扱っているのは石油精製業だ石油の中に含まれる有機硫黄化合物を除去するために水素を添加して分解し 硫化水素として分離除去しているのだ。 硫化水素は部分燃焼して硫黄にしている。おかげで日本の硫黄鉱山は全て閉鎖された。


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